兄貴の独白。大丈夫だ。心配するな。
このどうしようもない武士の世なんて俺が潰してやる。
俺はその為に生き抜いて、その為の力を得たんだ。
任せておけ。
俺は、俺だけは絶対にお前の味方だ。
俺にだってもうお前しかいないんだ。
違う。そうじゃない。
勘違いをするな。
少し弟分の頼みを聞いてやるだけだ。
里の奴らも食わしてやらなきゃならねえんだ。
武士も潰せる。金も貰える。
いまだって、これからも、俺は、俺だけは絶対にお前の味方だ。
なあ、もしかしたら。
もしかしたら、あの男なら大丈夫なんじゃないか。
信じてみてもいいんじゃないか。
このどうしようもない武士の世を、変えてくれると、思わないか。
どうだ、あの風変わりな武士に賭けてみないか。
結局、あれは、そんな男ではなかった。
あの日、逃げる場所も頼る者もないまま、ただ闇雲に走るしかなかった子供が、じっと暗い瞳で此方を見詰めている。
ずっと、ずっと、ただ此方を見詰めてくるだけだった子供の口が初めて開いた。
「うそつき。」