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    POIPOI 17

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    蛇(フルロク) 襟元を掴み壁に押し付けるようにして力を入れれば僅かに身体が持ち上がり、踵を上げなければ地に足がつかないようだった。だというのに襟元を掴まれている男は不敵な笑みを浮かべたまま襟を掴むフルフルの手の甲へと媚びるように触れる。巧みな指がすり、と宥めるように動くのが煩わしい。
    「なあ、」
     声色に楽しさを滲ませてニタリと笑む顔すら腹立たしく、けれどそうして苛立つことがすでに男の術中に嵌っているようでフルフルは舌打ちをしたい気分だった。
    「なあって、怒るなよ」
     笑いの滲んだ声は、けれどどこか甘やかな響きでフルフルへの耳へと届く。幼い子供に優しく投げかけるような、到底この男がするはずも無い言い方だがやけに言い慣れている風であるのも不快感に拍車をかけていた。
     不快感そのままに襟を掴んでいる手を引けば力の入っていない身体はいとも簡単に引き寄せられる。フルフルはそのまま間抜けに開いた口へと食らいついた。歯列を割り入り、乱暴に侵入した口内を好き勝手に蹂躙する。男の舌を捕らえて自身の口内へと招き入れた時に甘く噛んでやれば、噛みちぎられるとでも思ったのか不快そうに眉根を寄せるのを喉の奥で笑った。
     笑われたことがお気に召さなかったのか、男がフルフルから逃れようと両手でフルフルの胸を押すがもとより体格差も筋力差もある二人だ、フルフルはびくともしない。
    「お、い……ッ」
     息継ぎのタイミングで静止を乞うように声をかけられるがフルフルはそれらを無視して口付けを深くする。酸欠のせいか、無理な体勢が長く続いたせいなのか、膝が震えて立つこともままならない様子のロックは背後の壁へと身体を預けていた。
     再び壁へと押し付けるようにして生意気な舌が逃げるのを追いかける。気分はさながら荒野で兎を追う狐のそれだった。
     さすがに解放してやるか、とフルフルが合わせた唇を離そうとした時だ。
     ガリ、と。口の端に走る痛みと鉄錆びた臭いに噛みつかれたのだと気付く。そのまま唇を離せば赤色の混じった唾液が二人の唇を繋いでいた。
    「調子乗んなよ」
     べえ、と二又に分かれた特徴的な舌が先程までフルフルが蹂躙していた唇から覗く。じんじんとした痛みと血の味がフルフルによくない興奮を連れてきていた。
    「乗せてんのはどっちだヨ」
     今度こそ舌打ちをして吐き捨てる。フルフルには機嫌良さげに自身の首へと腕を回してきたロックを振り解く気すら起きなかった。
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