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    人様に泣き付きまくってようやく書けた。
    私にエロは無理だよ…と気付けただけ良しとします。

    #エグシャリ

    私の翼私の翼


     笑顔で差し出されたグラス。
    彼女は何も知らないが、そのグラスにはひと一人簡単に破滅させられるだけの薬物が入っている。
    シャリアはそれを完璧に作り上げた笑顔で受け取り、躊躇する。
    彼女の後ろにいる男が、射抜くようにシャリアを見て笑った。
    「中佐はどうも君のグラスが気に入らないようだ」
    「え?」
    男は何も知らない女に言った。
    その言葉に振り返り、悲しそうな顔をした彼女に、シャリアは慇懃に言葉を紡ぐ。
    「いえ、そんなことはありませんよ。ですが少し酒を過ごしたようで…」
    シャリアの言葉に眉を下げる女に言った。
    「おや、中佐。貴方ほどの酒豪がね。仕方ない、君が飲みなさい」
    そう言って、男はシャリアからグラスを受け取ろうとする。
    瞬間の躊躇を読み取った男は意地の悪い笑みを浮かべるが、シャリアの手にあるグラスを、後ろから取る手があった。
    「…少尉」
    シャリアは護衛と控えていた青年に対し、彼にだけ分かるように牽制を込めて言った。
    が、少尉と階級で呼ばれた青年は、「これは女性には少し強いお酒のようですね」と飲み干してしまった。
    「…はは」
    男は渇いた笑いを漏らした。
    それはこれから起こることに対する嘲笑である。
    シャリアは男を、感情の一切が消え失せた顔で見据えた。
    瞬間、その空間の煌びやかな景色も、空気も、場をけして乱さない演奏も、全てが色褪せたような不思議な感覚を、パーティ会場にいた全ての人間が感じて、すぐに忘れた。
    「…吐き気がする」
    シャリアは言い捨てて踵を返した。
    男はもう笑ってはいなかった。代わりに、困惑したように女が控えめに笑っただけだ。
    シャリアは護衛一人を連れて、パーティ会場を後にした。


     「…っぅ!ちゅ、中佐!!」
    「黙れ、吐け」
    車に乗り込み、さっさと発進させたシャリアは、己の服を膝に敷き、護衛、エグザベ・オリベの口の中に指を二本入れて嘔吐反射を起こすために頭を掴み、ぐぐ、と指に力を込めた。
    エグザベは体が胃の中のものを吐き戻そうとする反射に逆らわず、呻き声を漏らしながらシャリアの一体いくらするのか想像もつかない上着の上に先ほど飲み下したグラスの中身を胃液と共に吐き出した。
    喉が汚く鳴った。
    「メタンフェタミンと勃起不全薬かな。エグザベ少尉、君、これから苦しみますよ」
    「……あぁ〜」
    エグザベはシャリアが言った薬がどういった作用を齎すかは知識として知っていたので、顔を覆って呻いた。
    酒は吐いた。吐いたが、どんどんと体がおかしくなって来ていることは分かっていた。
    「…なんで全部飲んじゃったんですか」
    呆れたようにシャリアは言い、エグザベの背中を撫でた。が、エグザベはその手のひらの動きにびくりと体を大きく震わせる。
    「……すみません」
    「いえ、不用意でした」
    エグザベはなんだか自分が今酷くふわふわとしていて、シャリアに撫でられただけで幸せで、それでいて彼を滅茶苦茶にしてしまいたいという感情…というよりも衝動が溢れ出すのを必死で抑えていた。
    これは薬のせい、これは薬のせいと頭で唱え、唱えた先からぐずぐずと崩れていく。
    シャリアはエグザベの嘔吐したものが入った上着を畳み、エグザベが置かれた状況が分からないわけでもないのに窓の外を見て顔を顰めていた。
    寂しい。
    「中佐、」
    エグザベはシャリアの太ももに手を置き、彼の股座に顔を寄せる。
    シャリアはそのままエグザベの頭に力を込めて頬を太ももに押し付けると、「家まで我慢しなさい」と命令した。
    はい、ともうぅ、とも取れる声でエグザベはシャリアの細い腰に腕を回した。
    体が熱い。
    血が沸騰する。


     シャリアはエグザベをコロニーの自宅に蹴り入れるように運ぶと、縋り付いてくるその手と腕を叩いて、「私が準備してくるまで待てるね?」と死刑宣告のような言葉を言った。
    エグザベは震え、汗を滝のように流しながら、頷いた。
    軍人に上官への否やはない。
    エグザベのズボンはもう勃ち上がったものでパンパンで、ダラダラと先走りで濡れている。
    自分の意思とか、理性とかそういったものが何の役にも立たない、あると思っていたものが幻想だったことにエグザベは沸騰する頭の片隅でショックを受けた。
    拷問やハニートラップに対しての訓練でも、エグザベは優秀な成績を納めていたというのに、今はシャワーを浴びて後ろの用意をしている男のことしか考えられなかった。
    体を丸め、両手をきつく、祈るように握り、エグザベはシャリアを待った。
    『早く来て』『怒らせた』『早くあの体を抱きたい』『呆れられた』『早く』『早く早く早く!!』
    エグザベはそれでも、いつもよりも余程早く準備をしてきてくれたシャリアが寝室に戻ってくるのを、だらだらと涙を流しながら待った。
    バスローブを引っ掛けたシャリアが固まりかけた溶岩のように脈打つエグザベに、覆い被さるように抱きしめる。
    「頑張ったね、おいで」
    そこからしばらく、エグザベに記憶はない。


     水音、それも粘性のある粘ついた水気が絶え間なく掻き回される音。
    エグザベはその音に耳をすませて、自分という精神をやっと手繰り寄せた。
    「はあっはぁっ……中佐っ」
    皺だらけのシーツの上、組み敷いている男は全身を真っ赤にしてエグザベに背中を向けていた。
    ぐったりと力の抜けた上半身、下半身はエグザベが両手の形の痣が出来るほどの強さで掴んでいる。
    「ちゅうさ…」
    エグザベはシャリアを呼んだ。
    シャリアは、声を最小限に抑えようとしたのだろう、噛んでいた左腕から口を離し、ゆっくりと、少しだけ頭を傾かせて、左目でエグザベを見た。
    その目は熱に浮かされていて、それでも自分の代わりに薬を煽った部下を心配する上司の顔も残していた。
    瞬間、またエグザベは獣に戻った。
    緩んだ両手を細い腰肉に食い込ませ、何度も奥を抉る。
    「あっ!?あぁっ、ちょっ…ふぅん……!」
    シャリアの筋張った背中にいくつも付けられた歯形、キスマーク。
    ずっとこうしたかった、エグザベは己の隠されていた欲望がこうして露わになったことが可笑しくてたまらなかった。
    気持ち良くて、楽しい。
    シャリアの腕を取り、声を我慢するために歯形の痕が残る部分を掴み、引き寄せる。
    「深い…っ!ねぇっ!あ、あぁっ…!!」
    腰を深く深く押し付けて、エグザベは精を放った。
    痙攣するシャリアの腹をやわやわと揉むと、遅れて彼も精を吐き出した。


     シャリアは吐精して、息を整えるのに精一杯だった。
    背後からエグザベがのし掛かるのに、「休憩」と言ってベッドから這い出ようとする。
    「まだ…」
    「君の無尽蔵の体力と同じと思わないで」
    背に口付けるエグザベの頭を乱暴に撫でながらの攻防。先ほどまで理性の欠片もなかったエグザベの瞳には、彼本来の優しい知性が戻り掛けていた。
    「…んっ。君が、中に出したものを出さないと、酷いことになる」
    太もも伝い、腹の中にあって存在感を示している精液。
    なんとかエグザベ引き離し、よたとたと壁に手をつきながらシャリアは浴室に向かう。
    「エグザベ少尉、水分を取って、排泄を済ませておきなさい。あと出来れば、シーツだけは交換しておいてください」
    メタンフェタミンの排出についてシャリアは考えて言った。
    浴室を開けてまず目に入ったのは、ボサボサ頭の疲れ切った男だった。
    「……っはぁ〜」
    身体中の歯形、キスマーク、痣に顔を顰めながら、シャワーを浴びる。
    汗と体液に塗れた体。
    シャワーを流しっぱなしにして、しゃがんでバスタブの縁に手をつき、少しいきむ。
    「んんぅ」
    排水溝に流れていくお湯と一緒に、白いソレも流れていく。
    「……」
    出しきれない精液を掻き出すためにシャリアは自分の穴に指を入れる。人差し指で開いて、中指で掻き出す。
    それを何度も繰り返すが、腕が疲れてしまい、仕舞いにはぺたんと浴室の床に座り込み、雨のように降り注いでくるシャワーをただ浴びる。
    口の中に入ってくるぬるいお湯をゆっくりと飲み下す。
    エグザベがああなってしまったのはシャリアの不徳の致すところで、責任を果たすつもりではあるのだが、如何せん二十代前半の、スクールでみっちりと持久力やらなんやらを鍛えられたばかりの青年と、軍人であるとはいえ三十代の半ばに差し掛かろうとしている男とでは体力や持久力が違うのだ。
    シャリアは自分の腹を撫で、先ほどのエグザベの手付きを思い出していた。
    と、脱衣室にエグザベが入って来た。
    乾燥機付き洗濯機にシーツを入れている。
    シャリアは衣類に香水以外の匂いがつくのが嫌で、洗剤も柔軟剤も無香料のものを使っていた。
    ぼんやりと風呂のドア越しに動くエグザベの影を見ていると、控えめにドアをノックされる。
    「入っていいよ」
    「……失礼します」
    シャリアは浴室に入ってくるエグザベを見て、
    「勃起不全薬って凄いんですねぇ」
    としみじみと呟いた。
    「……普通そういうのって、見て見ぬふりをしてくれるものじゃないでしょうか」
    エグザベは赤面しながら、汗やら何やらを流している。
    彼がグラスを煽ってから五時間が経とうとしていた。
    …五時間。
    シャリアは長いため息を吐いて少し遠い目をした。
    「君には言う必要はないと思いますが、覚醒剤やドラッグには決して手を出さないように。以降禁断症状その他が出たら、すぐに私のところに来てください」
    「はい」
    「ここに座って」
    シャリアは自分が寄りかかっている縁の横を示した。
    エグザベは従順に、苦しそうに屈み腰を下ろす。
    「口での経験があまりないので…下手だと思うのですが…」
    「……いいんですか?」
    「まあ…何事も経験ですよね」
    言って、シャリアはエグザベのペニスに息を吹きかけた。
    「うっ!」
    それだけで、ピクリと動くペニスが可愛い。舌先で鈴口を穿るように動かし、手で陰嚢を揉む。
    「……ちゅ、さ!いじめないで下さい!」
    「はは」
    エグザベがシャリアの濡れた髪を掴み、太ももが防御反応のように頭部を挟もうと動く。
    竿の部分を根本から舐める。溶けて溢れそうなアイスをそうするように。
    もう一度亀頭部分に息を吹きかけると、ギュッと髪を強く握り込まれる。抗議というよりは反射だった。
    「…んぅ」
    ぐぐ、と口の奥まで飲み込んだ。
    歯を立てないように頭を前後させていると、髪を掴んでいたエグザベの手が離れる。
    どうしたのかと見上げると、エグザベは両手をギュウと抱いて、泣きそうに顔を顰めていた。
    (ちょっと乱暴にするくらいなんともないのに)
    頭を掴んで思う様動かすことだって許してあげるのにな…そう思いながら、シャリアはエグザベのペニスを啜り上げた。
    「あっ、中佐、もう、もう…いいですからっ!」
    どう考えても私はフェラチオが下手だな…と思いながら、それでもなんとかエグザベを吐精に導くべく口と舌と喉を使う。
    逃げを打つエグザベの腰を腕を回して固定し、尾骨の辺りを指先で擽る。
    「……もうっ!」
    君の顔を見なくても、今どんな顔をしているか分かるよ。
    喉奥を打つどろりとした液体に咽込みながら、シャリアはそんなことを思う。
    シャリアがエグザベのものを口から出しゴホゴホと咳き込んでいると、エグザベもしゃがみ込み、背中を撫でる。
    「大丈夫ですか?気管に入ったりとかは?」
    「…ん、大丈夫です」
    咳き込んだからか、シャリアの腹が押されてどろりと出てくるものがあった。
    「……」
    「君が出したものですよ」
    「分かってます!…あの、まだ中にありますか?」
    これまではずっとゴムを使っていたし、互いにエグザベが何発出したかの記憶がない。
    「すみません、本当に」
    目を伏せて謝るエグザベに、シャリアは首を振る。
    「謝らなくていい。上手くいなせなかった私に責任がある」
    「身体中の痣とか…僕凄い噛んでるし」
    「大丈夫。あぁ、でも責任を感じるなら、私の代わりに掻き出してくれませんか?自分でやったら腕が疲れてしまって……」
    エグザベの肩口に寄り掛かりながらシャリアが言うのに、エグザベは喉を鳴らした。
    「えっと…」
    「いや?」
    「いや…じゃ、ないですけど」
    「うん…じゃあ宜しく」
    そのまま、シャリアはエグザベの膝に乗り上げるように座った。足は痛くない?と耳元で囁かれたエグザベは小さく頷く。
    エグザベの指がシャリアの後ろの穴に入っていくのと同時に、シャリアはエグザベのペニスを握った。
    目を閉じて、手を動かしながらエグザベの肩に本格的に頭を預けた。
    「疲れて…ますよね。すみません」
    ゆっくりと指を動かしながら言う青年に、「前の日もほとんど徹夜だったから」と答える。
    軍人ではあるが、シャリアはジオンでも屈指の投資家でもあった。
    赤いガンダムの捜索権をもぎ取る為に、かなりの金をばら撒いている。
    軍人がそのようなこと…と思う者もいるが、シャリアの行いは黙認されていた。金を吸い取るばかりの人間が多い中で、金を稼いでこられる人材は貴重なのだ。
    「…っん」
    エグザベの指がイイところを触った。
    シャリアが握るエグザベのものは、先走りを垂らしてはいるが刺激が足りていないようだった。
    「ごめん…寝ちゃいそうなので、ベッドに戻りましょう」
    腹の中が空っぽになった頃、顔を上気させてシャリアが言った。
    「……はい」
    エグザベも息を荒げながら返事を返し、唇を寄せる。
    互いに何とか立ち上がりながら、もつれ合いながらベッドまで歩いていく。


     エグザベが薬で悶々としながらもきっちりと敷いたシーツの上に二人で倒れ込むように横になった。
    「……眠い?」
    「うん、ごめんね」
    うと、とゆっくりと瞬きをしたシャリアの目は、半分閉じかけている。
    「君も、もう少しで薬の効果が切れるでしょう。過眠状態になるかと思います…」
    「はい、あの、」
    エグザベは今日、シャリアの護衛として任務中だった。
    「…うん、その辺りは私がもうどうにかしました。今日と…明日も休みで大丈夫です」
    名目上はシャリアの護衛の継続だが、家から出ることもないだろう。シャリアには実のところ予定があったが、キャンセルするより他ない。
    「……ありがとうございます」
    「ぅん」
    むずがる様な返事をして、シャリアはエグザベの下から伸びをするように体を伸ばし、ベッドに備え付けられている小さな引き出しからスキンを取り出す。
    「私は寝ちゃうけど、これを使ってくれれば好きにしてくれて良いので」
    「…………あぅ、ありがとうございます」
    欲求不満を見破られたエグザベは、顔をこれまで以上に真っ赤にして礼を言う。
    シャリアはエグザベの頭を引き寄せ顔を近づけると、口元のほくろに口付けた。
    「君は寝ちゃう前に、水分補給とカロリーを摂っておきなさいね」
    おやすみ。
    そう言ってシャリアは意識を手放した。
    眠るというよりは気絶したシャリアを、エグザベは見下ろす。
    そして自分の浅ましさを呪いながら、スキンを付け、シャリアが最も楽だろう体勢にして、彼の中に入った。
    「……ん」
    顔にかかった緑色の髪を耳に掛けてやると、エグザベはそのまま後ろからシャリアを強く抱き締めた。
    (この人を大事にしたいのに、結局僕が甘やかされている)
    謎めいたシャリアが見せる優しさが、エグザベは怖いとすら思うようになった。
    計算高い打算があるときと、己の身を捧げてしまうような危うい慈愛を混沌と混ぜたような優しさを、シャリアは持っていた。
    そして本来、シャリアが持つ優しさというのは後者なのだ、と分かってきていた。
    己の付けた歯形と痣をエグザベは撫ぜた。
    薬が切れて、耐え難い眠気が襲ってくるまで、ずっとそうしていた。


     喉の渇きで目が覚めた。
    シャリアは自分を抱き締める腕から這い出る。
    その時に、ずるりと抜けるものがあって、私たち寝返りもせずに同じ体勢で寝てたのか…と不思議な気持ちでまじまじと自分を抱き締めていた腕の主を見遣った。
    起きている時はくるくると変わる表情も相俟ってあどけなさすら感じるのに、眠っている姿はキツく眉根を寄せているせいで精悍だった。
    そのままぼんやりとエグザベを眺めて、再度喉の渇きに突き動かされてようやく、シャリアはよろよろと立ち上がって水を汲みにいく。
    肌は寝汗は少し掻いたようだが、昨晩シャワーを浴びる前よりもよほどさらりとしていた。
    「……入れただけで、何もしなかったのかな」
    そうとするならば、彼の忍耐力は凄いものがある。
    枯れた喉に手をやって、シャリアは少し考えた。
    寝室に戻り、眠っているエグザベを眺めながら、数字を思い浮かべる。
    その数字を端末に入力し、発信ボタンを押す。

    『どなた?』

    聞こえた声は、昨日の女の声だった。
    シャリアは少し考えて、掠れた声で「そこから出たい?」と聞いた。
    短い沈黙。

    『いいえ、出たくない』

    それだけを言って、電話は切れてしまった。
    そうか、貴女はそこがいいのか。
    端末を放ったシャリアはもう一度、深く深く眠るエグザベを眺めた。
    私の鳥も、そう言ってくれればいいけど。



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