「無敵、超合体」てと+ちあ まだ俺がアイドルとして慣れていないころ、ステージ上で躓いたことがある。危ないから足元には気をつけるようにと、振りは間違えても怪我だけはしないようにと何度も言い聞かせてくる隊長に、「もう、いい加減わかったッスよ」とちょっとつっけんどんな返事をしたというのに。
床に倒れ込む間、スローモーションのように客席の人間が見えた。ステージですっ転ぶ、まだ知名度も何もない俺を見て、彼女らは何を思うだろうか。「仕方がない」と生暖かい目で見るだろうか。「その程度」と関心をなくすだろうか。
そのどちらだとしても、怪我をするよりずっと怖い。
しかし、もうどうしようもない。——転ぶ!
「南雲」
身体に痛みは走らず、気づけば温かいものに身体が包まれていた。
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