ある時、「今夜食事でもどうだ?」と面倒な人物に絡まれたボクオーン。
適当にあしらうには立場ある相手、「先約があるので」とそれらしい嘘で煙に巻こうとするも、まぁしつこい事しつこい事。
終いには腕を掴もうと手を伸ばしてきて、とっさに避けようと身構えるボクオーン。
だが、途中で相手がビクッとなり動きが止まる。
その視線が自身の背後に向いている事に気づき、眉をひそめながら振り返ると、そこにはダンターグが立っていた。
「時間になっても来ねぇから、こっちから来てやった」
そう言って相手を軽く見た後(別に睨んではいないが、普段の顔つきでなので彼を知らない人は充分怖い)、「おら、行くぞ」とボクオーンの腰に手を回しその場から連れていこうとする。
相手はなんとか制止の声を上げ様とするが、ダンターグの風貌にビビってしまい声が出ない。
「……そういう事ですので」
では、と腰に添えられた手に自分の手を宛がいながら、ボクオーンは微笑みダンターグと立ち去った。
「余計なお世話だったか?」
「いえ、助かりました」
場所は変わり、離れた二人。
「テメーとは無理だってハッキリ断りゃ良いだろう」
「そうもいかないのです。
こちらにも、立場というものがありますからね」
「へいへい、面倒くせーこって」
頭をかき、じゃあなと立ち去ろうとするダンターグ。
「どちらへ行こうというのです?」
引き留めるボクオーン。
「あ?」
「迎えに来てくれたのでしょう?」
そう言いながら再びダンターグの隣へ立ち、訝し気な目で見てくる相手を、何処か楽しげな表情で見つめ返すボクオーン。
「……奢れよ」
「店によりますね。
あまり質より量の物は好みません」
「好き嫌いしてんじゃねぇよ、だからちっせぇんだろ」
「はっ倒しますよ」
そんなやり取りをしながら、街中へ消えていく二人であった。