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    amaguri815

    @amaguri815

    妄想投げ捨て場所

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    amaguri815

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    夢でのりくんに言わせた「僕、桃娘なんです」が何だったのか気になりすぎて無理矢理自己解決した結果がこちら

    #承花
    Joka

     飛び交う異国の言葉、客引きの群れ、煌めくネオン。承太郎は出張で中国に来ていた。
     仕事も終わり帰国しようしたところ、飛行機のトラブルにより明日まで待機させられることになったのが昼間の事。何処も予約で埋まっている中、ようやくとれたホテルは空港から離れた場所だった。その場所へ着く頃にはすっかり辺りも暗くなって、一夜限りの相手を探しに出歩く人々で賑い、ただれた情緒を映し出していた。
     しつこい客引きを振り切った承太郎は、早々に室内へ入りほっと一息をつく。体を沈めるように預けたソファは、なかなか座り心地が良くそのまま眠ってしまいそうだ。重力のまま四肢を放り出していると、まだ夕食を食べていない事に気が付いた。今の今まで空腹を感じなかったのに、気付いた瞬間急に腹が減ってくるのは人間の本能なのだろうか。
     酒でも飲んで早く眠ってしまおう。そう考えた承太郎は数種類の酒をフロントに注文した。注文し終えた受話口からは無機質な音が流れ、その音さえも切ってしまえば、ようやく静かな空間が承太郎を包む。
    「…………」
     少し値の張るホテルはやはり防音も確かなもので、さっきまでの喧騒が嘘のようだ。時計の秒針すら聞こえない、耳障りなほど静かな空間を今の承太郎は必要としていない。疲れた時は一人になりたいと思っていたはずなのに、何故か今日ばかりは誰かと間を共有したかった。
     どうせ明日には発つ身だ。と、再び握った電話が繋いだのは、青年性ばかりが揃っている風変わりな娼館だった。しかし、特別承太郎が青年色を好むといったわけではない。ただ共に酒を飲もうというのに、女性特有の甲高い声は必要ないのだ。
     電話を切ってから十数分後、部屋のチャイムが鳴り響く。
     酒か人間、どちらが先に届いたのかとドアを開けてみると、開いた先にはトレイに数本のボトルを持った中性的な顔立ちの青年が立っていた。
    「御注文、お持ちしました」
     この地では聞くことのない流暢な日本語で言った青年は持ったトレイを差し出した。それを受け取ろうと手を伸ばした承太郎だったが、その青年は差し出した手の脇をすり抜けて部屋の中へと入っていく。
    「お持ちします。僕も呼ばれてここへ来たのですから」
     振り返った青年はにこりと笑い、そのまま奥へと進んでいく。その背を見つめたままドアを閉じた承太郎の鼻腔を、ふわりと桃の香りがくすぐった。娼夫ともあれば香水の一つぐらいつけるだろうと、さして気にもせず承太郎は後を追い、さっきまで座っていたソファへ腰を下ろした。
     テーブルにトレイを置いた青年は座る承太郎の近くへ来ると床に膝をついて腰を下ろす。年は十代そこそこだろうか。白い肌に映える艶やかな赤い髪はふわりとうねり、じっと見上げたその目は指示を待っているように見えた。
    「酒を二本、くれないか」
    「かしこまりました」
     立ち上がった青年と共に、再び桃の香がふわりと頬を撫でる。甘い残り香に浸っていると、両手にボトルを持った青年が戻ってきた。
    「どうぞ」
    「一本は君が。隣で一緒に飲んでくれないか」
     未成年に見える青年にそんなことを頼むのはどうかとも思ったがここは日本ではない。娼夫を生業にしているのだから、もっと酷い事を頼む客よりはマシだろう。
     承太郎の予想通り、青年は嫌な顔一つせず隣に座り再びこちらを見上げて少し口元を緩めた。
    「では、いただきます」
     そう言った青年はなかなか飲める口だった。
     持った一本を飲み干した頃には白い肌が桃色になっていたが、受け答えはきちんとできており酔っている素振りもない。世間が自分に背負わせた肩書きなど気にもしない相手と飲むのは気が楽だ。気付いた頃には空いたボトルが増えていて、それと同時に隣から香る甘さも強くなっているような気がした。
     承太郎自身香水は苦手だったが、この香りは嫌味な甘さではなく熟れた果実そのものだ。紅を差した青年によく似合う香りだった。
    「随分甘い香水だな」
     何本目かになるボトルを空にした承太郎は、隣に目をやり青年を見た。その視線に気付いた青年はふふ、と笑うと持っていたボトルをくるくる回しながらクチを開く。
    「香水、つけてないですよ」
     香水でないならば、衣類から香るものかと考えた承太郎だったが、その割に人工的な香りで無いことに頭を捻らせた。
    「桃娘"タオニャン"なんです」
     足元にボトルを置いた青年はぐいとこちらに体を寄せるともたれ掛かるようにして肌を寄せる。酒のせいか少し潤んだ瞳はとろりとしていて、桃の香が更に強くなった。
    「僕、甘いですよ…………食べてみますか?」
     熟れた果実は香を放ちながら妖艶に誘う。
     魅入られた承太郎は誘われるまま、赤い唇を貪った。
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