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    椿

    twitter: @g4i1r1asol
    最、チェモ、TRPG
    立ち絵のご依頼等はDMにお願いします。
    私生活に余裕が出来たらなにか立ち上げます。
    版権、オリジナル、夢、腐等あります。

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    椿

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    八戒と悟浄が訪れた村で宿代の代わりに
    沼地にある村の調査をする話。
    若干ホラー……????????です??????

    #八浄
    bajo
    #最遊記
    #ホラー
    horror

    貴方と添い遂げたかった。その日はやけに蒸し暑かった。三蔵一行は次の村に向かうため荒野を駆け抜けていた。
    一応妖怪に大人気なお尋ね者という事もあり
    手近な布で顔をくるんでいなければならないのだが、
    その布を引き裂きたいくらいには暑かった。
    次の村まではまだ遠い。

    じっとりとまとわりつく布と熱気に、息苦しさを感じる中八戒はジープを走らせる。
    すると不意に視界に入るものがあった。

    距離的には遠いが
    広い荒野の中にぽつんと村がある。
    そろそろ日陰に入りたい三蔵一行は、予定とは違う小さな村に向かってジープを走らせた。

    村は遠くで見た時の印象よりも小さかった。
    村の周辺を囲うような堀なども存在せず
    妖怪の襲撃に合えば一溜りもないだろうと感じた。


    村の人間もその自覚があるのか、
    余所者を歓迎してはいなかった。

    しかし、旅を続けるなら水と食料が必要だ。せめて最低限の買い物は済ませたい。最悪寝床はジープで良い。
    そんな事を三蔵達が思っていると、

    不意に恰幅の良い女が声をかけてきた。
    俺達のことを知っていると言うその女は
    1晩の宿を貸す代わりに頼みたいことがあると条件を出してきた。
    それは、森の先にある、沼地の調査だった。

    なんでもそこにはこの村と交易をしていた村があるらしい。しかし、半年前からその村との連絡が絶えた。

    村同士の仲は良好であったため、不審に思った村人たちが数人様子を見に行ったが帰って来ず、
    たった1人帰ってきた村人も
    「人はいると思う。村に向かう途中、目を離した隙に仲間が居なくなってしまったため、仲間のいたずらかと思って車に戻り、人が居るなら大丈夫だろうと帰ってきた。」

    と緊張感の欠けらも無い事しか報告していない。

    このままでは埒が明かないと感じた村人達は
    遠隔操作が可能な端末を使い沼地の村付近を撮影したが
    特に変わったことがないのと
    すぐに端末が壊れてしまう。

    そのため、中にいる人達が元気かどうか、念の為に様子を見てきてほしいとの事だった。

    沼地の村は元々通る予定だったため、快く了承した。


    調査は村に行く人と撮影係の2人で足りたので
    悟浄と八戒がする事になり、
    三蔵と悟空には食料を調達してもらうことになった。


    森に向かうと先程とはまた異なる
    爽やかなようでどこか濁った空気が流れてきた

    「ここから先は沼が続くようですね……。仕方ないですが歩きましょうか」

    「キューッ!!」

    「え、マジ」

    八戒の声掛けでジープが小さな竜の姿に戻る。悟浄は座っていた座席が突然消えたせいで強かに腰をうちつけたが、そんなことは気にも留めず1人と一匹は歩いていく。

    「おいこら、……たく、せっかちだな……」

    ボヤきながら悟浄が追いつくと
    目の前には村が広がっていた。

    そこは色取りどりの布が美しくはためき、カラカラとマニ車のような物が風で音を立てていた。

    村の方からヒラヒラとなにかか飛んできた。
    白と赤のそれが目の前で踊る。

    八戒は落ちたそれを拾うと「手紙のようですね、ついでに届けにいきましょう」と俺に行った。

    村は活気で溢れていた。余所者への警戒心もなく、むしろ歓迎されているようだった。

    まるで祭りのように花びらやきらきらした貨幣が舞い、赤を基調とした民族衣装に身を包んだ人の顔は喜びに溢れていた。

    ただ1つ奇妙なのは
    すれ違う者全員が木や紙で出来た面をつけているということだった。だか、面をつけることがしきたりの祭りなのかもしれない。

    「何かのお祭りなんですかねぇ、いい時期に来ましたね。」

    色とりどりの世界に目を細めながら八戒がこちらを振り返る。
    周囲の華やかな民族衣服に身を包んだ群衆とは色もシルエットも対照的な
    八戒がなんだか眩しくて

    後でアイツらにも見せてやろうと
    思わず端末に手が伸びる。
    1枚くらい余分な写真があっても許されるだろう。
    そう思いながらカメラのレンズを覗き込む















    息が止まった。



    誰も居なかったのだ。



    俺達の周囲には八戒以外、誰も居なかった。










    ヒュ…ッと思わず息を飲む。

    何故かこの瞬間、この事をここにいる住民には気取られてはいけないと強く思った。
    しかし






    「カシャリ」







    乾いたシャッター音が鳴り
    ピタリと祭りの音楽が止まる。

    嫌な予感とともにレンズから顔を上げると
    至近距離に面を被った村人達がいた。




    ゴポゴポ、ぶくぶく。





    彼らの口からそんな音が聞こえた気がした。








    ヒュッっと
    もう一度息を呑んだ悟浄の判断は早かった。


    「逃げるぞ!!!!!!!!」


    目の前で戸惑う八戒の腕を掴み村の出口へと走る。
    アレからは逃げるしかない。何故かそんな気がした。

    先程は歩きやすかった道が恐怖のせいか足をもつれさせる。
    いや、
    気のせいではなかった。
    先程まで道であった地面が深いぬかるみへと変わっている。粘着質な泥に足が取られ、足がもつれる


    「どうしたんです悟浄、急いで走り出して、皆さん心配されてますよ」


    「どうしたって、お前!見えてないのか!!?あれは!に」
    ドンッ

    ドンッ

    真後ろから
    祭りの太鼓と楽器ごとに音階を変えた祭囃子のような耳障りな音が聞こえてくる。



    ザッと血の気が引いた。
    このままでは追い付かれる。
    このままではまずい。

    せめて境界である出口にたどり着かねばと足を早めようとする。

    だが、藻掻くほど足がぬかるみ取られ、
    進むごとに身体はどんどん泥へ沈む。

    目の下まで沈んだ頃、八戒の焦る声が聞こえた。




    まー、いきなり硬いと思ってた地面に沈みだしたらびっくりするわな。
    いや、焦ってんのは俺の方よ。

    いいから早く逃げろよ八戒







    ごぼっ
















    目を覚ますと荒野を走るジープの上だった。空は黄昏の様相を示していた。
    運転は行きと変わらず八戒で、
    今まで変な夢でも見ていたのではないかと思う。

    しかし体に張り付く濡れた服の感触と
    泥と水の湿気た臭いに顔をしかめる。


    身動ぎした気配に気づいたのか
    八戒がこちらを一瞥した。その顔にはいつもの胡散臭い笑みは欠片もなく
    「あぁそう言えばこいつ綺麗な顔してたんだった」と他人事のように思う。


    「白竜が悟浄を沼から引っ張り出してくれたんです。」

    「おー、白竜意外と力あんのな、ありがとよ」

    「キュッ!」

    車が返事をした。



    「………何が見えてたんですか」

    「………人形と仏さんかな」

    運転しながら八戒が眉を顰めたのが分かった。

    「見えたのはレンズ越しだったからですか」
    「かもな、お前さんの目が見える方にはレンズないからなぁ」

    そう嘯きながら煙草に火をつけた。


    ……村は荒廃していた。そこには新しい亡骸も少なくなかった。
    線香も経も挙げられやしないが
    せめてもの餞になるだろうか。


    貸された端末のうち俺の持っていた1台は
    あの村に置いてきてしまった。
    赤と白で封をされた手紙も沼の底に沈んだだろう




    「………………結婚相手八戒なんて、お目が高いねぇ、ま、なんにせよ落ちてた物は拾わないこったな」



    そう言いながら悟浄は煙を空に吐き出した。








    『手紙を拾った美しい人。
    貴方と共に添い遂げたかった』

    テーマ:冥婚
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