君と夏祭りに行った日 今日、お祭りがあると知った僕は、早速藍良に電話をかけた。今日の予定がもう入っていたら潔く諦めるつもりで、藍良を夏祭りに誘おうと思ったのだ。
僕たちは付き合い始めたばかりで、まだデートの経験も少ない。その経験を積む意味でも、藍良に楽しい思いをしてもらう意味でも、誘わない理由などない。部屋を訪ねる時間も、メッセージを打って返事を待つ時間も惜しく、僕は藍良に電話をかけた。
『もしもしィ、ヒロくん?』
「藍良、突然で申し訳ないのだけれど、今夜僕と夏祭りに行かない?」
僕は自室の自分のベッドの側で、何故か壁に向かって立ったまま電話をしていた。幸い部屋には誰もいないので妙な目で見られることは無いが、自分で自分を客観視すると、どうしたって妙な図だ。
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