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    ワンライで書いた話(未完成)

    レオクラ 自分に一体何が返せるのだろう。温かな掌を惜しげもなく差し出すその男に。
     クラピカ、と。調子の良い男の声が自身を呼ぶ、たったそれだけだというのに心が波打つように落ち着かないのは男の持つ優しさがあまりにも甘ったるいものであるからに他ならない。
     それはクラピカが復讐に生きると誓った時に己には不要だと捨てたものだ。けれどその男はクラピカが捨てたはずのものを持って、クラピカへと手を伸ばすのだ。だからクラピカは伸ばされた手をいつも握り返せないでいた。その手を握り返す資格など自分には無いのだと思っている。返せる物を持たないクラピカの掌には過去のみが乗っていた。
    「クラピカ」
     男がクラピカの名を呼ぶ時、男はいつも不機嫌そうな声を出す。けれどその後すぐに不機嫌そうな声を出したことがおかしいとでもいう風に笑いながら再びクラピカを呼ぶのだ。その声の甘やかさは、慈しみをそのまま声にして出したような響きでクラピカの耳へと届く。
     その声をどうにも煩わしいと感じるのはクラピカが固く凍らせた心が融解してしまうような恐怖があるからだ。甘えを捨てた心に寄り添うような暖かさは今のクラピカにとって煩わしさでしかなかった。
     全くもって厄介な男と知り合ってしまったと思う。ゴンやキルアとも違う、その愚かさは男の美点とも言えるところだ。けれどクラピカはそれを己に向けるからこそ愚かなのだと思ってしまう。
     クラピカは未来を捨てて過去にのみ生きている。残念ながらそこにはこの男の居場所はないのだ。
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