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    eikokurobin

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    レニ/右爆/轟爆
    眠れぬ夜の小さな図書館

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    轟爆、プロヒ

    #轟爆
    bombardment

    迷い猫『え?俺、泳げないっス、その、腕が』

    君の事情は解っているよ、警備は複数で当たる、君は私の隣に居て酒でも飲んでいればいい、だなんて。本当に事情が解ってンなら酒が飲めない身体だってことも知っているはずだろーが、なんてクソ上司に期待してもしょうがない。ボランティアの国だからか俺の身体が不自由なのを知ってから謎に猛烈アプローチしてくるのもウザい、全く何でこんな事務所に入っちまったンだろう…って、

    (給料がいいからか)

    とある目的の為に沢山の金が要る、それもなるべく早く貯めたいからと調べた結果、アメリカの方が色々都合が良かったから渡米した。それから概ね計画通りに貯金はできている、ただ問題はー

    鏡に自分の姿を映してみる。高校生の時より筋肉が落ちた身体、実際にウェイトも減って線が細くなった。親譲りの白い肌、多分年齢より若く見えてしまうのも母親からの個性のせい。加えて欧米人はみんなデカい、ジーニストみたいなのがゴロゴロしている中では自分のポジは子どもか下手したら女役になってしまうのだと、ここ数ヶ月の滞在で嫌でも理解してしまった。

    ふとスマホに光が灯る、メールの着信を知らせる色、差出人は轟焦凍、久しぶりに見る名前に心臓が跳ねる、何の様だろう、確認したいけれどそろそろ仕事だ。ナイトプールで遊ぶ要人の警護、五つ星ホテルのプールなんて広すぎて警護は大変だろう、加えて雰囲気を壊さない為にヒーロースーツの着用は禁止、水着で警護だなんてふざけてるったら、あぁ全く馬鹿馬鹿しいから真っ当なヒーローはこんな仕事引き受けない、だから、金が良いんだろ、と自分に言い聞かせてボロアパートを後にした。

    +++

    『爆豪が見つかったって聞きました』

    『ああ、うちの情報担当が昨夜見つけた、見つけたらすぐ君に知らせる約束だったから、こんな早朝から呼び出してしまったが良かったかな?』

    勿論です、ありがとうございます、と一礼してジーニアス事務所を出た足ですぐに飛行機のチケットを探す、行き先はニューヨーク。仕事を選ばず働いていると風の噂で聞いてはいた、緑谷の為に膨大な金を貯めようとしていることは知っていたし、早く貯めたいからとクラスの皆に頭を下げて共同出資を頼み込んだのも爆豪だった。

    現状身体の不自由な爆豪と現場が被ることは少なかった。プロになってから、ヒーローにしては細い体格を生かして主に潜入捜査をしていると聞いた。片腕が使えず、心臓に負担も掛けられないのにそんな危険な仕事を、と顔を合わせた時にここぞとばかりに嗜めたのがいけなかったのか、半年前日本を離れてしまった爆豪を血眼になって探し続けた。

    (やっと見つけた、もう絶対に逃さねぇ)

    如何にもファッション向けの事務所はきっと大企業の宣伝だろう、きっと給料の良さで選んだに違いないそこの所長にジーニストからの依頼書を見せる。中身は雄英高校からの緊急招集、快く連絡を取ってくれたが、

    『電話に出ないようだ、確か今あの子はプールにいるはずだ、そうだね、深夜には戻ると思うからもう少し待つと良い』

    プールだって?爆豪は泳げないのに?もしもプールに落ちたら?爆破の個性を使って良いなら片腕でも何とかするだろうが、おそらく客がいる場所でそれは困難だろう、それに水着姿を晒してんのか、ダメだろあの身体を見せちまうなんて、あんなエロい上に傷だらけではどうしたって人目を引く。ただでさえ劣情を持たれやすいのに、この時間帯ならおそらくナイトプール、つまり本気で泳ぐ健全な空間ではなく、酒と音楽と人肌を求めた少しばかり如何わしい空間だ、

    (そんな所に、爆豪が)

    ギリ、と奥歯を噛み締めながら五つ星ホテルのうちナイトプールの有名なところから当たっていくうちに、

    『ああ、この金髪の子なら来ているよ、ヒーローのお勤めご苦労様』

    爆豪はどこに行っても子ども扱いされていんのか、確かにここ数年で自分と爆豪との間でも体格差が出来たが、ここアメリカでは確かに自分と同じ位の大柄な体格ばかり、そんな所にいるのだと思うとますます心配になってくる。だって、

    (爆豪は自分の魅力に気がついていない、どれ程自分が美人で、エロくて、劣情を誘うかなんて全く解っていない。以前指摘したら呆れた顔をしていたけれど、俺は間違っていねぇぞ、今日こそ教えてやる)

    そう思いながら向かったプールはガイドの通りだだっ広く、薄暗い空間ゆえ人を探すのは困難、

    (何処だ、爆豪、何処にいるー?)

    +++

    『君は本当に美人だね』

    どーも、

    『ヒーローなんだって?良かったらウチに来ないかい?今の給料の倍は出せるよ』

    製薬会社で出来ることなんて、

    『丁度猫を飼いたかったんだ、金色の毛並みに紅い瞳の美猫をね』

    (…俺にペットになれってか?馬鹿にするのも大概に…って、こんな事務所で働いている時点でペットみてぇなもんか、でも)

    今はまだギリ貞操を守れている。スキンシップが多い国ゆえハグは日常茶飯事だし、頬にキスも当たり前だけれど、きっとコレを引き受けたら身体を差し出さなくちゃ金はもらえない。男のくせに未練たらしく貞操を守ろうとしている自分も滑稽だけれど、でも、

    轟の顔が浮かんでしまう。

    ずっと片想いをしている、こんな遠く離れた国にきても思慕は消えることなく胸を揺らす。離れたら忘れられるかと思ったのに、ますます苦しくなるなんて、恋というものは恐ろしい。だったらいっそ誰かに抱かれてしまった方がいいのか、この苦しさから解放されるのか、今よりもっと稼げて轟のことを忘れられるなら一石二鳥なんじゃねーか?

    『俺、可愛げねーと思いマスが』

    『可愛げないところが可愛いんだろう、猫ってのは』

    腕が伸びてきて顎を掬われる、まるで品定めしているような目だ。

    (熱い…)

    渡されたカクテルをほんのひと舐めしただけですぐさま身体の端から蕩けてくる。あぁコレ今から味見されちまう、

    さよさら、俺の恋、バイバイ、轟、

    『ばくごう』

    あー情けねェこの期に及んで轟の声が幻聴になって聞こえる、

    『そいつはヒーローです、触らないで下さい、は?

    …じゃあ言い直します、そいつは、爆豪は俺のもんです、たった今日本から迎えに来た、だから触るな下衆が!』

    随分轟らしくねェ幻聴だ、これ俺の捏造か?にしちゃ迫力があるっつーか、ヤベェ轟の幻覚まで見える、さてはこの薬ヤベェやつか製薬会社のクセにやってんナァ、

    『やっと見つけた、爆豪、もう絶対離さねぇ』

    馬鹿みたいにキツい締め付けに呼吸もままならない、お陰で濁った意識が覚醒していき、開けた視界にはそのまま射抜かれて焼き殺されそうなオッドアイ、瞬きするとそこには本当に轟がいた、

    『何でテメェが』

    『爆豪っ、ばくごうっ!ずっと探していたんだ、見つけたら最初に言おうと決めていた、爆豪、お前のことが好きだ。好きだから嫌がることも言っちまった。なぁ、お前がいねぇとダメなんだ、頼むから、俺のことを好きにならなくても良いから傍にいてくれ、一緒に帰ろう、なぁ爆豪…』

    鬼の顔から一転して泣かれたら一体俺はいつ告ればいいんだ?…迷ってる場合か?俺にとっても今しかねェだろ、俺もお前のことが好きだと、言うなら今だー

    『轟、俺もお前のことがー』

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