忘羨ワンドロワンライ【中秋節】 中秋節は家族で過ごす日である。もちろん雲夢でも、ここ姑蘇でも。
雲夢は宗主の屋敷を取り巻くように師弟や分家の屋敷が並び、下働きの家人もそのほとんどが通いであるため休みを取る。だから中秋節の食事を作るのは、虞夫人とその側近の二人、そして師姉の役割だった。時期がちょうど蓮の実の収穫期の終わりになるため、月餅の餡は蓮の実で作る。滑らかな餡を作るのは力仕事になるので、魏無羨は毎年延々スリコギを握らされていた。もうこれ以上はすり潰せないというくらいに潰して、蜜を加えて煮詰めて――滑らかな餡に仕上がるかどうかはスリコギでどれだけ頑張ったかによる。口でとろけるような餡に仕上がると、いつも師姉が手放しで褒めてくれる。
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