弟気質、兄気質長男気質や弟気質、属性的気質は生まれ持っての才能だと思う。
「日向!」
突き抜ける様に真っ直ぐな声が日向の名を呼び、日向は手元を止め後ろを振り返る。
日向を呼んだ若林は、日向を見かけて嬉しいのか、眼を輝かせ嬉しそうに日向を待っていた。
「おわっ」
若林の正面に立った日向は手を伸ばし頭ひとつ上にある若林の頭をわしゃわしゃと撫で回した。
一通り撫で回し、手を離した日向は心無しか満足げに見える。
「どうしたんだ急に」
「なんか勝に似てたから」
撫で回され遊ぶ様に跳ねた栗毛をそのままに、若林は眼を丸くさせて日向を見る。
勝といえば日向の末の弟で、日向とはだいぶ歳も離れている筈。
そんな子供に似ていると言われ、若林は更に眼を丸くした。
「その顔、勝にそっくり」
きょとんとした若林に勝を思い出し、日向はぷはっと吹き出し笑い出した。
「勝って…、あんな可愛くないだろ、俺は」
「まあな。」
「まあなって…」
笑いのつぼに入ったのかけらけらと笑う日向を見て、釣られて若林も笑っていた。
「お前、兄貴いるだろ」
「ああ、二人。お前と勝位離れてるな」
「だろうな。末っ子って顔してるし」
「そんな風に見えるのか?」
不思議そうに眉を顰め首を傾げる若林に、そういう顔だよと楽しそうに指摘する日向。
「なんかこう、愛されて育ったーって顔に書いてあるぞ?」
「まあそうだな」
「自覚はしてるのか」
父と母、歳の離れた二人の兄に屋敷の使用人達と、愛され甘やかされとても大事に育てられたという自覚はある。
その大事にされ振りは日向に箱入り息子と言われる程だった。
「大事に守られてて育った愛され末っ子の坊ちゃんが今や全日本の父ちゃんなんて呼ばれてるんだもんな」
「ははっ、じゃあお前は母ちゃんだな」
「俺が?ねぇよ、ありえねぇ」
豪快に笑う若林に対し、日向は心の底からないないと首を振る。
若林もこの歳で父親と称されるのは若干心外ではあるものの余り悪い気はしなかった。
それどころか、俺が父ちゃんでお前が母ちゃんなら、俺達は夫婦だな。と、最早満更でもないのだ。
「まああれだ、これからも日本代表のゴールは守ってくれよ、全日本の父ちゃんよ」
頼りにしてるぜ、と悪戯っぽく無邪気に笑う日向に、若林は満足気に笑ってみせた。
俺にお前を守らせてくれ。
そう伝える話は、またいつかの話。