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    KAYASHIMA

    @KAYASHIMA0002

    🌈🕒ENのL所属💜右小説置き場。
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    KAYASHIMA

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    2025.6.29 にじそうさく10にて配布しましたぺーバーです。
    にじGTA軸if DROPS3人の話
    足を運んでくださったみなさま、ありがとうございました!

    【 一生焼肉に行けない三人の話 】 イカついエンジン音とプロペラの轟音が近づいてきて、鼓膜を麻痺させていく。どんどんと、加えてサイレン音に混じって微かに人の声が聞こえてきたところで「ガシャン! ギギッ!」とボロボロになったスポーツカーが止まった。降りてきた雪だるまの被り物をしたエクス・アルビオを目視して、シュウは助手席のガタがきているドアを開けた。「ガコ」と今にも外れそうな音にエビオは吹き出した。
    「そろそろメンテしてもらおうね〜」
     硝煙に、微かに鉄の匂いの染み込んだ男とはおおよそ結びつかない軽快で、マイペースな声色だった。「バコン!」と、断末魔のようにイッシースポーツのドアが鳴いて閉められる。シュウはそれを合図にアクセルを踏んだ。
    〈シュウ! その先でオレも回収してくれ!〉
     無線が傍受した声に、助手席のエビオが〈了解〉と手早く答えてナビを入れ替える。変わった目的地を知り目にウインカーを出して速度を落とそうと、アクセルを踏む足の力を弛めると、すかさず声がかかった。
    「シュウく〜ん、アクセルベタ踏みにしてね、サイレン遠いけどまだ油断出来ないから」
    「あ、了解で〜す」
     内心でギクリとしつつ、シュウはごくりと喉を鳴らした。これが初めてではない。なんども、繰り返してきたお仕事はんざいだ。ギュイ、とアクセルを踏み直してシュウは息を吐いた。横目になんどもナビを確認して、過ぎる反対車線の速度が上がっていった。法定速度を超えることに対して抵抗が抜けないシュウへの荒治療だと、自分で分っていた。
    「ほら、ローレンが待ってる」
    「はい!」
     指定された地点が近づくと、もうひとりの仲間、ローレン・イロアスが見えてきた。まるで、何事もなかったかのようにローレンはにこやかに(正確にはにんまりと)笑いながら手を振ってくる。ただの待ち合わせみたいだと、シュウはいつも思った。
     死にかけのイッシースポーツが、また悲鳴をあげながらドアを開けられて、金切り声とともに閉められる。ぎゅうぎゅうと押されながらエビオが凡そ荷物に占領された後部座席もどきトランクに体を滑り込ませて、ローレンが助手席に収まった。
    「よし! シャ! んじゃあシュウ、今日こそ行こうぜ、有り金はたいて……焼肉!」
     景気よく稼いできた大金ブラックマネーの詰まったバックをバン! と叩いて、にんまりとローレンは声高に、エビオは後ろからシュウの肩を小突いた。
    「「頼んだぞ、シュウ(くん)」」
    「はい!」
     そしてイッシースポーツは走り出した。法定速度より少しスピードに乗って。夜を照らす街灯と、高いビル群をするすると細い道も難なく小回りをきかせて。今しがた仕事を終えて警察から逃げているとは、誰が予想するだろうと言わんばかりの迷走ドライブだった。
    「律儀にウインカーださなくていいって」
    「ブレーキ踏んだら負けゲームにしたっていい」
    「ぶっ……車線変更……ふは、」
    「もう無理、もう無理、ヒャハハハ!」
     ハンドルにしがみつかんばかりに運転するシュウを他所に、エビオとローレンはとうとう笑いを我慢できなくなった。ゲラゲラと腹を抱えて笑うふたりに物申したくても、ハイウェイに乗って開けた場所に出ると微かだったサイレンがじわじわと近づいてくるのだ。
    「笑ってないで! 打開策ないんですか!」
     上擦った声で助けを求めたところで実用的かつしっかりとした逃走術は貰えない。分かっていてもシュウは毎度と甲高く叫んでしまう。焦りからハンドルが左右に揺れて、ストレートに追いかけてくるパトカーに補足されるのも時間の問題だろう。けれどきっと、ふたりは構わないのだ。焦るシュウの姿がよほど好ましいのか、ふたりの笑いはますます大きくなった。
    《そこの蛇行運転する車〜、とまりなさ〜い。毎回シュウさんを困らせて可笑しな逃走するのもやめなさ〜い》
     慣れたようにスピーカーで呼びかけてくるのは「警察代理署長」の小柳ロウだ。そう、これで幾度目か。エビオとローレンのふたりだけで充分完璧な仕事を行えるのに、ふたりは自慢の愛車やヘリを乗り捨ててまで、ふとしたタイミングでの逃走手段にシュウの運転をねじ込んでくる。方向音痴の自認があり、速すぎる車の運転が苦手なシュウはもっぱら「銃撃」「狙撃」がメインだった。どちらかの隣に座り、銃撃ポイントに立てばきっちりと仕事をこなせる。極端な戦闘ステイタスをもつシュウを、ふたりは笑ったりはしなかった。左右空手をさしのべられて、どちらも掴んでこの道をシュウは選んだ。ドライビングテクニックも求められているのだろうかと最初こそ、必死だった。けれど気づいてしまったのだ。
     「ふたりは面白がっているだけだ」と。それからシュウは適度に気を抜くようになった。捕まったところでエビオもローレンも怒ったりはしない。刑務作業を終えたらからかいがちに、運転のテクニックを少しずつシュウに与えるだけなのだ。追いかけてくるロウも、ほかの警察官たちも笑っている。何よりシュウたちも、笑っている。なんともトンチキな逃走劇は、今日もお縄について幕を閉じた。
    「そろそろ戻ってきてくださいよふたりとも」
    「いーや、まだダメだね。というかオレら戻れるわけないじゃん。大・汚職カマして落ちたんだから」
    「そうそう諦めなって」
     ローレン・イロアスとエクス・アルビオ。ふたりは警察署長と副署長という大層な肩書きをもったふたりだった。シュウはそれを知っていたし、だからこそ理由をもって落ちてきたふたりについて行くと決めた。きっと楽しいだろう。きっと想像もつかないストーリーを、間近で体感できるだろう。あの日、ぽつんと取り残された高層ビルの屋上から落ちた先で出会った、これは運命だとシュウは悟ったのだ。たまに増える協力者と、派手な大型犯罪を繰り返して、三人ドロップスは悪の道を突き進んでいる。そしてときおり、こうしてシュウはふたりのオモチャにされることがしばしば増えた。関係値が増えている証だと、シュウも受け入れている。けれどやはり解せないのだ。みすみす報酬を逃すこの、可笑しな逃走劇は。
    「あ、ガス欠……」
     しん、と先程まで軽快な小競り合いが行われていた空気が静まって、しばし。爆発するように笑い声が夜を引き裂いた。

     ※※※

    「もう僕に運転任せないでくださいよ……」
    「え、やだ」
    「ヤダヤダ」
     ごねたエビオとローレンに負けたロウによって短くなった刑務作業をこなしながら呟くと、ふたりは「どうして?」と顔に書いて否と唱えた。シュウは眉を寄せて少しばかり拗ね気味だ。
    「だって、僕、捕まっちゃうし」
     未だに逃走成功回数ゼロですよ。とつけ加えられた言葉にエビオとローレンは顔を見合せて、にやりと笑いあった。
    「え、でもシュウ、楽しくなかった?」
    「楽しくない? マジで嫌?」
    「それは……」
     にやにやと緩みきった顔で、ふたりはシュウを見ている。あの狭いイッシースポーツで逃げるのは、すこしばかりルパンカーで逃げる某怪盗のようでいつもわくわくしている。そしてなにより、
    「……楽しいですけど」
     観念したように呟いたシュウを、ふたりは分かっていたと言いたげな顔で頷きあって笑った。
    「んふふ、楽しいよなあ? わかってる分かってる。オレらはシュウのことわかってる。だからシュウもさあ……逃げ切れるようになるまでオレら諦めねえってことを?」
     わざとらしい口調でローレンがはやし立ててくる。
    「もちろん、分かってましたけどね!」
    「んふ、あはははは! 観念しなよシュウくん。オレたちは……」

    「シュウ(くん)の車で逃げ切って、焼肉に行くんだから(さっ)」

    「あ、次までにちゃんとオンボロイッシーちゃんメカニックに連れていくんだぞ」
    「ほんとそれ」
    「ふ、んはははは!」
     今日も、焼肉には行けなかったけれど、楽しいからよしとしよう。シュウはしばらく笑い続けて、むせるのであった。
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    KAYASHIMA

    DONE2024.7.7にじそうさく09にで配ってましたペーパーの小話です。謎軸のなつのおはなし。
    前日に夕飯を食べ、ホテルに戻り❤️の3Dお披露目を流しながら書きました。ネタは2023.9にわたしが吐いていたもの。
    【mafiyami】線香花火とかいて 背中がじっとりとしている。汗ばんだ肌に、少しだけ生地の洗い浴衣のほつれが襟首をちりちりと擽って、暑さに要らないアクセントも追加されて。日が落ちて、薄雲はあれど小さく星も覗く、蒸し暑い初夏の夜だった。梅雨明けを待つばかりの、はたまた合間の小休止なのか、今日の天気はどうやら解散するまで持ちそうらしい。とはいえ明日には直ぐに雨の予報が出ていて、しばらくは傘マークがちらちらと一週間居座っている。隣でしゃがむこの人は、見た目通り晴れ男らしい。太陽みたいな人だとは思っていたけど、まさか本当に化身なのでは? なんて冗談さえ笑えないかもしれない。彼の隣にいると、外気温がプラスされる。僕はそう感じている。実気温と体感温度の違いだっていわれるかもしれない。人間はいるだけで熱を発してるわけだし。だけど、そういう意味じゃない。ルカの隣は確実に気温が高いんだ。決して、僕の体温が勝手に上がってるわけじゃないんだ。
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    KAYASHIMA

    DONEIsアンソロに寄稿しましたお話です〜。
    第2弾もまたあるぞ!楽しみだ〜。
    【💛💜】衛星はホシに落ちた『衛星はホシに落ちた』







     僕は恋を知っている。
     僕は自覚も知っている。
    「恋を、自覚したから」、知っている。
     ルカという男に恋をしてから、僕は彼の周りをつかず離れられず周回する軌道衛星になった。決して自分から、形を保ったまま離れられないけれど、ルカの持って生まれた引力には逆らえずに接近してしまう、どうしようもない人工物。それが今の僕。近づきすぎたところで大きなルカには傷一つ付けられないで、きっと刹那的に瞬く塵になるソレ。そんなことは望んでいないし、そもそも自覚したところで、ルカという数多に愛される男を自分のモノにしたいなんて、勇気もない。それに、そうしたいとも思わなかった。百人のうち、きっと九十人がルカを愛するだろう。僕には自信があった。そのくらい、魅力に溢れている。だから、誰かのものになるのはもったいないと、本気で考えてしまったから。まあ、どう動けばいいのか分からなかった、ってのも、あるんだけれど。何を隠そう、右も左も分からない、僕の初恋だった。心地のいい存在。気負いしなくていいし、持ち上げなくてもいい。危なっかしいのに頼りになる。幾千の星に埋もれない。ルカは僕にとって一等星だった。
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