朱色の誓い「ふーふーちゃん」
浮奇の、零れるほどの愛に濡れた瞳が、ずっと好きだった。
その眼差しの矛先が自分であることを知った瞬間の喜びは、今でも忘れられない。
この瞳にずっと見つめられたかった。
でも、それももう諦めなくてはいけないもの。
今日浮奇は1日外出している。
俺はこの日のために1ヶ月も前からスケジュールを組んでいた。
俺は今日、浮奇とたくさんの時間を過ごしたこの場所を出ていく。
予め違和感を感じない程度に少しずつ自分の物は捨てていたから、持っていくものはボストンバックひとつ分に無理なく収まった。全てが予定通りだ。虚しさすら感じる。
どうしたって後ろ髪を引かれ、もう1時間も部屋でうろうろしてしまっている。
悔しいことに、この時間さえも1ヶ月前の自分の手の中なのだ。
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