雑炊(寛夢版) 今日は、寛見さんちにお泊まりだ。
なかなか会えなく、会うのすら二週間ぶりで嬉しいはずなのに、少し浮かない顔の夢が、夜道を歩いている。
仲良しの友人たちとの、女子会帰りだ。
飲みながら、恋人との夜の生活の話になり…。あまり抱いてもらえてない、と自覚してしまった。
頻度が少ないし、優しすぎると、言われた。
「魅力が、ないのかなぁ〜…」
一人、呟きながら、歩く。
夢は、日車とは、違う仕事についている。
彼の仕事は、弁護士だと聞いている。
無骨だけど、まっすぐ見てくれる目が、大好きだ。
大好きだからこそ、抱かれたい。
どうやったら、強く求めてもらえるのか。
誘惑、してみよう。
心に決め、日車宅のインターホンを押す。
足音がして、日車がドアを開けた。
帰ってすぐなのか、まだスーツ姿のままだ。
「どうぞ」
「寛見さん、こんばんわ」
久しぶりに見る、日車の顔。
靴を脱いで上がった廊下で、ぎゅっ、と、夢から抱きつく。
「どうした」
「…魅力、ないですか、私」
「いや、そんなことはないが」
「あんまり、シてくんないじゃ、ないですか」
少し酔った夢の頬は赤く、日車を見上げる目が、潤んでいる。ぷくりとした、唇。
日車が、ゴク、と唾を飲み込む。
「…かなり酔ってるな。何か食べたのか、まだなら簡単な、雑炊とか」
「逃げないで」
ネクタイを引っ張り、顔を近づけ、キスをする。
「もっと、私を、欲しがってください」
日車の、顔つきが変わる。
夢の両足の間に、自身の左足を入れて壁に押し付け、両腕も同じように、壁に縫い止める。
鼻先同士を擦り付け、囁く。
「俺がどれだけ、我慢してるか、知らないだろう」
普段見ることのない、ギラついた顔。
「我慢、してるの?」
「してるさ。…最初シた時、痛がってただろう」
ぐっ、と左足を持ち上げ、夢の体を刺激する。
「んっ…」
「だから優しく、溶かしてからシてたのにな。回数にしても、そうだ。それを『もっと欲しがって』…か」
「そう、です」
話しているうちに、触れ合っていた唇が、重なる。ぬめる舌を差し入れられ、夢がくぐもった呻きを、上げる。
途中で息苦しくなった日車が、口づけを続けながら夢の右腕の拘束を解き、ネクタイを緩める。
…銀の糸で繋がれたまま、唇が離れた。
そのまま日車は、夢を両手で抱え上げる。
続きは、ベッドで。
そう囁き、歩き出す。
こんなに力強い人とは知らなかった。
夢は思いながら、日車にしがみついた。