第一話より抜粋(……あぁ、また、あの人を思い出してる! なんで、なんだろう……)
ふとした時に思い出すのは褐色の肌とハニーブロンドの髪、ブルーグレーの瞳を持ったあの人だった。無意識に比べてしまうのだ。彼の方がかっこよかった、と。そろそろ認めよう。私はいつの間にか名前も知らない父の部下に一目惚れしていたんだ、と。
(でも、やっぱり私はまだ仕事が手一杯だし、上司の上司である私なんか相手が困るでしょ……)
先輩受付嬢に声をかけられ、終業のためロッカールームに向かう。そのまま着替えながらちょっとため息が漏れた。自分の立場からして上司の上司の娘、なんて普通は嫌だろう。父曰くとても忙しい人というしたくさんの事を背負っていると言う。詳しくは言えない、というだけで彼が何をしているか、警察組織に詳しくなくても察してしまう。父が警察官だったのもあり刑事ドラマが好きだったため何となくわかる。況してや警察庁の人だ。
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