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    オルト

    どうしようもないものを投下

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    オルト

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    ガリカジのタイカケ
    行ってきますの儀式が習慣化するといいな。

    「やだ! 俺も一緒に行く!」
    「だから~。ダメなんだって」
     ドアの前に立ち、通せんぼのポーズをするタイガくん。フーッと唸って、虎の耳と尻尾の毛を立たせている。
     今日から研修旅行で一週間、人間界に行くことになっている。俺たちの学年だけの行事だから、タイガくんを連れていくわけにはいかない。
    「ね、行かせてよ」
    「俺も一緒に連れてってくれんなら通す」
    「ダメだって。今度改めてタイガくんとは旅行してあげるから」
    「そう言う問題じゃねぇ!」
     なだめようと思った頭を撫でながら言うと、タイガはぐるぐると唸りながら怒った。
    「人間って、危ないんだろ?」
    「え? そんなことないと思うけど……俺たちみたいに魔法も使えないし」
    「でも、カガクっていう変な技使うって聞いた」
    「あー、科学……。魔法の方が強いから大丈夫だよ」
    「それに、昔魔女狩りしてたって……」
     不安そうな顔をしている。そういう部分だけは、ちゃんと授業聞いてるんだ、なんて当たり前のことに感心してしまった。
    「大丈夫。そう言う歴史もあったけど、あれはその……長くなるからまた今度ちゃんと説明するけど、今はもうそんなことないし、向こうで魔法使ったりしないから」
     そう。今回の目的は、人間界でいかに魔法使いかバレずに過ごすかという練習なのだ。魔法を使わずに生活する、人間のフリをする、人間界のことを学ぶ。そういう勉強のための旅行なのだ。
    「し、心配なんだよ、おめぇのことが」
    「タイガ……」
     タイガくんが心底俺を心配してくれてるのはわかる。
    「ね、おれっちの力を信じてよ」
    「え?」
    「タイガくんは、おれっちが人間に何かされないか心配なわけでしょ? おれっちがそんなヘマすると思う? 襲われたとして、人間に負けると思ってるの?」
    「そっ、んなんじゃ、ねーけど……」
     ゆらゆらと尻尾を揺らしながら、タイガくんはじぃっと俺を見つめる。俺に着いて来たい気持ちと、俺を信頼している気持ちがせめぎ合っているのだろうか?
    「わ、わかった。行くのは認める」
    「あはは。ありがと」
     まぁ、タイガくんが認める認めないを判断するものじゃないんだけど。
    「ちゃんと連絡は入れろ、毎日。そんで、なんかあったら俺を呼べ」
    「うん」
    「俺の魔力、少し吸ってけ。あと、俺の匂いもつけていけ」
     タイガくんが、俺のジャケットの襟を引っ張り自分の方へ寄せる。そして奪われる唇。べろりと俺の口内を探る舌はざらざらしていて、犬歯が当たって、ドキドキする。じゅ、と唾液を吸う音が直接脳に響く。
    「はぁっ……」
    「んっ……」
     口を離して呼吸を整える間もなく。タイガくんは肺が潰れそうな程強く俺を抱きしめた。
     遠くで集合を告げる笛の音が聞こえるけれど、あと少しだけ、このまま……。
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