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    1244文字
    ガリカジのタイカケ
    付き合ってるかもしれないし、両片想いかもしれない

    「タイガきゅ~ん……お部屋戻っていいよ?」
    「だめ。今夜は俺がここで見張ってる」
    「う~ん……」
     虎の尻尾と耳を出したタイガが、カケルの部屋の前で仁王立ちをしている。もうすぐ日付が変わる。寮の消灯時間はとっくに過ぎていて、廊下は薄暗くしんとしている。カケルはもう一度小声で言った。
    「僕は大丈夫だから、もうお部屋に帰って寝なさい」
    「やだ」
     先程より真剣な声を上げる。寮長の威厳を……と思い意識していつもより低く落ち着いた声を出したが、タイガには効果が無いようだ。タイガは眉間にシワを寄せて、廊下の両端を交互に睨む。カケルはそんなタイガの様子を見て小さく溜息を吐いた。
     なぜタイガがこうしているのかというと、それは今日の昼までさかのぼる。
     昼休み、少し授業が延びてしまいタイガはカケルの元に行くのが遅くなった。タイガはいつも、時間が開けばカケルの所に飛んでいく。いつの頃からか、少しでもカケルの傍に居たいと言い、どれだけ短い時間でも、カケルの所に通うようになっていた。それがたまたま遅れた今日、この時を待っていましたと言わんばかりに他の寮生たちがカケルを取り囲んで猛アタックをした。普段、タイガの鉄壁のガードがある為なかなかカケルに近付けなかった寮生たちがここぞとばかりに押し掛けたのだ。
     カケルはあっという間に寮生たちに取り囲まれ、手を握られ、腰に手を回され、もみくちゃになっていた。シンが助け舟を出そうとしたところで、漸くタイガが現れた。その光景を見たタイガは、他の寮まで響き渡る程の大声で叫んだ。
    「俺のカケルに触るんじゃねぇ!」
     その叫びと共に暴れ出しそうになったタイガを、飛んできたユキノのミナトが取り押さえた。

     カケルを囲んでいた寮生たちは散っていったが、それでもタイガの機嫌は直らなかった。カケルの前に立ち、近づこうをするものがいたら鋭い視線で刺し、牙を見せて牽制していた。
     少しでも隙を見せたら、カケルに手を出される!
     そう思ったタイガは、「今晩はここで見張る。カケルに近付くやつがいたら追いかえす」と言い、カケルの部屋の前から動こうとしなかった。
    「もーいいから、おえぇも部屋戻って寝ろ!」
     タイガに叱られるように言われたカケルは、しぶしぶ部屋に引っ込み戸を閉めた。
    「もぉ、そんなに警戒しなくっても自分の身は自分で守るし、おれっちはタイガきゅんのものなんだけどなぁ」
     閉じた戸に背中を預け、カケルはその場に座り込む。この戸のすぐ向こうで、タイガが自分の事を想って立っているのかと思うと、無性に嬉しくなった。
    「ふふっ。ホント、タイガきゅんっていい子だよなぁ」
     その場に座ったまま魔法を使い、毛布を手繰り寄せる。その毛布にくるまって、カケルは戸の向こうの音に耳を傾けた。ぐるぐるとタイガが喉を鳴らす音が聞こえてくる。心地よい音に感じる。
     タイガが眠くなる頃に、もう一度様子をみよう。そして、部屋に招き入れて一緒に眠ろう。
     そう思いながら、カケルはタイガの気配を背中で感じながら、窓の外に浮かぶ丸い綺麗な月を眺めた。
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