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    オルト

    どうしようもないものを投下

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    オルト

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    無自覚両片想いのタイカケと、ストリート系の後輩たち。
    モブ後輩がめっちゃ喋る。

    「タイガきゅん、かぁっこいい~!」
    「っ……!」
     黄色い声が飛んできて、タイガが思いきり転んだ。
     いつものように高架下で自主練をしていたタイガと、エーデルローズのストリート系の後輩たちが顔を上げた。フェンスの向こうから、スーツ姿のカケルが手を振っている。
    「おめぇなぁ……」
     タイガはゆっくり身体を起こしながら、カケルの方を睨む。カケルは軽い足取りでネクタイを緩めながらタイガの方へ近づいた。後輩たちは口々にカケルに挨拶をする。彼らにとってカケルは「レアキャラ」で、皆どこか緊張した様子だった。
    「いいジャンプ飛んでたじゃん! ダンスのキレも良かったし!」
    「ま、まぁな……」
     たった今カケルを睨みつけていたカケルの目はキラキラと輝き、下がっていた口角がくっと上がった。
    「ねぇね、おれっちもちょっと踊っていい?」
    「その恰好でか?」
     鞄を置いてジャケットを脱いだカケルを見て、タイガは目を丸くした。とてもプリズムショーを出来る恰好ではない。カケルはシャツの袖をまくり、左腕をタイガに見せた。
    「この中に、ちゃぁんと動きやすい服、はいってるよん!」
     プリズムウォッチが光りカケルの身を包むと、カケルはあっという間にストリート系の動きやすい服装になった。カケルはタイガの手を取って、スペースの中央に進む。
    「お、おい、カズオ……!」
    「ね、デュオしよっ!」
    「……おうっ!」
     タイガとカケルは、流れ出すメロディに合わせて踊り出す。ピッタリと息の合った動き、混ざりあうプリズムの煌めき、二人のショーに後輩たちはすっかり目を奪われた。
    「タイガ先輩、やっぱすげぇな」
    「カケル先輩もすげぇよ。息ぴったりだし」
    「二人って、真逆に見えるけどこうして一緒に踊ってるとニコイチって感じだよな」
     各々感想を漏らしながら、二人のショーを眺める。熱くて、爽やかで、しなやかで、煌めいていて、皆夢中になって見ていた。
    「いいなぁ。俺もタイガ先輩とああやって踊れるようになりてえよ」
    「あ~無理だろ……実力付けたって、あそこまで息を合わせるのって、相当だぞ?」
    「だよなぁ……二人の世界っていうか」
    「あの二人、付き合ってんだろうなぁ」
    「そりゃそうだろ……」
     少しの沈黙。
    「いや。付き合ってないらしいぞ」
    「え!?」
     一人の言葉に、全員が驚きの声を上げた。重なった声は大きくなり、タイガとカケルの耳にも届いた。二人は滑りを止め、後輩たちの方を見た。全員慌てて口元を抑える。
    「どうかしたか?」
    「いえ! なんでもねぇっす! 邪魔してスンマセン!」
     また声を揃えて頭を下げる後輩たちに、タイガもカケルも首を傾げたが、またすぐに滑り出した。
    「おい、それホントか?」
    「どう考えたって付き合ってんだろ?! あれはどう見たって好き同士だって!」
     後輩たちは身を寄せ合い、ひそひそと会話する。
    「それがよぉ、この間鷹梁先輩がたまたま青山の方に顔出してくれてよ、そん時に聞いたんだよ。実際あの二人ってどうなのか、って」
    「おめぇ勇気あるな」
    「で、付き合ってないって聞いた。しかも、だ。二人とも互いに相手のことを好きな自覚がないらしい」
    「は、あぁぁ……んぐぅ!?」
     大声を上げそうになった後輩たちは、慌てて互いの口元に手を伸ばす。視線をタイガとカケルの方へ向けるが、二人はこちらの様子に気付かず踊っている。ホッと胸を撫でおろした後輩たちは、会話を続ける。
    「おい、タイガ先輩の為に、俺たち人肌脱がないか?」
     後輩の中の一人が、ニヤリと笑う。
    「え? どういうことだよ?」
     ピンと来ない面々は、眉間にしわを寄せる。
    「だから、俺たちが恋のキューピッドになって、カケル先輩と……」
    「おぉ! それ、いいな!」
     思惑を理解した全員が、ポンと手を叩く。
    「でも、どうすんだ?」
    「俺、恋愛映画なら詳しいぞ」
    「姉貴に少女漫画借りてみる」
    「じゃ、じゃあ俺は……」
     こうしてタイガとカケル本人の知らぬところで、二人の恋人化計画がスタートしたのであった。
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