いい男といい旦那は等しくないハクオロは過去の責任を放棄してしまった精算として、皇ではないが補佐として城に戻ることにした(というか周囲の圧に負けただけともいう)。
戻ってきた後、ベナウィがまだ独り身と聞いて固まる。
「家族をいい加減作らないのか、ベナウィ……もしや、まだインカラを斬ったことを罪などと言ってるのか? あれは必要な事だったと……言い切るのは不味いだろうが、当然の帰結だったと、思う。おまえだけが背負うことはない」
「いえ上皇、全くないとは言いませんが、単純に機会が無かっただけですよ」
「だったらせめて見合いをしないか? いや女性が苦手というなら無理には勧めないが」
やんわり問うて、来ていた釣り書きを眺める。
何人か見繕ってお見合いを勧めて来るハクオロ。
「いや国のためになる相手なら構わないですが、私はすでに老境にさしかかっていますし、血を遺す意味も無いのでもう良いかなと」
「……その見た目でか? いやそれはともかくだな、おまえほどのいい男が独り身というのもなんというか、割に合わないというか。アルルゥ、カミュもなんか言ってくれないか」
「おとーさん。ベナウィは侍大将や摂政としては立派。それは認める」
「そうだよな、だから」
「でも旦那さんにするには向かないっていうか……カミュは御免かなぁ、ね、アルちゃん」
「そうそれ。家庭人に向かない? 私人としては……サイテー」
「……あ、アルルゥ様もカミュ様も、当人を前にそこまで言いますか?」
「だってこの間だってベナウィ兄さま、道を尋ねてきた隣国のお姫様に一目惚れされたのに全然気が付かずにばっさりだよ? あれ失恋の涙目で済んだからいいけど外交問題になってたらどうするつもりだったのかなあ?」
「うぐっ」
「ベナウィ、乙女心は全然理解しない。むしろクオンの教育係になってから悪化した」
「……そう、か……分かった」
「お、お待ちください上皇! 國の為の婚姻であれば覚悟はいくらでもしておりま……」
「いや、いいよ無理するな、そうだな、結婚するばかりが倖せではないな、うん」
「………」
珍しいベナウィの涙目に、話を持ち出すのではなかったとハクオロも反省した。