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    kow_7726

    @kow_7726

    忘羨、曦澄に日々救われる。

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    ケゴ下戸藍湛×バーテン魏嬰
    〜告白編〜

    #忘羨
    WangXian

    ノンアルコール・モヒート!(9) トントン。
     控えめなノックが響く。カウンターのスツールに座っていた俺は立ち上がり、大きく深呼吸してから鍵を開けた。急いで来たらしい藍湛は、少し呼吸が上がっていた。
    「呼び出してごめんな、忙しいのに」
     中に入るよう促してから、扉を閉めて鍵をする。店内の真ん中に立ったままの藍湛に、カウンター席を促す。しかし藍湛は立ったままだ。気にせずカウンター内に入って、向かい合う。
    「なにか飲む?」
     問い掛けると、立ったまま首を左右に振る。酒を飲まされる事を警戒しているのかもしれない。信用なんてきっともう、ない。
    「この間は……ごめん」
     単刀直入に、告げる。まだるっこしいのは苦手だ。藍湛は下げていた視線を俺に向けた。
    「謝罪すべきは……私の方だ」
    「藍湛が何を謝るんだよ。酒を飲ませた俺が全部悪い」
     真面目で純粋な藍湛は、自分がした事を謝ろうとしているらしい。
    「言い訳じゃないけどさ……溜め込んでるみたいだから発散させてやろうと思ったんだ。泣いても怒っても暴れても俺なら、どうとでも対処してやれるから。流石にああなるとは思わなかったけど…」
     言い募っていたのに、語尾が小さくなっていく。きちんと話さないといけないのに、この間の事を思い出して頬が熱くなる。
    「……あれは…」
     気まずさを誤魔化すように藍湛の言葉を遮り、一人頷いて見せる。
    「うん、けどやっぱり藍湛は飲まない方がいいな。女性にして勘違いされた事とかあるんじゃないか?」
    「……初めてだった」
    「へ?」
    「まともに酒を飲んだのが初めてで……その、誰かに触れたのも……」
    「……………………」
     絶句した。すごく、大事なものを奪ってしまった。
    「え、待ってくれ。それであんな上手いのか?その…」
     キスが、という単語が何故か言えない。比べるような事をした事もないし、俺も初めてだけど…とても気持ち良かった記憶があるから、手馴れてるのだろうと勝手に思ってた。
    「……上手かったのか?」
     思わず出てしまった言葉を拾われて、顔に熱が集中してしまう。
    「比べるような事、俺もした事ないけど…」
     何をカミングアウトし合ってるんだろう…恥ずかしさからどんどん目線を合わせられなくなる。
    「……………」
    「……………」
     沈黙が気まずい。何か言わなきゃと思うのに、何も言葉にならない。
    「とっ……兎に角さ、この前の事は忘れて、友達としてまた…」
    「友達には、戻れない」
     その返事に絶句した。もう…友達ですらいられない。顔に集中していた熱が一気に引いていく。
    「………君が好きだ」
    「…いや俺も好きだけど、だからって友達に戻れないっていうのは…………は?」
     さらりとした告白に、さらりとした返しをしてしまった俺は素っ頓狂な声を上げてしまった。え、今なんて言ったんだ?藍湛は、俺は…
    「……本当に?」
     驚きに見開かれた瞳。その顔に弱いんだと自覚する。そして一気に鼓動が速くなって、慌ててももう遅い。
    「いや、あの……ちょっと待ってくれ。待っ…えぇと、その…」
     肯定も否定も出来ず狼狽える。何度か深呼吸して、あの子の言葉を思い出す。
    「きちんと伝えないと…」
     一人呟いて、心を落ち着かせると藍湛を真っ直ぐに見つめる。上手く言えるかなんてわからない。けど、きちんと伝えないと。
    「藍湛。俺……藍湛が、好きだ。藍湛は真っ直ぐ気持ちを伝えるって覚悟を固めてくれてたのに、俺は…友達でいいから傍に居たいって…弱気になって逃げようとして…ごめん。その…なんて言うか、こんな俺でいいなら…藍湛のもっと近くに行きたい。恋人になりたい」
     静かに告白を聞いてた藍湛は、とても綺麗に微笑んだ。そして、何も言わず手招きする。こちらに、おいでと。
     それに誘われるようにカウンターから出て、隣に立つ。並んで、しかし恥ずかしさから顔が見られず肩の辺りを見てしまう。そんな俺を、藍湛は包み込むように抱き締めてくれた。
    「……魏嬰…君が、いい」
     強く抱き締められて、背に腕を回す。人に触れられるのが嫌いなのに、藍湛の温度はこんなに心地良い。この速い心臓の音は、どちらのものだろう。
    「俺も……藍湛がいい」
     顔を覗き込むと、目線が合った。柔らかな光を宿した琥珀色の瞳は、僅かに揺らいでから顔を背けられる。横を向いた藍湛の耳が、ほんのり赤い。
    「魏嬰……きちんと、キスをしたい」
     その一言に違和感を感じる。もしかして藍湛はこの前の事を覚えていないのだろうか。
    「この前の…事を、覚えていないんだ」
     あの時の事を覚えていない予感はあった。状況から何をしていたかは想像に容易かった。あの後、彼は逃げるように去っていったのは、嫌だったからじゃないのか。
    「あの時、嫌だったのかと思った…」
     藍湛は首を左右に振って、真っ直ぐに俺を見た。藍湛の手が頬に触れる。少し、冷たい。
    「君に……私の欲望を知られたと思ったら怖くなった」
     そう言って頬を撫でる手はとても優しい。
    「確かに驚きはしたけど……」
     思い出してきはずかしくなる。視線を外し自然と尖る唇。顔が近付いた気配がして、そちらを見ると間近に綺麗な顔があった。
    「もう一度……したい」
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    「お兄さん! 次、右手前から飛び出してくるからお願い!」
    「うん、わかった」
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