コーヒー 念願のコーヒーメーカーを手に入れた。背の低いテーブルの上に恭しい手つきで置いたばかりのコーヒーメーカーを見つめるニキの目尻は下がるばかりだ。
椎名家に置いてあるキッチン用品の中ではいちばんの新顔だが、まったくの新品というわけではない。「買ってみたはいいけど淹れるのが段々面倒くさくなった」とコーヒーメーカーを手放そうとしていたバイト先の人から破格で譲り受けたものだ。そしてなんと、ミル付きである。
ボトルコーヒーやインスタントも決して嫌いではないのだが、挽きたての豆の香りはニキの心をやさしくくすぐり虜にする。あたたかく深みのある香ばしさを堪能するため今日の朝食は気合いを入れて仕込んだフレンチトーストだ。
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