「そろそろここを出て行くとするよ」
アルベドと瓜二つの彼の弾んだような声。いつかそう言うだろうと予測はしていた。
雪山の風がひやりと普段よりも冷たく感じる。近頃は研究室に彼と共に居ることが当たり前だった。
無反応なアルベドの背中を見ながら、彼は首を傾げる。
「あれ?聞こえた?」
「ああ、出て行くんだろう」
アルベドが普段よりも素っ気ない言葉で返す。先程までの実験の結果を纏めながら、ペンを握る手に変な力が入る。
「何故、とか、どこへ、とか聞かないの?」
「ここを去るというのは予測の範疇だからね」
彼に背を向けたままアルベドは答える。
ふーん、と不満気な生返事を返した彼が近くに寄るのを感じる。
ペンを走らせるアルベドの顔を覗き込みながら無邪気に聞く彼。
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