純粋でありふれた恋の進展今日は付き合って初めて一緒に登校する日だ。
今までもルカの朝練がない日は一緒に登校してたんだけど恋人って肩書になるとなんだか小っ恥ずかしくて洗面所の前で奮闘してたらいつの間にか家を出る時間ギリギリになっていて、コートを着てマフラーも付けて家を飛び出した。
「ルカ!おはよ、ごめんちょっと遅れちゃった。寒かったでしょ。」
外で待ってくれているルカは案の定コートも着てないしマフラーも付けていない。
「POGシュウおはよう!全然大丈夫だよ!じゃあいこっか!」
「うん。」
さりげなく車道側を歩いてくれるルカは寒さのせいで鼻の頭が赤い。下のほうに目をやるとルカの手があって、僕が少し手を伸ばせば手を繋げそうだ。あと少し、あと少しというところでルカの手は揺れて届かない。
ま、手を繋ぐなんてそんな勇気どこにもないけど。それにまだ僕たちには早いよね。
なんて考えているとルカは僕の顔を覗く。
「シュ~ウ!」
ルカは子供が悪だくみを考えているときのような顔をして僕の手を握った。
「俺の手、握ろうとしてたでしょ!」
「え、な、ル、えっと、」
「はは!POGシュウ顔真っ赤すぎでしょ!」
ルカはハフハフと大爆笑している。
ルカ…手大きい…って!!僕は朝からいったい何を考えているんだ!!
「おいおいお~~~い!!お前ら朝から見せつけてくれんじゃん!!」
後ろからいつもの三人がわっと来る。
ルカはミスタとヴォックスにこのこの~なんていじられている。
アイクはそんな三人を横目にこちらへ歩いてくる。そして僕に暖かいハグをくれた。
「シュウ。ついに結ばれたんだね。僕、二人の恋が実って本当にうれしいよ。」
アイクのやさしさに胸がぎゅとなってアイクを抱きしめ返す。
「アイク~~…ありがとう本当に。」
「あ、そういえばあのね、アイクに相談があるんだけど。」
コソっと言った僕に合わせてアイクはハグをやめて、なに?ってコソっと返した。
「付き合ったばっかなのにプレゼント送るのって、キモイかな。」
「え、シュウって貢ぎ体質なの?そんなことしなくてもルカはシュウのこと大好きだよ?」
「大好っ、!?え、え、あ、いや違くて!ルカいつも寒そうな格好してるからマフラーとか、送りたいなって思って…迷惑、かな…」んははと笑って見せる。
「シュウ~~~~!!君はなんていい子なんだ…絶対喜ぶと思うよ!!」
「ちょ、アイク!声でかいって!!」
なんてわちゃわちゃしてたら前を歩くルカがブスっとしてこっちに歩いてきた。
「アイク…ダメ…」
まさに主人様から離れてとでも言いたげな犬。
「ははは、ごめんってルカ!」
「よし、それじゃ行こうかシュウ?」
「うん!ごめんねわざわざ放課後に付き合わせちゃって。」
「No problemだよシュウ!一緒にルカに似合いそうなの探そうね!」
アイクにお願いしてルカにどんなのが似合うか一緒に探してもらうことにした。
僕たちは学校の近くのショッピングモールでこれがカッコいいだの、機能面を考えればどうだので、2,3時間悩んだ挙句結局一番最初に見たお店のものを買った。たまにアイスを食べたり内設されてるゲームセンターで遊んだりしたけど…
「や~いい買い物ができて良かったね!まさかあんなマフラーがあるなんて!運命としか言いようがないよ!」
「うん…。」
「シュウ?どうしたの?疲れちゃった?」
「いや…ルカ、喜んでくれるかなって…。」
「シュウが選んだものなんだよ!絶対に喜んでくれるよ!」
不安になることなんか一つもないよと言いながら背中を撫でてくれた。
んはは、そうだといいけど。
「というかコレ、いつルカに渡そう。」
「う~ん。今?」
「今!?」
「うん。今渡せたら明日の朝には付けてきてくれるんじゃない?」
「え~今かぁ。家行っても迷惑じゃないかなぁ、ちょっと聞いてみるね。」
シュウはスマホの画面をスクロールしてルカの連絡先を探している。
あった!と言い嬉しそうに電話をかける。
『もしもしルカ?うん。そう。いきなり電話かけちゃってごめんね。え、ううん違うよ!あはは!!うん。そうそう。でさ…』
シュウはころころと表情を変えながらルカとの電話を楽しんでいる。
ルカのやつ幸せ者だなぁ。どんなことがあってもシュウに悲しい思いさせたらただじゃおかないからな!と今ここにはいない相手に威嚇をする。この様子だと電話時間かかるな、とスマホを取り出してゲームを始めた。
・・・
『うん!ありがとう!じゃあすぐ向かうね。うん、わかってるって!んはは!ん、じゃあね。』
「アイク!ごめん待たせちゃって。来てもいいよっていうから僕これからルカんち向かうね。」
二人のデレデレ長電話はやっと終わったらしい。
「OK、暗くなり始めたから気を付けるんだよ?今日は楽しかったよ。また明日学校でね。」
「うん、こちらこそありがとう。また明日!」
シュウはこちらに手を振りながら駆け足で去っていく
ありゃ転ぶな。と思っていると案の定つるっとなっているがギリギリ持ちこたえたらしい。
大股で中腰で胸に手を当ててomg…と冷や汗をかいているシュウを見て笑ってしまった。
ピンポーンピンポーン
「はぁいシュウ?」
「シュウだよ、ルカ」
ガチャ
「POGシュウ!さっきぶりだね~」
「んはは、そうだね」
ルカはシャワーを浴びたらしい。部屋着になっていた。
「ところで、急に会いたいってどうしたの?」
寒いから中おいで、と言われたけどすぐ終わるから大丈夫だよと言った。
「うん、あのね、これ…」
大きい紙袋をルカに渡す。頭にはてなを浮かべながらルカは受け取った。
「これ、中見ていいの?」
「う、うん。」
緊張してきた…アイクはああ言ってくれていたけれど本当に喜んでもらえるのだろうか。
僕のこわばった顔にルカが気付いたのか僕の手を握ってありがとう、開けてみるね?と笑顔で言ってくれた。
「わお…これっ、マフラー…?俺に?」
袋を開けるとそこにはベージュの暖かそうなマフラーが入っていて端のほうにはAugustusによく似たライオンが刺繍されていた。
ルカはマフラーを広げたり触ったりomgと言ったり。
「うん…ルカいつも何もつけてないみたいだから…」選んでみたんだけど…えと…
「あっ、マフラー嫌いな人もいるだろうし、もしもう持ってたりしたらあの、全然ごめん、えっと、その、」
ルカの反応の意図が読み取れなくて早口で捲し立ててしまう。
「シュウ…」
ルカはそんな僕の話なんか聞いてなんかいなくてぎゅ~~っと抱きしめられてしまった。
「シュウ…シュウ…大好きだ。本当に心の底から大好きだよシュウ~~…」
「えと…」
「俺、本当にうれしいシュウ。いいの?もらっても。」
「うん、一生懸命選んだの。ルカに付けてほしい、な」
「PO~~~~Gシュウ!つけてよ!」
「僕が?んはは、わかった。よっと、」
マフラーを相手に結ぼうとすると自然と距離が近くなる。
「結び終わった、よ、んぅ…」
唇が離れる
「シュウ、大好きだよ。」
「ぼ、僕も、ルカのこと、大好き。」
「あぁ~~俺のシュウがかわいいよぉ~~……」
「んはは!」