才能なんてない※注意※
・冬彰前提
・彰人ちょい闇
それでも良い方は↓↓↓
才能とはなんだろうか。
絵の才能。作曲の才能。スポーツの才能。
人は必ず何かしらの才能を持っている。
こはねや杏、そして冬弥には『歌の才能』がある。
ただ、俺にはそんな才能はない。
そもそも俺にはなんの才能もない。
『歌の才能』のある3人と同じユニットにいるのにどうして俺にはなにもないのだろうか。
俺は___
「彰人」
冬弥が大きな声で叫ぶ。
その声で我に帰った。
「大丈夫か?さっきから何回も呼んだんだが………。」
冬弥が心配そうに見つめてくる。
「あ………いや、ちょっと考え事してただけだ……。悪い、ぼーっとしてて……」
「あーでも最近、むっちゃ練習してるもんね。」
杏が納得したように言う。
「まぁ……そうだな……。」
確かに最近はVivid BAD SQUADでイベントに出るために必死に練習していた。
だから疲れているのかもしない。
しかし、本当にそれだけなのか。
なんだか心の奥底でモヤモヤする。
「疲れている状態での練習はあまり良くと思うな………。今日はもう終わりにする?」
こはねが提案してくる。
「そうだな、彰人だけではなく小豆沢も白石も俺も疲労が溜まってしまったら元も子もない。」
「じゃあ、今日は解散彰人、しっかり休んでよ!」
「わかってるって………」
俺たちは自分たちの家に帰っていった。
家に帰った。
「彰人、おかえり。早かったわね。」
絵名が声をかけたが、俺はすぐに自分の部屋に向かった。
部屋に入って椅子に座り込むと、深いため息をついた。
みんなに心配をかけてしまった。
「何してんだろ………俺………」
ピロン♪
スマホが鳴る音が聞こえた。
机の上に置いていたスマホを手に取り画面を見ると、メッセージアプリの通知が来ていた。
『彰人、セカイにきてくれないか?』
冬弥からだ。
『わかった。今行く。』
返事を送り、「untitled」を流す。
〜ストリートのセカイ〜
「彰人。」
冬弥がいつものように話しかけてきた。
「どうしたんだよ?急に呼び出したりなんかして……」
「すまない。最近、彰人が元気がないように見えたから少し気になってしまってな……。」
「え……」
思わず目を見開く。
まさか気付かれているとは思わなかった。
「とりあえず店に入ろう。メイコさんがコーヒーを入れてくれるらしい。」
冬弥に連れられて店内に入る。
カウンターではメイコさんがコップを用意しており、カイトさんはその横でコーヒー豆を挽いていた。
「あら、いらっしゃい!2人とも!」
「お邪魔します。」
「……ちわっす。」
2人で挨拶をして席につく。
「はい、コーヒー入ったわよ。」
メイコがカップを置いてくれた。
湯気が立っている。とても美味しそうだ。
「ありがとうございます。いただきます。」
一口飲むと苦味が広がり、体が温まるような感覚を覚えた。
「うまいです。」
素直に感想を言う。
「それは良かったわ。ゆくっりしていってね。」
そういうとメイコさんはカウンターの方に戻っていった。
しばらく沈黙が流れる。
先に話を切り出したのは冬弥だった。
「彰人、悩みとかないか。相談して欲しい。力になれるかもしれない。」
真剣な表情で見つめられる。
「……別にないけど。」
咄嵯に出た言葉がこれだ。
本当はあるはずなのに、それを隠そうとする自分がいる。
すると、冬弥がため息をつく。
「嘘だろう。彰人のことだから無理をしているんじゃないかと思ったんだが……。」
図星だった。
なぜ、こうもバレてしまうのか。
「……やっぱり、俺には才能なんてないんじゃねえかなって思ってさ……。お前らは歌の才能があって、それに加えて楽器もできて……なんの才能もない俺はただのお荷物なんじゃないかと思ってさ……」
いつの間にか本音が出てしまっていた。
冬弥は何も言わずにこちらを見てくる。
すると、カイトさんが口を開いた。
「才能っていうのは誰にでもあるものじゃないと思うんだよね。例えば宝石ってさ、最初は色のついた石と変わらないけど磨けば輝くようになるでしょ?全部おんなじだと思う。最初は同じだけどそこからどうなるかは自分の努力次第なんだと思うよ。」
「自分の努力次第ですか……」
確かにそうかもしれない。
最初から上手くできる人間などいない。
「俺だって、彰人がいたからここまでこれたと思っている。彰人がいなければきっと俺はこの音楽をできなくなっていたと思う。」
冬弥は真っ直ぐにこっちを見てくる。
「今は悩むことが多いかもしれないけど、そのうち良い方向にいくと思う。だから焦らずに頑張れば大丈夫だよ。」
優しく微笑みながら言う。
その言葉で心が軽くなったような感じがした。
「ありがとうございます、カイトさん。」
礼を言うと、コーヒーを一口飲んだ。
「そろそろ俺たちは帰りますね。コーヒーありがとうございます。」
「わかったわ。いつでも来てね。」
「はい、また来ます。」
俺達は店を出た。
「彰人、俺たちは彰人を必要としている。」
冬弥が真面目な顔で言う。
「だから、一緒に頑張っていこう。」
「………ああ、ありがとよ。」
感謝の言葉を伝える。
冬弥の優しさが心に染みた。
「じゃあ、帰るな。彰人、また明日。」
「おう、じゃあな。」
そう言って、俺たちはuntitledを停止した。
俺は家に帰ってベッドに寝転がる。
「明日から頑張ろ………。」
そう言って俺は意識を落とした。