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    触研プチイベ 未来の自分との邂逅
    (クモツ、10年後ヨモツ)

    数ある未来の中、『もしも』が選ばれた。
    それがジブン、クモツという人物なのだろう。

    本当に進むべき未来があったはずなのに、書き足されたような道を歩むことになったジブンは、今はジブンという存在を認められずにいる。
    この研究所にいる前の記憶はない、時折ほかの研究員に名前を間違えられ、まるで『誰か』とジブンが入れ替わったような。
    そんな現実を突きつけるような現象に立ち会う事になるだなんて。

    かきあげられた、水色の髪。
    海の深さを思うような、青い瞳。
    身体を纏う、蛍光色の触手。

    鏡を見ているのかと錯覚してしまうほど、ジブンとうり二つな姿。

    違う部分は浅く刻まれた目元の皺と、
    触手の管の色が血のように赤くなっている。

    「君は、ジブン…?」

    訳のわからない質問を投げてしまったと思う。しかし、思わぬ事態に頭が働かない。そんなジブンの状況を理解したように、彼は頷く。

    「ジブンは君であり、君にならなかったジブンだ。ジブンの名前はヨモツ。こっちの触手の名前はヘグイ。」

    返答の意味が分からなかった。
    名前を呼ばれた赤い管の触手は、彼、ヨモツの頬にすり寄る。ジブンのヘグイと同じ名前、同じ甘え方に胃の中にすとん、と何かが落ちた。これが納得というのだろうか。

    「ヨモツは、…本当のジブン。」
    「うん」
    「でも、どうして年を取っているの?未来のジブンは、ヨモツになってしまうの?今のジブンはどこにいってしまうの?消えてしまうの?」

    一つ一つ確認したい、その気持ちとは裏腹に口は物事を急かす。不安、焦りだ。夢であれとヨモツに詰め寄り、前を広げた白衣の胸元を握る。しっかりと存在しているその感覚に、視界が滲んできた。

    「いいや、ジブンは別の世界線から来たんだ。君は、あの異界への接続の実験にて〈成功し、記憶を失った〉が、ジブンはその実験で〈失敗し、生き延びた〉。ねぇ、ヘグイ」

    ヨモツは、ジブンの腕に巻かれた触手に目を向ける。ジブンのヘグイは、ヨモツと対面してから固まっている。その感触にも、ジブンは焦らされていた。ヘグイは覚えているんだろうか、クモツになる前の…ヨモツを。…想っているのだろうか。

    「ヨモ…ツ…」

    短く告げられた名前。ジブンに刺さった紫の管から伝わる思いに、苦しくなる。奪われたくない、ジブンはヘグイをかき抱き蹲る。ジブンの思わぬ行動にヘグイの身体が震えた。
    ヨモツは、ふっと微笑みジブンとヘグイに手を当て撫でる。まるで子供をあやすかのように。安心して、と声をかけ。

    「クモツ、君のヘグイはあらゆる世界線の中で唯一完成された触手だ。その紫が証拠だ。いくつも枝分かれした可能性は、”成功”を見つけたことでその世界線が”正史”となる。つまりは、君がもう”本物”なんだよ。だからヘグイも迷わないで、ずっとクモツの傍にいてくれ。」

    ジブンの手を引っ張り、互いの手を重ね合わせる。温度は、感じなかった。

    「ジブンはもう君にとっての『もしも』であり、『可能性』となった。君は、これから君の道を歩む。過去の事を思い出したいならそうでもいい、新しい世界を目指して進むのもいい。どうか、これからを」




    目が覚める、身体が重い、

    随分長い間夢を見ていたような、…相も変わらずジブンは覚えてはいないけれど。

    手元に残された壊れたフィウツール。


    「ヘグイ、お腹空いたね、食べに行こうか」


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