かがみが見る届かない想い(ゆめ)『かがみよかがみ。わたしの心の向く先を映しておくれ』
ぱしゃ。音を立てて水底に沈む体。
この体に血は流れない。一時的に生命活動を止めているのだ。当然、酸素なるものも必要ない。
時々不意に水底で眠ってしまいたい時がある。そして、決まってその時は『夢』を見るのだ。
---自覚してから間もなく、届けることさえ叶わなくなった『想い』を。
私は『鏡』だ。鏡に、心なんてなかった筈なのに。
(ああ、またこの夢…)
あの人を、すきになってしまっていたと自覚したあの瞬間、私は。
俺が始めた戦いだと、『鏡』を戦争から遠ざけるための目的だけだとは到底考えられなかったあの邂逅。
(どうしてそんな表情を、)
彼は答えなかった。ただ、何も聞かずに黙ってこの戦いから手を引け。それだけを言葉にして。
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(あの時、全部聞いていたら何か変えられたの?)
個人の力にしては大きすぎる『鏡』の力。人の戦いに関わらせてはならないというものは、私もこの体が人である限り関わらざるを得なくなる。世界が望まなくても、人が人である限り。
「……それでも」
音にならない水面の下で私はまたいつか夢を見るのだろう。
もう二度と見えることがない筈のあなたへの、届かないままこの想いを沈めてしまうために。
けれど、あなたが私の心に刻み込んだように、私はあなたのことを、ずっと忘れることは出来ないのだろう。