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    ゆきのしずく

    @blanca26luz

    2次元限定夢と妄想に浸る時間が1番の幸せ。
    取り扱いジャンルもごちゃ混ぜ垢分けする気ないやつ。

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    ゆきのしずく

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    花吐き病ネタ。
    ザレイズ夢、バルド×固定夢主(キョウカ)
    Twitterで唐突に思いつき鬼連ツイになったものを纏めたもの(縦書き対応してない文字を縦書き対応文字にしてたりします)(なのに横書きで上げるやつ)(単に画像ツイを諦めた)

    #バルキョウ
    #ザレイズ夢

    花吐きの報せ『ぅぅ……』
    『キョウカどうしたの…』
    『~…けほっ』

    ひらり。キョウカが咳き込むと花びらが一枚。ひらひらと宙を舞っている間に掴み取って見るが、触った感じは何も違和感らしいものは感じなかった。

    『、朝起きたら……咳止まらなくて……部屋も……っけほ!』

    また一枚。ひらりと舞い落ちる何かの花びら。

    キョウカの言い分を要約するとこうだ。
    昨晩までは何の変調もなかったが、朝起きたら突然咳が止まらず、当然自室に割り当てられている部屋も自分が吐き出した?謎の花びらだらけで怖くなった彼女は無我夢中で自室から息絶え絶えながらも飛び出してきたらしい。

    『けほっ…やだ…これ怖い……キリカさん……』
    『……キョウカ、とにかく私の部屋に行きましょう』

    とにかく怖がる彼女を落ち着かせなければ。既に泣き出してしまっている。これ以上パニックになる方が彼女のためにもならない。そう考えたキリカは今も尚花弁を吐き出し続ける彼女と自室へ向かった。

    『……という訳なんですが、何か心当たりありませんか?』

    魔鏡通信越しに苦笑いしている男の整った顔をジト目で見ながらキリカは男を問い詰めていた。

    《「……幾らなんでも昨晩最後に会ったのが私だからと、キリカさんにしては早計が過ぎませんか?」》

    昨晩任務を言い渡され、現在はビフレスト聖騎士団のアジトには不在である男…バルド。彼がアジトを後にしたのは昨晩遅かった。流石に何かあったか等と疑いたくはないが相手はあのバルドである。

    《「それにキリカさんもご存知の筈でしょう。」》
    『キョウカにあなたの女性への賛美は全く通じない』
    《「そんな誤解を招くような言い方は止めて下さい。私にとって女性とは美しく素晴らs」》
    『あ~はいはい。聞き飽きてるのでその辺りは結構です』

    全く、この調子では日頃ウォーデンが頭を抱えているのも頷ける。話を聞くだけでも心が虚無になりそうだ。

    『とまぁここからは真面目な話。バルドは何か知りませんか?』
    《「花びらを吐き出す症状が出る病のことですね」》

    真面目な話を茶化すようなことをしない辺りは流石ウォーデンが誇る優秀な臣下。顎に手を持っていっている姿は実に絵になる。

    少しの熟考の後、今度はバルドから話が切り出された。

    《「ある蔵書で見たことはあります。【花吐き病】と呼ばれているものの話を」》

    【花吐き病】はじめて聞く単語にバルドの方もたまたま目にしただけなのだということだと。その割には当の蔵書の中身を覚えている辺りが彼らしい。

    どうやら【花吐き病】とは片想いを拗らせると口から花を吐くのだとか。

    『片想い』
    《「予想通りの反応で」》

    しかもそれはれっきとした恋心というものであり、おおよそキョウカには無縁そうな感情である(彼女が表情を赤らめている時は100%何か妄想している時だと全く疑いもしない表情)

    『…しかも、治す方法が』
    《「はい。」》

    恋が成就すると、白銀の百合を吐き出した後、完治するのだそうだ。何でこの男が一言一句正確に覚えていたか等最早疑問に思うまい。そう考えることにして。

    『…問題は、キョウカが一体誰に対して恋愛感情を拗らせちゃってるのか…だけど』
    《「…自覚が、ないのかもしれませんね」》
    『心当たりがあるの?』
    《「そんなまさか」》

    ふと、バルドは昨晩任務に出る際にキョウカと会った事を思い出す。

    『ーーあれ?バルドさん?』

    夜も深く、大抵の人間は床についている時間帯。任地に赴くのに深夜出立が適していると判断したバルドはアジトを出る間際に彼女と遭遇した。

    「キョウカさん。まだ起きていらっしゃったんですか」
    『…たまたま、起きてて。あんまり眠れる気がしないから、外の空気浴びようかなって……』

    彼女が日頃愛用しているらしき抱きクッションを抱え、それでいて口元を隠しながら此方を見上げてくる様は大変可愛らしい…ではなく。

    「もう夜も遅いですし、部屋の前まで送りますから、今日のところは諦めていただけますか?」
    『…バルドさんは、これからお仕事?』

    任務の中身まで言う必要はないだろうと、はい、とだけ答えてもと来た方向に彼女の背を向けさせた。

    部屋に向かう道中、何か話すわけでもなく、ただひたすらに静けさだけがお互いの間を駆け巡った。他の帰還している聖騎士団の仲間達はもう皆床についているのだ。騒がしくするわけにはいかない。

    「(…ん?)」

    ふと、前方を歩く彼女の足音が気になった。ぺた、ぺた、と肌が直に床を滑っているかのような。
    よく見れば彼女は何も履いてきていないようだった。裸足である。抱えている抱きクッションの大きさに足元まで見えていなかったのだ。

    「(彼女は、一体どこに行こうと…)」

    夜は深い。もし自分が彼女の存在に気づかなければどうなっていたのか。
    もしも。そんな嫌な予感が過り、自らが落ち着かなくなっていく感覚を覚えはじめたバルドはとにかくこの少女を自室に送り届けてから出立しようと決めたのだった。

    前方の歩く足音が止まると彼女は此方を振り向いた。

    『…その、ごめんなさい。お仕事、気を付けて…』
    「…ありがとうございますキョウカさん。きみの心が安らげる夢が見られるように」
    『っ』

    びくり。分かりやすく動揺を見せた少女の震える手。嫌な予感として考えていた選択肢のうちの1つを上げただけだったのだが、夢見がよくなくて目が覚めてしまったと分かって少し胸を撫で下ろす。
    そして、次にバルドは少女を軽々抱き上げた。抱き上げられた少女は何が起きたのか理解が追い付かず、突然自分の足が床から離れたことに驚き両足をパタパタ動かしていた。

    「失礼しますね」

    バルドは手慣れた手付きで扉を開けると、そのまま彼女を布団へと連れていきそっと下ろした。

    『…ば、ばるどさん…』
    「…きみを心配しているのはキリカさんだけじゃない」

    どうか自分を蔑ろにしないでほしい。戦う力がなくても、きみも僕たちの大切な仲間なのだから。
    冷えてしまったであろう足に早々に布団をかけてやる。

    ーーーつい、出来心で頬に親愛の証を落として。

    そっと離れた後彼女の反応を見てみると、何が起きたのかさっぱり分かっていないように首を傾げていた。そんな呆気に取られた表情をされてしまうと自分の中に現れ始めていた罪悪感が許された気がして、暖かなものが胸の内からこみ上がってくる。

    だからこそ。…だからこそ僕は、彼女も守りたいと。
    守りたいだけじゃない。心の底から彼女のことが【欲しい】と考えてしまうまでに気にかけてしまうんだろうね。

    「…お休み、キョウカさん」
    『…お休みなさい……』

    大人しく床につき眠り始めた彼女の寝顔を見送り、当初の予定どおり任務を早々に片付けてしまおうと気配を消してアジトを後にした。

    そんなやり取りをつい昨夜にしたことを、思い出してしまったが正しいか。

    《『…バルド?どうかしましたか?』》
    「…いえ」

    ずきり。通信機を持っていない左の腕が痛みに震える。
    任務は滞りなく終えられた。だが相手に不意をつかれて襲いかかられた為に負傷してしまったのだ。不覚の極みである。

    「ともかく、私はこれからアジトに帰還しますので、一旦通信を切りますね」
    《『分かりました。道中お気をつけて』》
    「あ、後それと…彼女はその後どうなったのでしょうか?」

    通信を切る前に彼女の様子を把握しておきたかった。何が出きる訳でもないとは分かっていたが。

    《『今は私の部屋で泣き疲れて眠ってます』》
    「分かりました。ありがとうございます、また後程」

    ぷつり、と通信を切り、痛む腕を抑えながらバルドは帰路についたのだった。

    あれから数時間ほどでバルドはビフレスト聖騎士団のアジトに帰還した。
    帰還してからがまあ色々大変だった。
    敬愛してやまない主君には「報告より先に傷の手当てをしてこい」と執務室から叩き出されたのは記憶に新しい。専門の者に診て貰ってから再び執務室へと足を向けようとしたバルドだったが、ふと通りすがったキリカに宛がわれている部屋の扉が目に止まった。そういえば、今彼女はこの部屋で……

    コンコン、と扉をノックすると少しして部屋の主が顔を覗かせた。

    『あっ、任務お疲れ様です』

    どうぞ、と案内された先には寝息を立てて眠る少女の面(おも)が視界に飛び込んできた。
    一見しただけではただ健やかに眠っているだけに見えるが、目元を見やれば泣きはらした跡が残っていた。
    それも致し方のない事だろう。身に覚えもない奇病に見舞われ、自室には自らが吐き出した謎の花びらが視界を占めていたのだ。戦場を知らない少女が怖がってしまうのも無理はない。

    『それじゃあ私はキョウカの部屋に掃除に行ってくるから、その間頼みますね』

    間違っても手を出さないように。

    そうしっかり釘を刺してくる辺りキリカらしい。だから誤解だと言うのに。これも性分だと諦めをつけて、キリカの寝所でいまだに眠っている少女へ向き合う。

    すると。

    『…んぅ…むにゃ…』

    僅かに身じろぎをし、自分より一回りも小さい手が目元を擦り始める。

    あぁ、そろそろ起きてしまうな。

    ぱちり、と目を開けたものの、まだうとうとしている様子で此方を認識出来ていないようだ。試しに声をかけてみることにする。

    「――おはようございますキョウカさん」

    そして漸くバルドの存在に気がついたらしき少女の目がこれでもか、と言わんばかりに見開かれた。

    『―――ばるど、さん』
    「はい。」

    『ーーーっ、』

    え、と呆気に取られていた次の瞬間。ぼろっ、と派手な音が立たんばかりにその見開かれた大きな瞳に涙を湛えてそのまま溢れ始めたのだ。

    「き、キョウカさん…?」
    『い、生きてる…バルドさん、生きてる…?』
    「ええ、この通りですよ」

    安心させるつもりで腕を上げたつもりだった。

    それがいけなかった。
    ずきり。敵の奇襲で痛めた左腕に痛みが走り、それが面に出てしまった。

    「(しまった…!)」

    彼女は既に泣き出している。このままでは大騒ぎになってしまう。
    バルドは上げていた腕を下ろして少女の様子を伺うと、彼女は泣いたまま此方に視線をやってくる。
    そして、自分の一回りも小さい手を痛めた左腕の近くに持ってきた。

    『…痛かったよね』
    「…この程度の傷なら問題ありませんよ」

    痛めていない方の手で彼女の頭をゆっくり撫でてやる。いつもなら直ぐに笑顔になるものの、やはり今回ばかりは意識を逸らす事はできないようだ。
    さてどうしたものか。

    『…きのう、』

    昨日ね。嫌な夢を見たの。バルドさんが大怪我して、ビフレスト聖騎士団の皆が泣いてる夢。

    『私、怖かった…そのまま…もう2度とこんな風に話せなくなっちゃうかもしれないって思ったら、寝るのが怖くなって…それできの…外の空気浴びよって思って……』

    ぽろぽろと大粒の涙を流し、震えながら昨晩、なぜこの子があんな時間に外に出歩こうとしたその理由を知る。

    『そしたら、バルドさんがどこかに行こうとしてたから……正夢になっちゃうかもしれないって思って…』
    「…話せなかったんですね、私には」

    こくり、と正直に頷く様子に漸く合点がいった。

    夢見が良くなかった事には薄々気づいていたが、まさか我がごとの事だったとは思いもよらなかった。

    『ーーっけほ…!』

    その事に嬉しさを感じている余韻に浸る間もなく、今度は咳き込みはじめーーー話に聞いていた通り、ひらり…と1枚の花弁が吐き出され、ゆっくり床へと舞い落ちていった。
    回りくどい説明をしている暇はない。彼女に自分自身の感情に向き合わせないことには、ずっとこの子自身が辛いままだ。それだけは自分も本意ではない。バルドは彼女の背をさすりつつ、【花吐き病】に関する事をキョウカに話した。

    『…完治するには、コイが実ること…』
    「要は今きみが一番誰のことを考えていたのかな…ってことですね」

    時折咳き込みながらも、う~ん…と悩む仕草をするキョウカ。やはり彼女はまだ恋愛感情を理解していない。そんな彼女が何故【花吐き病】に罹ってしまったのか。

    普段の彼女は見ていて大変面白い。
    ナーザ様と私のやり取りを見る度に目を輝かせたり、好物を目の前にして頬を赤らめながら頬張る様は大変愛らしい。もし自分に義妹がいればこんな感じに可愛がってしまうのかもしれない、そんなことすら夢想してしまうくらいに。

    なのにどれだけ彼女を称えても本人からは首を傾げられるか、白い目を向けられるか…それでも楽しんでしまっている自分がいるのは認める。

    「(…ん)」

    この子の感情の向く先を教えようとしているつもりが、いつの間にやら自分自身がこの子の事ばかり考えている事につい苦笑が溢れてしまった。案の定、何笑ってるのー、と渦中の子から抗議の声が。
    だって仕方ないじゃないか。これまでのことを思い出せど、きみを見ていて、話して…色々あって。くるくると回る表情、今日はどこから現れるんだろうと密かに待ち望んでいる事を期待している自分。

    「(ああ、そうか…)」

    そして今回。僕のことを案じて流された涙。
    ただ、見ていて面白いから気にかけていただけのきみが、いつの間にか僕の中でこんなに大きく占めるようになっていただなんて。

    だから、僕はこんなにもきみの事も守っていきたいと。きみの事がこんなにも【欲しい】と。

    『ばるどさん…』

    泣き止んだらしき彼女がごしごしと目元を擦りながら此方を見上げて話しかけてきていたことに、バルドは数秒反応が遅れた。それほどまでに自分が考えていたことがほんの一瞬信じられなかったためだ。
    《女性は美しく素晴らしい存在であり、その輝きには敬意を表して接する》というのはバルド自身の性分だ。だからといって、特定の女性に入れ込まない訳ではなかった。
    義弟が当時エリアスと名乗っていた少女ーーーキリカに幼き折より距離の近かった彼女に入れ込んでいた事に興味がなかった訳ではない。自分が同じように特定の女性を得たら同じように入れ込むのだろうか、程度には興味はあったのだ。

    だが。時を経て身近な存在からエリアスがいなくなり、お互いに年を重ね立場を得、いつの間にかその事を考える機会すら失くしていた。公私ともに義弟を支え尽くす……バルドにとってこれ以上の喜びはなかった。

    それが今はどうだ?昨晩敵に不覚を取られてしまったのは完全に己の失態。
    出る間際、自分は一体何を考えていた?任地に赴いても誰の存在が頭から離れず、敵の不意を許してしまったのは一体誰だ?

    そう自分に問いかけ、バルドは再び苦笑を溢した。

    気づいて、しまった。

    先に向き合わなければならなかった感情があったのは、自分自身の方だと。

    『……あ、あれ……咳、止まった!』
    「へっ」

    ぱあっ、と頬を赤らめて喜びのあまりに笑顔になるキョウカとは裏腹に、何故だ?と頭を悩ませるバルドの姿がそこにあったのだった。


    後日談
    『え?白銀の百合を吐き出した訳でもないのに症状が落ち着いた?』
    「えぇ……私にもさっぱり。キリカさんは何かご存知ではありませんか?」
    『…考えたくはないんだけど』

    可能性の話だけど、自らの体を鏡に見立てて相手の心を映し取って現出させる、なんて事が起こせるかもなのよ、鏡人ってのは。

    おしまい。

    @blanca26luz
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    Replies from the creator

    ゆきのしずく

    DONEいかがわしい意図は一切込めてないはずなのに何故こうもこの人絡みで文書く&タイトル付けると響きがアレになるんだろう。
    くるった勢いで書き上げた固定夢主『キョウカ』でバルド・ミストルテンさんの夢小説っぽく接触させてみましたの……(やりきった表情)
    絵面は完全に子どもをあやすお兄さんの筈なのにね……
    真夜中の戯れ真夜中。そこは暗闇一色でおおよそ起きて動いてる人は人っ子一人いない。---尤もその理屈が通るのは《普通の人間》に限られる訳だが。

    『(……また、抜け出して来ちゃった)』

    さく、さく、と暗闇一色の野を踏みしめ歩を進めていく。
    《どこ》に行こうとしているのかは具体的に決めていない。ただ、アスガルド帝国との戦いが終わった後からキョウカはほぼ毎晩のように自室を抜け出すようになっていた。

    寝たくない。始まりはそんな些細な《思い》からだった。異変は、次の日直ぐに起こった。

    眠たくなくなってしまったのだ。

    だが、夜は寝ないといけない、と何度かは布団に潜り眠ろうとはしてみた。――結果は、明らかだった。

    夜の帳が広がるこの時間。暇をもて余すようになってしまったキョウカはこうして毎晩自身に割り当てられた部屋を抜け出すようになっていた。
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