私の翼私の翼
笑顔で差し出されたグラス。
彼女は何も知らないが、そのグラスにはひと一人簡単に破滅させられるだけの薬物が入っている。
シャリアはそれを完璧に作り上げた笑顔で受け取り、躊躇する。
彼女の後ろにいる男が、射抜くようにシャリアを見て笑った。
「中佐はどうも君のグラスが気に入らないようだ」
「え?」
男は何も知らない女に言った。
その言葉に振り返り、悲しそうな顔をした彼女に、シャリアは慇懃に言葉を紡ぐ。
「いえ、そんなことはありませんよ。ですが少し酒を過ごしたようで…」
シャリアの言葉に眉を下げる女に言った。
「おや、中佐。貴方ほどの酒豪がね。仕方ない、君が飲みなさい」
そう言って、男はシャリアからグラスを受け取ろうとする。
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