純粋でありふれた恋最近いつものメンバーでいるときに視線を感じる。チラチラ見られて気が散るとかじゃなくて、なんか、熱い視線、みたいな?僕にその視線を送っている相手のほうを見る。僕と目が合うとびくっとしてすぐ目がそらされちゃう。なんだろう?
「と、いうことなんだけどみんなどう思う?僕なんかしちゃったかな?」
放課後にその人物を除いてみんなに相談してみることにした。
「ん~~…そ、れはねぇ?僕たちがいうことでもないような…。」
「だな、シュウが自分で考えることじゃね?」
「同意見だよ。ただシュウ、そんなに気になるのなら直接本人に聞いてみるというのはどうだ?」
「それが手っ取り早いかぁ。うん、わかった!ありがとね、みんな先に帰っててくれる?多分部活やってると思うからそれまで待ってみる。」
「まさか…シュウ気づいてないとはね。」
「ルカのやつシュウのこと見すぎだよね。あんなに見つめてたらこっちまで恥ずかしくなるっつーの。」
「まあ二人の問題だ。俺たちはうまくいくのを願っておこう。」
「シュウ!ごめんね部活長引いちゃった!ヴォックスからシュウが聞きたいことがあるらしいから教室に寄ってくれって連絡来てたんだけど、なんかあった?」
「うん、部活終わりで疲れてるとこごめんね、話しながら帰ろ。」
「POGよしいこ!」
「ん?え、ルカもしかしてコート着てきてないの!?」
「?うん。」
「マフラーは!?」
「え、ないけど…。」
「筋肉バカ…」
「シュウ、聞こえてるよ。」
「んはは、ごめんごめん」
「ってことで単刀直入に聞くんだけど、僕ルカになんかしちゃった?」
暗い夜道を歩きながらさりげなく。
「ん?シュウが?俺に?ん~~いや?思い当たることはないけど…。」
途中で寄ったコンビニで買った肉まんをハフハフしながらルカは答えた。
シュウもいる?と差し出してくれたけど夜ご飯が食べられなくなるからと断った。
本当に思い当たることがないという風に眉間にしわを寄せて唸っている。
「じゃあ最近僕のこと見てるのは、あれ何?」
ギクッ!!
ルカの肩が跳ねる。
「ルカ~?思い当たることあるっぽいけど??」
「えと~~……」
「やっぱ僕なんかしちゃったってことじゃん…言ってくんないとわかんないよ。僕、ルカに嫌われたくないんだけど……。」
「NO嫌ってるわけないじゃん!俺がシュウのこと嫌うなんて…その反対なのに。」
「ん?なんか言った?反対?」
「ううん!何にもない!けどごめんね、なんかシュウのこと見ちゃうんだ。気になるならもうしない。」
「気になるってか…ま、いいや僕のこと嫌ってるわけじゃないって知れてよかった。」
気が付くともう僕の家の前についていた。
ルカと一緒に帰るときはいつも家まで送ってくれる。僕女の子じゃないんだけど。
「ルカ、送ってくれてありがと。肉まん食べたからって温まった気になっちゃダメだよ。すぐお風呂入ってね。それから寝るときはちゃんと布団掛けて足は出しちゃだめだよ。それから…」
「シュウ!わかったわかったから!シュウも早く家に入りな、寒いでしょ。」
「んはは、わかったよ。じゃあね。」
「うん!また明日!POG!」
ルカは僕が家に入るまで笑顔でブンブンと手を振っていた。
「ふ、ワンちゃん…」
ふふ、ルカといると明るい気持ちになれるな。なんで僕のこと見てるのかは結局わかんなかったけど嫌われてないって知れてまずは安心した。
「みんなにも明日お礼言わなきゃな。」
「ルカ、おはよう」
「アイク!Good Poging」
「ぐっど、ぽぎんぐ…?ま、まあいいやルカは朝練?」
「そう!アイクは?」
「僕は朝誰もいないときに本を読むのが好きなんだ。っていうのは建前で…」
アイクが何やらニヤニヤしてる。なんだ?
「ルカ~~昨日はどうだったのかな~~?勿論シュウに想いは伝えられたんでしょ?」
「そ、それが…。」
アイクには俺がシュウのことを好きだって言ってある。口が堅いしよく相談にも乗ってもらっている。本当は昨日ヴォックスから以外にアイクからも連絡が来ていた。
『ルカ、今日シュウと帰ることになると思うけどいい機会だからルカの想いを伝えてみてもいいんじゃないかな?』
ってな感じで。アイクの言う通り俺がシュウのことを好きって伝えるには絶好のチャンスだったし、言うつもりだった。けど……
「ええぇ!?結局言えてないの!?なんで!!」
アイクはものすごい顔しながら俺の肩をつかんで揺さぶっている。
「ちょ、アイク声でかいって!…なんか昨日シュウが俺に嫌われたくないって言っててびっくりして…なんでそんな考えになったんだろうって考えてたらいつの間にかシュウの家についてた。」
アイクは俺が話している間もため息をつきながら肩揺さぶり続けてるしいつになったら止まるんだ?
「あぁ~もうルカ…あのねルカ。ルカもシュウも純粋でかわいいと思ってたけど流石にひどすぎ。シュウはなんで気づかないのかなぁ…ルカもルカだよ!シュウがあんまり恋愛したことないの知ってるでしょ。見てるだけで~なんて言ってたら一生シュウは気づかないよ?」
確かに。俺がウジウジしてたら一生シュウに気づいてもらえない。ってかいつになったらアイクの揺さぶりは止まるんだ?
「わかったよ。アイク今日こそ俺シュウに言うよ!」
「よく言ったルカ!応援してるよ。シュウには僕から放課後待つように言っておこうか?」
やっとアイクの揺さぶりが止まったちょっと酔った。さっき食べたばっかの朝ごはん出てきそう。
「ううん。俺朝練終わったらシュウの教室いくよ。アイクはシュウと同じクラスだよね。シュウが来たら連絡してくんない?」
「わかった。じゃあ朝練頑張ってね。」
気づいたら校門前まで来ていて、俺は部室に向かった。
走る前のストレッチをしながらシュウになんて言おうかって考える。
今日シュウに言うのか…ちょっと緊張するな…POG緊張するなんて俺らしくない!あんまり考えすぎても頭真っ白になるだけだし!ストレッチも終わったことだし走れば頭もすっきりするでしょ。
少し走って汗をかく。タオルを忘れたから服の裾で汗を拭いてると見学に来ている女の子たちがキャーキャー言ってて…かっこいい先輩とかいるのかな?
「ルカ!」
シュウが騒ぐ女の子たちをかき分けて俺のもとに来る。
「シュウ!おはよう!早いね!」
「そう?いやいつも通りだよ。」
シュウが指さしている校舎についている時計を見てみると本当だ。いつもシュウが学校につく時間だ。シュウのこと考えてたからいつの間にか時間が過ぎてたのか…
「それよりルカ、服で汗拭かないの。おなか見えてるよ。僕今日体育でタオル使うんだけど二つ持ってきたから一つ貸すよ、はい。」
「POGありがとうシュ…。」
普通にシュウからタオル受け取ったけどふわふわで…やばい…めっちゃシュウのにおいする…勃ちそう…
「シュ、シュウタオルありがと!ほら、もう時間だよ!」
「あ、ほんとだ今日朝テストあるんだよね急がなきゃじゃあね、ルカ。タオル返すのはいつでもいいからね。」
シュウが生徒玄関入るのを見送りながら気持ちを抑えるために素数を数える。
「1…3…5…あれ、素数って1含まれるんだっけ…えっとえっと…」
やばい…頭の中がシュウのことでいっぱいで、素数のことなんか考えられなくて
「シュウ…」
シュウから受け取ったタオルを抱きしめる。はあ…好きすぎておかしくなりそう。
「アイクおはよ~」
「シュウ!おはよう~」
『る、か、しゅうが、きた、よ』送信っと。
「アイク、今日朝テストある日だよ~。勉強しな~。」
「あぁ、うん~」
シュウからの忠告を話半分に聞きながらルカと連絡しあう。
『あ!!!!俺朝シュウと話したのに放課後のこというの忘れてた!!』
『はぁ~?なんでよ!もう…時間だから僕から言っとくよ…。』
『ごめんアイク~T^Tよろしくお願いします…。』
なんだルカのやつかわいい顔文字送って許されると思ってるのか。見えないしっぽが垂れ下がっているのが想像できる。今度ご飯おごってもらおう。
「シュウ、今日の放課後ルカが話あるって。教室で待っててもらえる?」
「?そうなの?そんな話、朝ルカから聞いてないけどな。」
シュウは顎に手を当ててきょとんとしている。かわいい。ルカが好きになるのもわかるな。
「そうなんだよ…いうの忘れてたんだって。」
「んはは、ルカっぽい。ってかなんでアイク通して話してるの?二人だけの秘密があるのかな~~?なんてね、」
シュウは本気で言ってないんだろうけど図星を突かれてびくっとなる。担任が入ってきてテスト始めるぞ~なんて言いながらテスト用紙を配り始める。
はっとなりテストに取り掛かるが予習してきたのにもかかわらず散々な結果だった。
ルカめ…。ご飯おごってもらうだけじゃすまないからな。
「みんなじゃあね。気をつけて帰ってね。」
「うん!シュウも最近暗くなるの早いから気を付けて帰ってな!」
「バイバイ、シュウ」
「じゃあな、シュウ」
みんなにこやかというよりニヤニヤ…?の表現が正しいような笑い方をして帰っていった。なんなんだ。
というかルカの部活が終わるまで何してよう。課題はもう終わってるし…ぼーっとしながらスマホでもいじってようか、と思ったらガラガラと教室の扉が開いた。
他クラスの人か先輩とかだろうか?見たことのない女の人が二人。この教室に何の用だろう。
「ねぇシュウ君さ、ちょっといいかな?」
「んぇ、僕ゥ!?」
急に話しかけられたせいで変な声が出てしまった。僕に何の用があるというのだ。
「そう、あなた。あのさ、朝のあれどういうつもり?」
“朝のあれ”というものに全く覚えがないしそもそもなんで僕の名前知ってるんだろう。
「えっと~…というと?僕何かしちゃいました?」
「自覚ないんだ。じゃあ単刀直入に言うけどさ、ルカ君の近くにあんまりいないでほしいんだよね。」
「ん?どゆこと?」
「ん~わかんないかな笑。この子がね、ルカ君のこと好きなんだよ。シュウ君がいるとちょ~っと邪魔なんだよね。朝だってこの子がルカ君にタオル渡そうと待ってたの。それなのに急に割り込んできてさ。」
そういいながら後ろにいる如何にも女の子というようなかわいい子に目をやる。ああ、朝のことって僕がルカにタオルを渡したことか。
「えっと、それはつまり告白したいからちょっとルカのこと貸してほしい的な感じかな。全然いいよ。あとタオルのことはごめんね。気が付かなかったんだ。」
「貸してほしい?別にルカ君ってシュウ君のものじゃないよね。ってかそういうことじゃないの。シュウ君ってルカ君のこと好きでしょ。男同士なんて…。かっこいいルカ君にはかわいい女の子のほうがあってるの。身を引いてってこと。」
「僕がルカを好き?何言ってんの。そんなわけないでしょ。ルカ今日部活早く終わるって言ってたしすぐこの教室に来るよ、告白でもなんでもすればいいじゃん。」
予想だにしてないことを言われてとっさに否定してしまった。僕ってばなんでこんなに強い言い方しちゃってるんだろう。
「あっそ、無自覚ってわけね。まあいいやシュウ君がいいっていうなら早くこの教室から出てって私たちルカ君のこと待つから。」
「はいはい。」
勢いよく扉を開けて出ていってすぐ近くの空き教室に入る。ここで告白され終わったルカをまとう。帰り道にからかってやるんだ。
可愛い彼女ができて良かったねって、けどちゃんとお幸せにって言って、いつかはその子との惚気も聞いて、手つないでるとことか見ちゃってそれから…それから……
「…っう、う、うぅ…るかぁ…やだよ…」
思わず声が零れ落ちる。
今さっき気が付いてしまった僕の終わりを迎えた儚い恋心。今更気が付いたってもう遅かった。
いや、もっと早く気が付いていたとしてもきっとずっと心の奥底にしまったまま、僕だけの永遠の秘密にしていただろう。
こんな気持ち男の僕なんかが持ってはいけないものだった。
さっきの女の子が言っていたことは正しい。あのかっこいいルカにはかわいい女の子が隣にいるほうがあってる。
けど、それでも…
「ぼくを、えらんでよ…るか……」
誰も聞いていない、聞かせたくない僕の想いは僕以外の誰もいない空き教室に吸い込まれて消えていった。
はずだった。
「シュウ」
いつの間にか空き教室の扉をルカが開けていて、僕の消えてなくなるはずだった想いが聞かれたかもしれないと焦り、急いで涙をぬぐいながら笑顔でルカのほうへ向く。
「る、ルカ!ごめんね教室で待ってなくて。そ、それより告白、されたでしょ~、!は、はは良かったじゃん~~…!」
直前まで泣くことを許されていたのに急に制止を求められた僕の涙は止まることが難しく少しだけこぼれる。
僕が今できる最大限の笑顔をルカに見せながら祝福をし、涙の理由を空き教室の埃のせいにして。
「シュウ、さっきのどういうこと?」
「…。な、なにが?へへ、それより早く帰ろ、!」
あの女の子の話聞かせてよ~なんて思ってもないことを言いながらコートとマフラーを急いで身に着けてバックを持ち足早に教室を出ようとするがルカに腕を引っ張られる。
「シュウ、待って。マフラーぐちゃぐちゃだよ。」
そういいながらルカは僕が完成させたぐちゃぐちゃのマフラーをほどく。
もしかしたらこんな面倒くさい僕の想いをなかったことにしてくれてるのかもしれない。
淡い期待を抱いて涙の跡が見えないように下を向く。
ルカはマフラーを結ぶより先に涙の跡がはっきりとついた僕の頬を撫でる。
びくっとしてしまった。
「シュウ、なんで泣いてたか教えて。」
「だから埃だって!あそこの教室長いこと使われてなかったみたいで埃がすごかったみたい。」
「そうなんだ、じゃあ俺がさっきの女の子と付き合ってもいいんだ。」
「っ…もう急に何~?僕は応援するよ!二人とも、すごく、お似合い…で…っ……ぼく、なんかより、ずっと……っ」
「シュウ…」
「ご、ごめ…すぐ止める、何でもないごめん…ごめん本当に、ごめんなさい、るか、迷惑かけちゃって…」
なんで止まんないんだ僕の涙、ダメだろうルカに迷惑かけちゃ。嫌われたくない、やだ、止まって…お願い……
「シュウ一旦落ち着こう。」
そういいながらルカは僕の体を抱きしめた。ルカは暖かくて僕よりも大きくて、こんなやさしさ知りたくなくて
「ルカ、みんなに誤解されちゃう。早く離して。」
「うん。落ち着こうシュウ。」
「ルカ、ほら帰ろう。早く離して、やだって、早く僕から離れてよ、ルカ、ねぇはやく、早くしないと、みんなに、るか…みんなに、見られちゃう、やだ、ねぇ、はぁ、るか…はぁ…はァ……はァっ…!!」
「シュウ、落ち着いて、大丈夫ゆっくり深呼吸して、大丈夫だよ、シュウ。大丈夫、大丈夫。」
「なんでっ、離してくれないの…!!僕なんかほっといて女の子のところに、行けばいいじゃん!!はぁっ…僕なんか…っかまわないでよ!!!」
酸素が行き届いていない僕の脳は隠し通そうと必死になっていたものをどんどんと言葉にしてしまう。
「うん」
「うんじゃ、ない!!なんで離してくれないのって!!はぁっ…」
「シュウのことが大好きだからだよ。シュウと離れたくないから離さないんだよ。」
「好きじゃ、ないでしょ!!こん、な…面倒くさくて、はぁっ、かわいくもなくて、!男なのに、!!」
「そうだね、面倒くさい。そのシュウの考え方。男だったら好きになっちゃダメなの?俺シュウのこと好きなんだよ。それもダメなの?」
「なん、で…っ…」
「なんでって、好きになっちゃったんだよ。気づいたら目で追ってて、毎日会うのが楽しみで、誰にもとられたくない。もっと知りたいと思ってる。シュウは違うの?」
「おん、なじだよ…っぼくも、はぁっルカのこと大好きだよ、!あの女の子よりっ、ぼくを、選んでよ、!」
「うん、シュウを選ぶよ。俺は誰よりもシュウを選ぶよ。一生離さない。」
「っ、るか…」
「シュウ…」
「ずっ、ごめんルカ、泣き喚いちゃって。」
恥ずかしいな、と言いながら豪快に鼻をかんでいる。
「ううん。全然大丈夫だよ。シュウが思ってること聞けて良かった。呼吸も落ち着いてきたみたいだし、もうちょっと休んだら帰ろうか。」
シュウが過呼吸になっちゃったときはどうしようかと思ったけど少しづつ落ち着いてきてくれてよかった、とシュウのマフラーを巻きなおしながら考える。
よし、できた!
「ありがとう。…あの、ルカ…」
シュウはマフラーに顔をうずめ、もじもじしながら言いにくそうにこっちを見てる。やっぱりかわいい。本当に好きだなぁ。
「なぁに?」
「えっと、あの、僕たち…って」
POGそういえばシュウに正式にお付き合いを申し込んでなかった!シュウも俺のこと好きって言ってくれたけどやっぱり改めて聞くのは緊張する。一呼吸おいてシュウに向き直る。
「シュウ。俺はシュウのことが好きです。付き合ってください。」
「…僕もルカのことが好きです。よろしくお願いします。」
照れながらも、んははといつもの笑い方をするシュウはやっぱりかわいくて大好きで絶対に離さないと心に決めてシュウの腕の中にダイブした
「グエッッ!」
「POOOOOOOG」