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    仮釈放

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    仮釈放

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    lxm家族
    shvくんの入学式朝のこと
    ネタメモ程度に書き起こしたもので中途半端です
    駄文

    高校入学当日の朝。シュウは丁度新品のローファーの片足を突っ込んでいたところ、小さな物音を聞き後ろを振り向く。そこにはまだ寝ているはずのルカがぽつんと立っていた。オーガスタスを床に引き摺って、まだ重そうな目を擦りながら窓から差し込む光の眩しさに瞼を震えさせている。
    「シュウどこいくの?」
    「おはよ。昨日言ったでしょ?今日から僕高校生だから。ルカ、きみまだ眠いはずだしアイクかヴォックスの部屋でもう一度寝直しておいで」
    「聞いてない!いっしょにいく」
    シュウは昨日確か食卓で伝えた筈なのにな…と苦笑し、少々身構えた。ルカが何かこれをすると一度決めたら中々折れてはくれないからだ。
    「それは、ちょっと難しいかも…」
    「なんで?」
    「その…ルカはまだ高校生ではないし…」
    穏便にこの場を納めたいが、うまい言葉が見つからない。少しの沈黙の中ルカはシュウをジッと見つめた。ぬいぐるみを抱きしめる腕に段々と力がこもっていくのが見てとれる。
    「あの…えっと…ごめんね?」
    なんと声をかけたらいいのかわからない。そもそもこんな風に引き留められるだなんて予想をしていなかったし、ルカのことだから元気にPOGとでも大声で見送ってもらえると勝手に思っていた。…そう一瞬考えて視線を戻すと、ルカの大きな瞳には明らかに透明の膜が張っていて、次に一体何が起こるのか察したシュウは何か言いかけるが、時すでに遅しで、大粒の涙が次々とこぼれ落ち始めていた。
    「るか?!」
    咄嗟に履きかけの靴を放り投げ脱ぐついでに踵を踏んで潰してしまったが今そんなことを気にしている場合ではない。そのまま駆け寄りシュウは廊下に座り込むと目を擦りながら泣きじゃくるルカを引き寄せ膝の上に落ち着かせたが、もうじきひゃっくりでも出そうな勢いだ。
    「ルカ、話してごらん」
    「シュウはもう大きいから、俺といてもつまんないんだ…」
    「そんなわけない、いつだってルカと過ごす時間は楽しいよ」
    シュウはルカと向き合うと鼻と鼻がくっつく程近くに顔を寄せて言い聞かせるようにそう囁いた。
    「じゃあ今日もおうちいて」
    「そうしたいけど、今日は大事な日なんだ」
    「なにの日なの?」
    「僕が新しいことに挑戦する最初の、大事な日…」
    シュウは大きく息を吸うと震えるようにはき出した。それを見ていたルカはいつの間にか泣き止んでシュウのナーヴァスな表情を見つめては不思議そうな顔をした。
    「だからね、楽しみだけど実は少し怖いんだ…正直寂しいし、本当はルカについてきてほしいくらい」
    「どうしてこわいの?」
    「そうだね…えっと…ルカが初めての公園に行って知らないお友だちに一緒に遊ぼうって声をかけるときがあるでしょ?」
    「あ、あれ…どきどきする」
    「そうそう。僕は今わくわくもしてるけど、どきどきもしてるんだ」
    「おなじ?」
    「うん、まあ似たような感じかも。だからルカのほうがそういう気持ち経験あると思う。どうしたら良いかアドバイスくれたら助かるんだけど…」
    ウインクしてそう言うとルカは「へへへ…」と小さく柔らかくい笑みを浮かべ目を細めた。その拍子に乾ききらず目の際に残っていた涙がころころととびだす。そしてルカは突然立ち上がったかと思うと小さくて細い腕をシュウの首に回し、ぎゅっと優しく抱きしめた。頬に頭をぐりぐりと押しつけられてサラサラとした髪が気持ち良い。
    「…どうしたの?」
    「がんばれるためのおまじない。シュウ元気でた?」
    慰めるみたいにルカはシュウの顔を覗き込んだ。小さな手でシュウの髪を梳きながら。これいつも僕がきみにしてることだね…目の前の大きな瞳に見つめられながらそう気づいた。環境が変わるのは何も自分だけではないのだから、ルカが泣いたのも納得だと今更ながら思ってなんだか胸がいっぱいになる。
    「もう怖くない?」
    「ルカのおかげで今日一日すごく頑張れそう…」
    シュウがそのまま抱きしめ返すとルカは抱きついたまま嬉しそうにきゃっきゃっと言ってぴょんぴょん跳ねた。
    「…今日からのことしっかり話しておけばよかったな。不安にさせてごめんね」
    そう言ったらルカは動きを止めてぱっと顔をこちらに向けたかと思うと、今からシュウが学校に行くことを思い出してしまったのかまた少し涙ぐんで肩に顔を埋めてしまったものだから、シュウはなんだかこの繰り返しがおかしくて笑ってしまった。
    「だいじょうぶ、けど、はやく帰ってきてね」
    「ねえルカ、なんかこれ一生の別れみたいになってない?泣きすぎたら目開かなくなっちゃうよ」
    すんすんと鼻を鳴らして泣いているものだから、シュウはまた申し訳なくなりながらも、今僕のブレザーの肩の部分にはきっと、よくネットで見かけるようなmeme画像のように涙と鼻水によって顔の形がついていやしないだろうか、など考えているところでアイクとヴォックスが上から降りて来るところだった。どうやらルカの声が上の階まで届いていたらしい。シュウはヘルプ!とルカを片腕に抱きながら手を振り、それを見て即座に察した2人はクスクスと笑いながらこちらへやってくる。
    「おはよう二人とも。シュウ、出るには時間が早いね?何かあるの?」
    アイクは胸元にぶら下がった眼鏡をかけながら尋ねる。
    「いや、ただ校内がどんな感じかを人が少ないうちに適当に1人で見て回りたくて」
    それを聞いたヴォックスとアイクは一瞬目を見合わせ嬉しそうに微笑み、その様子にシュウは少し照れ臭くなってしまった。そしてルカは先程よりも更に目を腫らし、まだシュウにしがみついている。そしてそれに気がついたヴォックスが優しい声色で話しかけた。
    「OKルカ。良いことを教えよう」
    ヴォックスは親指の腹でルカの涙を拭いながらそう言うとルカは少し目を見開いて興味を示した。
    「あとで俺たちもシュウの学校へ遊びに行くぞ」
    「…WHAT」
    そんなの聞いてない!シュウは何も聞いていなかったしなんなら来なくて良いからねと結構以前から伝えていた筈だったから、それを聞いて口をあんぐりさせていた。
    「来るに決まってるだろう!大切な日だ。それに校門の前で皆で写真を撮るんだろう、世間は」
    そうだった…この鬼は、実際のところ人の言うことをあまり聞かなかった。害さえないと判断すれば怒られるとわかっていても自分が経験したことがないことであれば大抵やってみる。ほんの細かな、些細なことであってもこの世でするto doリストのようなものを脳内に常に置いているような鬼なのである。シュウは入学式にこの派手な4人が後ろの方でパイプ椅子に座り、学校の敷地内を練り歩き、校門で並んで写真を撮るまでの一連の様子を容易に想像しながら溜息をついた。といっても別に嫌なわけではない、寧ろとても嬉しいくらいなのだが、わかるだろう、この面子だ。世間的にまた違う雰囲気のシュウの家族は、外野たちから絶対に注目されるはずだ。どう周りが反応し、それがどう自分に影響を与えるのか…。シュウはすっかり黙りこくってしまった。ヴォックスは目を輝かせ、ルカに対し今日のプランを嬉々としながら話している。何も知らない人間が彼のことを側から見たらどう思うだろう?少し風変わりな男性と思うくらいだろうか、…少なくとも何百年も生きている鬼だとは誰も思いもしないだろう。そういう身の振る舞いなのだ。まあそれが、ある意味馴染んでいると言えるのかもしれないが。
    「安心してシュウ。なるべくすぐに帰るからね」
    アイクがおかしそうにその様子を眺めながらシュウのそばに寄って耳元で囁いたが、問題は滞在する時間の長さではなく、来る時点で…なのだ。
    「まあ、いっか」
    来るものは仕方ない、なんとかなる。そう思ったシュウという男もまた基本的に何に関してもとんでもなく切り替えの早い人間だった。一方ルカはというと、もう自立するらしくシュウの腕から抜け出し一目散に自室へと向かおうとしていた。
    「でかける準備しなきゃっ」
    そう叫んで一気に階段を駆け登っていく。何故子どもというのは次の瞬間からムードが一気に変わるのだろう。たまに目眩がする気がした。それに、この朝の賑やかさにシュウはなんだか気が緩んでしまって少しあった不安や緊張をさほど感じなくなっていた。一緒に暮らし始めて結構経つのに、こうやって誰かに気にかけてもらうことに慣れていないシュウはいつもこうやって驚いたりはにかむのが精一杯で、そして悩んだ末、彼はとりあえずわからないなら解らないなりに、彼らから与えられる全部を受けてみようと最近思うのだった。あの頃とは違って血縁関係など無くとも人はこんなにも誰かと繋がることが出来るものなのかと、シュウは彼らに出会って初めて知った。時折、この陽だまりが心地良すぎてそれも少し不安になるのだが…。
    「シュウーーーー!!!」
    次はルカと入れ替わりでミスタの起床。ボサボサ頭に乱れた衣服で何故か息を切らしている。いつもなら遅刻ギリギリに起きるのだが、今日はもう家を出れる格好で二階からやってきたものだから、皆目を丸くしていた。
    「おはようミスタ。どうしたの?珍しいね」
    「…はあっ…はあ…だって、今日はシュウ入学式だろっ、一緒に…っ登校したぐて…!」
    どうやら彼は寝るときに学校用のシャツを着て寝て、その他着替えも持ち物も準備をしてから就寝したのだそうだ。そのおかげでシャツは皺だらけだが、その気概さえ常にあればもっと苦労が減るだろうにとヴォックスから既に揶揄われている最中であることは言うまでもない。なんて稀有に尊い兄弟だろう…そう思ったシュウだったがそこまでは口に出さず、aw…と優しい笑みとともに首を傾げ声を漏らす。何故僕たちはこんなにも容姿が瓜二つであるのに、本当の兄弟でないのか不思議で残念だとシュウはたまに零すのだが、それを言う度にミスタは『別に俺は血が繋がってるとか、そうでないとか気にしないな。だって俺は今シュウと過ごせてすごく幸せだし…シュウもそうだと良いな』ハグとともにそう返事をしてくれる。彼はそんな人間なのだ。普段はふざけてみたり奇妙なアクシンデントを起こしたりと忙しないが、そこを全て含めて彼の愛おしい部分だと皆が知っている。そして自分の隣でわたわたと靴紐を結ぶその子の旋毛をシュウはにこりと笑いながら見つめては人差し指で押してみたりして、下から寝起きのくぐもった声で「ああ、やめろよシュウ!」と笑い混じりの返事が聞こえてくる。
    「寝癖くらい直していきなよ」
    「いつもこんなだから良いの」
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