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    KAYASHIMA

    @KAYASHIMA0002

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    KAYASHIMA

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    8/28 sh右 Web only 『闇の帳が明ける頃』
    展示しておりましま作品です。

    #lucashu

    【lucashu】あいがこわいと君がいうので。

    「好き」という言葉を聞くとシュウは声を震わせる。友愛・親愛・恋愛。たくさんの「すき」があるけどそれらすべてにシュウは困った顔(あくまでバーチャルな外側)を、一瞬見せる。震えて、唇をきゅっと噛むような。なにか怯えてるみたいに。愛を受け入れられないっていってるみたいに。全く寂しそうな素振りはないのに。見えないはずのシュウが、オレには映る。



    ボイスチャットで、よく姿を見るのがシュウだった。シュウは用がないときでも顔を出して、他愛ない会話に混ざって、仲間を助けてくれる。良き隣人、って感じ。シュウなら死んでも三日で蘇りそうな聖人みたい。でも相応だったり、子どもっぽかったり。でも大抵はそこにいる人に合わせて、自分を変えていくように感じた。オレの前では良いお兄ちゃんみたいな。それでいて、最近はちょっとだけなつこい。今までは、何となく間合いを探られてたんだと思う。ファーストインプレッションで、オレは「シュウがちょっと怖かった」。多分、それをシュウは感じ取ってて、オレとの距離の適正を見定めてたんだと思う。どうすればオレが緊張しないか、怒らないか、楽しめるか、笑うか。話すことでシュウはたくさんの情報を仕入れて、自分をカスタマイズする。シュウの中で、オレとの接し方が決まったってことなんだろうなって。そう直感すると、カスタマイズされたシュウが、目の前で笑っている気分になった。良かれと思って、偽られたシュウなんだと思ってしまって、オレはそれを暴きたいと思った。



    最近よくシュウとふたりで話す機会が増えた。少し砕けた様子を、声色から感じ取れるようになって心が弾む反面、目を合わせられない距離を恨めしくも思う。この薄いモニターの向こうで、本当にシュウは笑ってるのかな、って考えがやまなくて、つい黙ってしまう。
    「はは、は、」
    「ルカ?大丈夫?」
    ついさっきまで、箸が転がっても面白い子どもみたいに笑ってたのに急に黙ったオレに、心配するようなシュウの声が耳に入って我に返った。モニターには、情けなく眉の下がった顔が写っていて、手のひらで目元を覆って揉み込んで、息を吐いた。
    「大丈夫だよ!ちょっと急に考えごとしちゃって」
    頬をバチンと叩いて務めて明るい声で返すと、スピーカーの向こうから小さな声で「そうなら、いいんだけど」って不安そうな言葉が震えた。普段聞くよりも、少しだけ揺れたシュウの声をオレは聞き逃さなかった。
    「シュウ、心配してくれてる?」
    「当たり前でしょ、ルカが元気なかったら……心配だよ」
    語尾が消えていく。はじめて聞くシュウの声だった。上がっていく口角を、見られる心配もないからそのままにしてオレは上擦る声で返した。
    「はは、嬉しいなあ」
    「……ちょっとルカ?」
    ムッとした、シュウの声。ますます、暴きたい、剥ぎ取りたいと思った。きっとこれは、欲なんだと思う。



    シュウに、隙あらば「好きだよ」「好きだなあ」「大好き!」って散りばめるように言葉に混ぜるようになった。それは無意識だったり意図的だったり、オレのほとんど本能が求めるままの飾られてない気持ちだったと思う。純粋に、オレはシュウに惹かれてた。「あれが好き」「これが好き」「あれは特に好み」、Loveとlikeを混ぜていくと、シュウはボイスチャット越しに微かだけど強ばった、呼吸を詰めたような息をする。どんなことにも、シュウは愛を好意を受け流す。リスナーの好意も、そういう意味を含んだ戯れのような、オレだったらすぐ返しちゃいそうなサービスにも答えない。お布施を投げられたって靡かない。シュウはそういう奴。ドライで、なに考えてるか分からない。そんなシュウが、ときおりオレの言葉を借りて、というよりオレの真似をするようになった。オレの声真似で、オレみたいに震わせた喉で「I love」と口にするようになった。それを聞いたとき、まるで懐かない野良猫の餌付けに成功したような、不思議な高揚感に満たされた。決して自分の言葉じゃ口にしないけど、オレの真似なら声にできるなんて、まるで。
    「ミラーリングみたいだ」
    好きな人・好意的に見ている人の真似を無意識にしてしまうこと。オレはときどきシュウの口癖が、シュウにはオレのが混じるように、馴染むみたいに鏡のように似通ってくる。たくさんの人の中で、シュウはいつだって人気者で愛されてる。だから別に一人になることなんてないのに、気づいたらゲームの中で、オレのアバターのそばに立ってたり、寄ってきたり、同じような行動をしたり。なんだか親鳥とひなみたいだなって微笑ましくて、オレはシュウの中で飛び抜けた好感度を得ているような幸福感を覚えて、勝手に満たされていく。シュウは何を考えてるんだろう。どんな気持ちで、これもオレへの作った一面に過ぎないのかなとか。余計なことまで考えては、結局「あれは、多分シュウの本来の顔な気がする」って直感にいきついてる。オレのカンは、自慢じゃないけどよく当たるから。きっとそう。分厚いカスタマイズされたシュウのお面から、本来のシュウがこっちを覗いてるんだって、確信めいた予感が働いてる。



    「シュウって怖いものあるの?」
    「んえ?どうしたの突然」
    「いや、シュウってさ、なんでもそつなくこなすじゃん?なんか、引っかかってこれは出来ないなあってことないのかなって」
    個人チャットで他愛ない会話をほとんど毎日するようになって、今日もそんな空気だった。お互いに話したり話さなかったり。ただ「回線」に繋がれて生活するような空間になってだいぶ経つ気がする。オレはマインクラフト、シュウはヴァロラント。夜ごはんと朝ごはん、寝起きと寝落ち前。寒いなあと暑いなあ。真反対の時間を「回線」が繋いで同じ時間を過ごしてる錯覚を見せてるみたい。シュウはオレの質問に少し唸って、小さく笑った。
    「んふふ。たくさんあるよ?小さいことも大きいことも……たくさんね」
    なんだか観念したような声だった。オレは何も答えずに首を傾げる。静かで、ちょっとだけ芯のある声だ。
    「例えば、シュウは好かれるのが怖い?」
    「そうだね、好かれるのも、愛されたりするのも、それを返すのも怖いかな」
    囁くようなシュウの声がサリサリでした電波に乗ってオレに入ってくる。どんな顔をしてるのか、シュウの顔が見たいって、身体中が沸騰するくらい叫んでる。
    「シュウ、オレは怖い?」
    ちょっとだけ掠れちゃった声に、シュウが笑った気がした。妙に顔が熱くて心臓がドキドキとうるさい。なんだか、もうすぐシュウに会える気がする。
    「怖かった、かな。あ〜……わざとだったでしょ?でも、ルカの言葉はまっすぐだから」
    シュウの声が微かに上擦って、オレは我慢が出来なくなった。
    「ねえシュウ、やっぱりシュウが好きだよオレ」
    「……え?」
    「わざと好きっていっぱいいってたのは、シュウが拒まないように馴染まないかなって思ってて、そう……わざと、だよ」
    「……ルカってさ、たまに怖いよ」
    「う、そういうのやっぱ怖い?」
    トーンの下がったシュウの声音にドギマギしつつ、窺うようにわざとらしくしおらしい態度を見せる。そうするとシュウは、仕方ないなあって、きっとそういう顔をしながら笑ってくれる。
    「んはは、怖いよ。でも、嫌いじゃないよ」
    「!じゃあシュウ、シュウが怖くなくなるまでオレはいい続けるけど、いいよね?」
    そう、マイクが拾う限界に近い声で囁くと、シュウから「勘弁して」って情けない声が返ってきたから、
    「そういうのも好きだよ」
    って、これから先何度も何度も囁こうと決意した。



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    Replies from the creator

    KAYASHIMA

    DONEIsアンソロに寄稿しましたお話です〜。
    第2弾もまたあるぞ!楽しみだ〜。
    【💛💜】衛星はホシに落ちた『衛星はホシに落ちた』







     僕は恋を知っている。
     僕は自覚も知っている。
    「恋を、自覚したから」、知っている。
     ルカという男に恋をしてから、僕は彼の周りをつかず離れられず周回する軌道衛星になった。決して自分から、形を保ったまま離れられないけれど、ルカの持って生まれた引力には逆らえずに接近してしまう、どうしようもない人工物。それが今の僕。近づきすぎたところで大きなルカには傷一つ付けられないで、きっと刹那的に瞬く塵になるソレ。そんなことは望んでいないし、そもそも自覚したところで、ルカという数多に愛される男を自分のモノにしたいなんて、勇気もない。それに、そうしたいとも思わなかった。百人のうち、きっと九十人がルカを愛するだろう。僕には自信があった。そのくらい、魅力に溢れている。だから、誰かのものになるのはもったいないと、本気で考えてしまったから。まあ、どう動けばいいのか分からなかった、ってのも、あるんだけれど。何を隠そう、右も左も分からない、僕の初恋だった。心地のいい存在。気負いしなくていいし、持ち上げなくてもいい。危なっかしいのに頼りになる。幾千の星に埋もれない。ルカは僕にとって一等星だった。
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