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    eikokurobin

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    レニ/右爆/轟爆
    眠れぬ夜の小さな図書館

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    轟爆/雄英1年生/受け分裂/R18

    ダブル・ホワイトデー“個性事故で2人に分裂したから暫く会えねえ“

     早朝送られてきた、サラリと風邪を引きました、くらいのライトさで書かれたそのメッセージはよくよく見返しても大事の予感しかない。今すぐ会って確かめたいと返信すると、“せめて個性を掛けられた仕組みが判明するまでは待て“、うう、それは尤もだがどうしたって気になってしまう。

    (分裂したってことは、爆豪が2人いるんだよな?)

     その日は学校にも登校してこなかった爆豪は、俺達が授業を受けている間に警察と病院に行ってきたらしい。夜になってようやく相澤先生に連れられて帰寮した爆豪と爆豪は、だがしかし単に2人に分裂しただけではなかった。

    『かっちゃん、それコスプレじゃないよね?』

     違ェわ、という反論の声は低音二重奏。雄英の制服に身を包んだ2人の爆豪は確かにそっくりで瓜二つの双子といっていい姿をしていたが、大きく違う点が一点、

    爆豪のうちの片方は純白の天使の翼、もう片方は漆黒の悪魔の羽根を背負っていた。

    +++

    『本来は1人の人間の善性と悪性を分けるらしいが、俺の場合は単なる演出に過ぎねェ』

     爆豪に掛けられたのは1人の人間の人格を2つに分ける、通称“天使と悪魔“または“ジキルとハイド”と呼ばれる個性で、文字通り1人の人格を2つに分け、その背に対極的な翼を生やすという。この個性に掛かった者は、その極端な性格から本人および周囲を困らせる為、場合によっては隔離されるが、

    『俺達には殆ど差がねェそうだ、つまり元々の人格そのまんま、ただ2人に分裂したってだけ』

     なるほど芯の強い爆豪ならあるいはそうなるのかも知れねえ、それで個性の解除方法は?

    『極端に振り切った人格達が、普段は出来ねぇことして満足すれば解除されるらしい。で、問題はそこだ。現状俺達には極端な願望がないから馬鹿やって満たすことも出来ねェ』

    そんな、じゃあどうやって元に戻るんだ?

    『さぁなァ、取り敢えずは俺達の違いから探せって言われたわ』

     それなら違いを見つけるために一緒に過ごそうと提案し取り敢えず3人で過ごしてみるが、確かに言う通り爆豪達に明確な違いは見られない。言動も態度も、実務訓練の個性の使い方もまさに爆豪、違うのはド派手な白と黒の翼だけ。一体どうしたものか、それにしても、

    (爆豪と爆豪が並ぶと色々とヤバいな)

     だってスゲェ可愛いのが2人並んでいるのだ。最初こそ、爆豪が2人もいたらウルセェんじゃねーかとクラスの奴から揶揄われていたが実際は物静か、寧ろ俺の方がお喋りなくらい。何しろ爆豪達は会話しないでも意思疎通が出来るのだから、

    『何かズリィ…』

     今だって2人お揃いのエプロンを付けて楽しそうにお菓子を作っている。辛いモノじゃねえのかと訊くと、

    『ホワイトデーだからな、貰った分はお返ししねーと』

     は?バレンタインに俺にチョコレートをくれたのは爆豪なんだから、ホワイトデーは俺が爆豪に返す番じゃ?もしかして爆豪も誰かにバレンタインにチョコレート貰っていたのか。

    『テメェだってどっさり貰ってただろーが』

     もう貰わねえ、来年は全部断るから爆豪もそうしてくれと頼むと、バーカと2人揃って舌を出して揶揄ってくる、チクショウ、爆豪達が可愛過ぎて太刀打ちできねえ。

     そんな生活をして3日目、普段ならそろそろ爆豪とエロいことがしたくなる頃だ、そう思いながら部屋を訪れた俺は、ドアを開けた目の前に広がる光景を前に勢いよく鼻血を吹き出してしまった。

    +++

     まず目に飛び込んできたのは、余裕のない爆豪の可愛い涙目顔、それから握り込まれたチンコと開いた白い脚。チンコを握り込んでいるのはもう1人の悪魔の羽根の爆豪、よく見ればその手のなかには2人分のチンコがある。

    つまりはこれは兜合わせってヤツでは?

    『お、お前らセックスもするのか?』

    『違ぇ、コイツ天使だけあって自分じゃチンコ触れねェんだわ、だから俺が代わりに2人分纏めて抜いてるだけ、溜まると身体に悪ィだろ?』

     だったら俺を呼べばいいじゃねえか、彼氏なんだし俺が適任だろう?自慰するのにいちいち呼び出すのもアレかと思ってって、コレは自慰なのか?どう見てもセックスの前戯じゃねえか、なあ今までに2人でどんなことしたんだ?

    『今夜が初めてだわ、つーか妬いてるの?可愛いかよ焦凍クン♪』

     おお、悪魔の爆豪の方は何だかご機嫌だ、こんなに機嫌が良い爆豪は仮免補講でマボロキなるものを見た時以来、焦凍って呼んでくれたのも初めて、

    対する天使の爆豪は羞恥で全身ピンク色、俺に見られたのがショックなのか悪魔の爆豪の腕の中に顔を隠しちまっている。

    『そうか、見つけたぞお前らの違いを。お前達は羞恥心に差がある。悪魔の爆豪はスケベで、天使の爆豪はそうじゃねえ』

    すかさず悪魔の爆豪に噛み付かれたが、

    『イイ線いってンかもなァ、で、どうすンの?まだ俺達イってねぇンだけど、そのまま見てるか参加するか、どっち?』

     慌てて参加すると言ってみたものの、具体的に何をどうすればいいんだ?3Pとかいうのをするのか、3Pってどうやるんだ?

    『何難しい顔してんだ?焦凍はコイツのチンコ扱いてやれよ、俺は焦凍のチンコ扱いてやっから』

     すると、天使の爆豪が目に涙を溜めたまま、俺を舐めるなと抗議し出す。

    『何かしらねぇが手で触れねぇだけだわ、口なら使えるかも知れねェ』

     ちょっと待ってくれ、流石に思考が追いつかねえ。そこから何がどうなったのか、俺にフェラしてくれたのはどっちで俺に突かれて可愛く鳴いていたのはどっちか、

    (同じ顔して同じように恥じらって可愛く鳴かれたら頭真っ白になるだろ)

     そうして自慰行為以上のことをしてしまってから、意識を飛ばした天使の爆豪を風呂に入れる悪魔の爆豪をボーッと眺める。もしかして3人でセックスしたら元に戻るかもなんて思ったがどうやら違ったらしい。

    (この2人の違いを見つけてそれぞれの願望を叶えてやることが解除の条件)

     2人の違いなら今さっき幾つか見つけた気がしたけれど、よくよく考えてみると爆豪は元から恥ずかしがりだ。口ではエロいことを言って煽っても、本当に言いたいことは羞恥心が邪魔して言えていないような気がする。そうか、爆豪はして欲しいことを言えないんだ、だから俺は爆豪が何して欲しいかを当てなくちゃならねえ。

     翌朝はホワイトデー、爆豪がバレンタインのお返しと称してクッキーを渡したのはエリちゃんとクラスの女子全員に向けてだけ、

    『後はひとつも受け取ってねェからな』

     そうか、何か安心した。でも、じゃあ、こっちの空色の包みは?そりゃ本命にやる分だって、待ってくれ、爆豪は今日俺からホワイトデーのお返しを貰う立場だろ?それとも別にいるのか、誰からチョコレートを貰っていたんだ、それも本命チョコを!

    『痛ェ馬鹿力で掴むな、ふぅんテメェでも一応妬くんだな。安心しろコレは勢いで作っちまっただけ、テメェにやるわ』

     ズイと差し出された化粧箱を開けると中にはパステルカラーの丸いお菓子、

    『マカロンだ、崩れやすいから気を付けろ』

    +++

     マカロンによる餌付けは大成功、男子なんて胃袋掴めりゃなんとでもなる。

    『マジ上手くできたな』

     余った分を2人で分けながらオレンジの紅茶を飲む。マカロンに込めた意味は、“貴方は特別な人”、それは裏を返せば俺が轟の特別になりてェってことだ。全く、俺の願望なんて最初から解っている。今は2人いるのだから俺達の願望と言うべきか、ったく自分で言うのも何だが俺達は呆れるほどブレねえ。だから欲しいものは2人して一択、

    “轟焦凍が欲しい”

     轟から告白されて付き合うようになっても優しい轟の好意は四方八方にダダ漏れ、それが恋愛感情とは関係のない好意でも、向こうにとっては恋愛感情付きだってことが見抜けない間抜けな彼氏にどうやって解らせるか。

    (イケメンだから仕方ねえか)

     俺が言ったから親切を止めるってのも何か違う、轟自身が俺だけに優しくしたいって思わないと意味がねェ、そして優しい轟にはそんなことは一生無理だろう。そういうヤツを好きになっちまったんだ、そう思って心の奥底に仕舞い込んだ気持ちが、バレンタインとホワイトデーの狭間で浮かび上がり個性事故で開花した。

    『あ〜あ、どうするよ俺、このままじゃずっと2人だぜ、このふざけた翼付きで』

    『轟を諦められたら元に戻れっかもなァ』

    無理だよなァと2人でハモった所でノック音。

     この少し雑な音は轟だ、そういやホワイトデーのお返しまだ貰ってなかったっけと思いながらドアを開けると絵に描いたようなどデカい薔薇の花束と小さな化粧箱。中には当然のように指輪がひとつ、

    『お前以外から貰ったバレンタインのチョコレート、まだひとつも手をつけていなかったんだ。それ全部返してきたらこんなに遅くなっちまった』

     全部って、どうやって返したんだよ?

    『親父の事務所に届いたものは事務所の人に手伝ってもらった。言っとくが勝手に郵送されてきたモンを受動的に受け取っていただけで、直接受け取ったのは爆豪からのチョコレートだけだからな。

     指輪はお前達がひとりに戻ってから嵌めてくれたらいい。取り敢えず宣言してぇ、

    “爆豪は俺のモンだって”

     どうしたら宣言できるか色々相談したらお揃いのアクセサリーが良いってアドバイス貰ったんだ』

     あー、なんでこんなにイケメンなのに残念仕様なんだろう!でもそんな残念な轟を好きになったんだからまあヨシ、じゃあ元に戻ったら嵌めてくれやって言ったのに、早速手を取り左手の薬指に指輪を嵌めるとか、言ってることとやってることが違えわ!

    『お前気が付いていねえのか、たった今俺の前にいるのは爆豪ひとりだ。…元に戻ったってことは爆豪もお揃いの指輪が欲しかったのか』

     違ェと叫びたいのに気絶しかねない馬鹿力で抱き締められて俺は言葉を返せそうにねェし、いきなり2人から1人に戻ったせいで倍になった感情が溢れて涙が止まらねェけど、

    『両想いって嬉しいな、爆豪』

    ああ、これは確かに嬉しいわ。




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