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    兄になった日(ロック)「ロック、この子が貴方の弟よ」
     そう言って母親に見せられた、生まれたばかりの赤ん坊。それは小さくて、弱々しくて、柔らかな、生命と呼ばれるものを捏ねて作ったみたいな存在だった。俺は何だか不思議なものを見ている感覚でその弟とやらを眺めていた。すると、顔に引いた線みたいな細い瞼が開かれてそこから血の色をそのまま写し込んだような美しいブラッド・レッドが現れたではないか!
     ブラッド・レッドは無垢な光を宿して世界を覗いている。最近気に入ってよく口にしている棒付きの飴玉よりも魅力的な玉だと思った。きっと、舐めたらとっても甘いのじゃあないか。
     小さな口、そこからふや、と未発達の声帯が鳴き声をあげたのが妙に弱々しく見えて、ああ、俺がこの弟とやらを守ってやらなきゃなと思った。
    「この子を守ってあげてね、貴方はお兄ちゃんなんだから」
     母親の言葉にも、自分は兄なのだという納得が俺の中にはすでにあった。けれど、兄とは何だろう。自分には居ない存在だ、俺はどうすれば良いのだろう。
    「可愛がってあげればいいのよ、この子を、ジャズを」
     母親とは不思議なもので、俺が何を問いたいのかわかっているようだった。重ねるように続けられた言葉に、俺はそうか、可愛がればいいのかと思う。
     一等大事にすればいいのだ。一等可愛がればいいのだ。
    「ジャズ」
     恐る恐る呼んだ名前を、ちゃんと認識しているわけではないだろうがブラッド・レッドがこちらを見て、俺はもう、嬉しくて仕方がなかった。
    「兄ちゃんだぞ、ジャズ」
     口に出して言えばますます実感が湧く。小さくて柔らかな手のひらを指でつつけばギュ、と握られて思っていたよりも強い力に驚いた。
     可愛い可愛い弟。可愛い可愛いジャズ。これからうんと可愛がってやるからな。
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