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    KAYASHIMA

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    🌈🕒ENのL所属💜右小説置き場。
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    KAYASHIMA

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    Isアンソロに寄稿しましたお話です〜。
    第2弾もまたあるぞ!楽しみだ〜。

    #mafiyami

    【💛💜】衛星はホシに落ちた『衛星はホシに落ちた』







     僕は恋を知っている。
     僕は自覚も知っている。
    「恋を、自覚したから」、知っている。
     ルカという男に恋をしてから、僕は彼の周りをつかず離れられず周回する軌道衛星になった。決して自分から、形を保ったまま離れられないけれど、ルカの持って生まれた引力には逆らえずに接近してしまう、どうしようもない人工物。それが今の僕。近づきすぎたところで大きなルカには傷一つ付けられないで、きっと刹那的に瞬く塵になるソレ。そんなことは望んでいないし、そもそも自覚したところで、ルカという数多に愛される男を自分のモノにしたいなんて、勇気もない。それに、そうしたいとも思わなかった。百人のうち、きっと九十人がルカを愛するだろう。僕には自信があった。そのくらい、魅力に溢れている。だから、誰かのものになるのはもったいないと、本気で考えてしまったから。まあ、どう動けばいいのか分からなかった、ってのも、あるんだけれど。何を隠そう、右も左も分からない、僕の初恋だった。心地のいい存在。気負いしなくていいし、持ち上げなくてもいい。危なっかしいのに頼りになる。幾千の星に埋もれない。ルカは僕にとって一等星だった。
     星は掴めないから丁度いい。手を伸ばして、手のひらに収めて握った振りをして、開くと何事もなかったようにそこで瞬いている。そんな、ごっこ遊びをしてそばにいる居心地を確かめて、満足している。いつかルカが話してた、「見守ってるだけでも楽しいから」という言葉が僕にも分かるようになった。果たしてそれは恋なのか? なんて疑問も、もちろん頭にあった。だけど、恋以外に例えようがなかった。
     親友だけど、好きな人。いつの間にか、いつしか、僕の中でそう変わっていった。安心と、自分にはない刺激を与えてくれる。ルカは僕にないものを持った、真反対の人間だ。顔を合わせたときから興味関心があって、だけど仲良くなれるだろうかって不安を抱いた。だって真逆のひとだから。まあそんな心配は杞憂に終わったんだけど。だって、不安も心配も簡単にひっくり返すほど、ルカは魅力的で、エネルギッシュで、惹きつけられてやまないひとだったから。大人になって得る友だちの中で、ルカは群を抜いて特別になった。最初こそ真反対だと思っていたけど、蓋を開ければ似通った性質がいくつか噛み合って、他愛ないことに真剣にふざけることができて、大事なことはしっかりと時間をかけて言葉を交わせる。僕に足りないものを、ルカは補ってくれているんだと気づいたとき、じんわりと胸のうちのさらに内側が温かくなったのを確かに感じた。ルカにもそう捉えられるような、良き友だちであれたらなと思った。そう、確かに親友になりたいと思っていたし、そこが最終目標地点だったことに間違いはない。なかった。
     恋を自覚するきっかけなんてものは、本当に些細なもので。ルカと初めて顔を合わせたとき、バーチャル・リアルと何ら変わらない掛け合いをして、あまりのスムーズさにまるで今までもこうして顔を合わせて話していたような錯覚をした。そのくらい、僕とルカは自然とパズルのピースがはまるように馴染んだ。生涯、得るべくして出会った親友なんだと星野巡り合わせに感謝したことを覚えてる。初対面で、親友を意識した。僕らはこれからも上手くやれるし仲良くなれるだろうなって、嬉しくなった。些細は、二度目の対面で起きた。お互いが慣れない異国で街並みを散策したり、仕事をしたり。環境に戸惑いながらそれでもわくわくとドキドキを弾ませて、はしゃいで、同行してる仲間に叱られて。やってることは普段と変わらなかったのに。
     笑い疲れて隣合ったソファで、小休止にだらりと垂らした腕とルカの腕がこつんと肘を突いて、クッションの柔らかさしか感じてなかった小指に人の熱がそっとくっついた。なんだろうと視線を下げると、なあんだルカの指かって顔を上げて。藤色の柔らかくて透けるように澄んだルカの瞳が僕を見ていることに気づいた。じ、と。ただ、ただ見つめてくる柔らかい眼差しに、僕ののどが、心臓が、そのもっと奥の奥の知らない場所が。瞬間、きゅ、と鳴いたのだ。
     それが、恋だと知った。

     以来、僕は変わらず日々を過ごしている。というのも、相手のことは知っているつもりだったから。ルカは、恋に恋をしているピュアな、今どき珍しいくらい、健全な男だ。見守って、花をプレゼントして。そういう、優しくて柔らかい夢みたいな恋を望んでいる。僕は、それに少しだけ同意して、納得した。僕にとってルカは、必要不可欠な存在で、そう、例えるなら地球みたいなひと。僕はその周りをただ、つかず離れず漂っていたい。はらはらさせる瞬間も、ギャップに悶えらるような新しい側面も、近しい場所で、そっと見守っていたい。バレないように、ルカの砂糖菓子みたいに甘い恋の夢を砕かないように。
     僕らは必要最低限、本当に予定が噛み合わないと顔を合わせない仕事をしていて、良かったと胸をなでおろし続けている。だって、今までだってゲーム中、ルカの操るキャラクターを目で追いかけている自覚はあったのに、それが悪化したから。僕が勝手に(あるいは無意識に)ルカを追いかけてる分には問題ない。だけど、ルカが、僕が思っているより遥かに近寄ってくることが増えたから。他のことに意識が取られているときだったり、ルカを探しているときだったり。とにかくルカは僕を見つけ出すのが上手だった。
    「ヘイ、シュウ〜」
    「シュウ」
    「ふははは、シュウ〜」
     楽しげに弾む声がイヤホンを超えて鼓膜を撫でていく瞬間、僕は緩みそうになる顔をどうにかこうにか抑えて口をもごもごとさせてしまう。嬉しい、という感情が、愛おしい、というものを増やして持ってきて、僕を振り回した。これからも、このむず痒さに振り回されながら過ごすのなら、やっぱりルカは星で僕は衛星だなってそう思ってた。

     きっかけは、些細なこと。恋はたくさんの些細で出来ていることを僕は知った。
     三度目の仕事を兼ねた異国への小旅行。そこにはもちろんルカもいて、僕は小さく口元を緩めた。ルカは僕にとって心を許せる存在であり、胸を騒がせるただひとりでもある。ルカに寄せる感情がバレないように取り繕う気苦労よりも、僕はまた会えたこと、思い出を共有できること、なにより、居心地のいい場所との再会が嬉しかった。心臓がいくら普段より早鐘を打ったところで誰にも分からないんだから平気でしょ。と開き直っていた。
     別行動だった日の夜。僕はすでにホテルで寛いでいて、ルカはまだ帰ってなかった。平日の街並みが、そろそろと静かになる頃合で、そろそろ戻るかなと、自然に携帯端末を眺めて、ルカの名前をタップした。するするとチャットを送信すると、すぐに返事がきた。
    『今どこにいるの?』
    『○○を出たとこ。置いてかれちゃった!』
    「ええ?」
     置いていかれたってどういうこと? と首を捻って感嘆が零れた。そして、ふと僕は、つい欲を出してしまった。
    『そこまで迎えに行こうかな』
     返事を待たずに、僕はもう地図アプリを起動していた。

    「シュウ〜、こっちだよ」
     慣れない夜の街並みを、地図アプリと交互に見比べながら歩いていると(ストリートビューにはきちんと夜の見え方も載せるべきだと思った)、聞きなれた声が響いた。液晶から顔を上げると、目的地にはまだ到着していない場所にルカが立っていた。瞬いて、首を捻りながら近づくと、ルカはしてやったりとにやにやした顔で笑っていた。
    「なんで?」
    「ふはは! シュウはさ、なれない道はかならず地図通り来るでしょ? 多分、こうくるだろうなあって予測して、」
     驚いた? とイタズラが成功してうずうずとした様子のルカが、あまりにいとしくて、僕はすぐに喉をきゅっとさせてしまう。
    「ビックリしたよ、うん。ルカの空間認識能力にね」
    「シュウ〜、わざと難しくいわないの」
    「んはは。バレた?」
     紛らわせるように、表情を変えないように頷いてもルカにはバレてしまう。ルカがいればあとは任せても平気だろうなと開いた地図アプリを閉じて隣に並ぶと、ルカが目を細めて笑っていた。柔らかい表情に、ついドキリとしてしまう。
    「じゃあ、帰ろっか。ルカ?」
    「うん。帰ろっか」
     肩を並べて歩く足取りは、どうしてかぴったりと同じペースになる。それは、ルカが僕に合わせているからだとこのとき初めて気づいた。僕は前を向いて歩くけど、ルカの視線はこめかみに感じることが多い。はじめて、期待した。じとりと湿度の高い空気にあてられて、じわじわと熱を溜め込む胸の奥のおくが、ただあつかった。髪は結んでおけばよかったなと、項にかかる襟足を、僕がはらうより先にルカの指が掬った。ざわざわと、知っている言語なのに雑踏が聞き取れなくなった。髪の毛から指の先まで、ルカを意識してしまってる。
    「オレ、シュウが好きなんだ」
    「な、んで今いうのさ」
     それが、答えになるなんて僕はこれっぽっちも分かっていなかった。
    「いいたくなったんだ。シュウがオレを迎えに来て、オレだけなんだな〜って、やっと確信できたから」
     前を向いたまま、ルカの顔を見る余裕もなく歩いている。顔中が熱くてたまらなかった。
    「いつから、」
     いつから、僕がキミを好きだって気づいたの? と聞いた声は、自分でも初めて耳にするように震えていた。ルカの口ぶりに、僕はくらくらとしていた。だって、つまり、ルカにバレてたことになる。恥ずかしすぎて火が出そうだ。早足になる歩調を、ゆっくりとしたペースに引き戻したのもルカだった。自然と、ルカが僕の手を握っていた。気にする余裕もなくて、嬉しいと踊る心臓がうるさくて、そのままにして。
    「シュウが、オレを見てるようにさ、オレも、シュウを見てたんだ」
     心当たりない? と首を傾げたルカを、僕はようやく見た。やわらかい、藤色のきれいな瞳。透けるように澄んだひとみに、真っ赤になった僕が映っていた。
     ある。と答える前に、僕はきゅっと鳴った喉を開いて、
    「僕もルカが、好きだなあ」
     そう、笑ってしまった。




     □




    「初恋って、実らないと思ってた」
    「ンん? 調べたの?」
     そうだよ、と頷くと、ルカはしばしば唸ってこう答えた。
    「オレが初恋じゃないから、実ったんだよ。オレの恋を叶えてくれたってことじゃない?」
     けろりとしたその顔に、僕はどう突っ込むべきかあぐねてゆるく笑って返した。
    「それ、うーん。なんていうか、僕は嬉しくないね」
     複雑。と、素直に成就を喜べない、顔も知らないルカの初恋相手への心境に唸ると、ルカが瞬いた。
    「シュウもそういうこというんだね」
     キョトン、とした表情が、見るほどゆるゆるになっていく過程を見届けて、それさえ愛おしいが勝って結局僕は流されてしまう。今、キミは僕の隣にいるから許してやろう、ってね。
    「そうだね、そうかも」
     僕は恋は盲目、を知った。





    fin.
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    KAYASHIMA

    DONEIsアンソロに寄稿しましたお話です〜。
    第2弾もまたあるぞ!楽しみだ〜。
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     僕は恋を知っている。
     僕は自覚も知っている。
    「恋を、自覚したから」、知っている。
     ルカという男に恋をしてから、僕は彼の周りをつかず離れられず周回する軌道衛星になった。決して自分から、形を保ったまま離れられないけれど、ルカの持って生まれた引力には逆らえずに接近してしまう、どうしようもない人工物。それが今の僕。近づきすぎたところで大きなルカには傷一つ付けられないで、きっと刹那的に瞬く塵になるソレ。そんなことは望んでいないし、そもそも自覚したところで、ルカという数多に愛される男を自分のモノにしたいなんて、勇気もない。それに、そうしたいとも思わなかった。百人のうち、きっと九十人がルカを愛するだろう。僕には自信があった。そのくらい、魅力に溢れている。だから、誰かのものになるのはもったいないと、本気で考えてしまったから。まあ、どう動けばいいのか分からなかった、ってのも、あるんだけれど。何を隠そう、右も左も分からない、僕の初恋だった。心地のいい存在。気負いしなくていいし、持ち上げなくてもいい。危なっかしいのに頼りになる。幾千の星に埋もれない。ルカは僕にとって一等星だった。
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