ピアノ線と依存症【ウエサウ】きっかけは、そのたった一つの言葉だった。
その時、オレはいつものようにサウラーと話をしていて。どういう流れでそうなったのかは忘れてしまったが、気付けば軽い言い合いのような感じになっていた。サウラーが色々とこちらを苛立たせるようなことを言ってくるものだから、オレもつられて普段言わずにいたことまで言ってしまって。こういうことをウリ何とかと言うのだと、いつだったかサウラーが言っていたが……とにかく、それはそんな中での出来事だった。
思わず口から飛び出したその一言に、自分のことなのに何故か驚いて。
しまった、さすがに言い過ぎたなと思って、謝ろうとサウラーの顔を見た。あいつにしては珍しく、ショックを受けたような顔をしていて。それを見た瞬間ーー心臓の辺りに、何かぞわりとした感覚があった。言葉では上手く言い表せない、不思議な、……でも嫌な感じはしない、そんな感覚だ。心地良い、とも少し違うが、どちらかと言うとそれに近いものだった。
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