契機はヤキモチ みんな、冬の夜空を見上げていた。星を見ようよと誘って、気づけば Trickstarとfineのメンバー全員が空中庭園に集まっていた。
その光景を、あんずは遠巻きに眺めていた。みんなのはしゃぐ姿が微笑ましくて、笑顔が輝いていてきれいだな、と、そんなふうに感じていた。
「ねぇ、あんずちゃん」
そうしていると、少し離れた位置から英智が呼ぶのであんずは近寄っていった。何か伝えたそうにしているけれど、よく聞き取れない。いったい何だろうと首を傾げると、英智はもっと近づいていいかと訊ねてきた。
「みんなに内緒の話ですか?」
あんずがそう言うと、英智は不意を突かれたように笑った。
「……ふふ」
手を顔の横に当てる様子を見てそう思ったのだが、どうやらちがうらしい。たしかに人に聞かせたくない話をここでするほど英智は不用意ではない。よく考えなくてもわかることだった。
1983