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    lemolemo3_

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    例の公式壁紙の絵を思いながら書いた短文

    午睡の時間は半刻だけ何故泣いているの、と彼は唇を震わせた。
    見た覚えのない部屋の中、涙に髪を乱した男が身体を横たえている。男の目は虚で、臥榻には血が滲んでいた。彼はもう一度、何故泣いてるの、と唇を震わせた。
    声は届かないらしい。ぼんやりと開いた瞳からはただ涙が流れるだけで、彼を見てはいなかった。彼も、なぜこんなところにいるのか気にならないほど、もう自我が虚だった。
    白檀の良い匂いがする。泣いている男の顔を見るとどうにも胸が痛くなって、彼は眉を顰めた。男と自分はどこか深い関係にあったような気がする。もう直前の記憶も曖昧で、彼はほとほと困り果ててしまった。
    とりかえしのつかないことを仕出かしてしまった。それだけは分かる。だから自分は死んだのだろう。
    もう一度男を観察すると、男の体はどうやら熱を持っているようだった。呼吸も荒く、止め処なく流れる涙で目も腫れている。
    ずっと前から、この場所に来たかった気がする。彼は立ち上がって男に近づこうとして、どうやら臥榻より先には近づけないことに気が付いた。薄い膜のような断絶が男と彼の間に挟まっている。彼は仕方なく、臥榻のすぐそばで腰を下ろす。
    臥榻の端に腕を乗せ、頭をこてんと寝かせると、すぐに心地よい睡魔を感じた。

    男の声が聞きたいと思った。空虚な玻璃の瞳に温度が滲む様を、見たいと思った。同時に、それが叶わないことも知っていた。
    彼はどうしてだか自分の方が泣きたい心地になって、そっと喉を震わせた。ああするしかなかった。間違いだと知っていても、彼はきっとまた繰り返してしまう。いっそ安寧な、幸せな日々がなかったら。心を砕いてしまわなければ。永遠に続かない幸せなら最初から得られなければよかったのに。
    そう考えると、胸の苦しみはもっと強くなる。苦しくて、苦しくて、でもこの場所にいられることに安堵した。男の周囲はいつも清純で、穢れを許さない。ずっとそれを求めていた。ずっと、触れたかった。
    魏無羨は無意識に手を持ち上げて、その時ふと、自分の指の先が消えかかっているのに気が付いた。指先は徐々に透明になり、それは手首の方まで進行していく。彼は咄嗟に指を握りしめた。
    まだ、消えたくない。せっかくここに来られたのに。まだ自分の名前さえ思い出せていないのに。
    魏無羨が動揺に身体を震わせていると、男はぱちりと瞬いて、その瞳に一瞬だけ光を灯した。急に動きだした男の時間に、彼は慌てて男を振り返る。
    男の瞳が彼を見透かした。
    「魏嬰」
    その声を聞いた瞬間、彼は全てを悟った。
    彼は透き通った笑みを浮かべて、男に手を伸ばした。
    「藍湛」
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