雨の日が嫌いだった。服や靴が濡れるのも嫌だったけど、スニーカーが擦れて変な音がするのがどうしようもなく嫌だった。
雨の音も嫌いだった。無遠慮に大きくてそれ以外の音がわからなくなるから、世界でひとりぼっちになった気がするから。
爺ちゃんの葬式の日も雨が降っていた。雨音がうるさくて、バカ弟までいなくなってしまわないか無性に不安になった。手を強く握ったら同じくらい握り返されて少しだけ痛くて、同じくらいほっとした。
はじめて入ったやたらと豪華な部屋で、真っ黒い服を着た大人たちが話していた。詳しいことはわからないけど、爺ちゃんの遺産について話し合っているらしい。湿気と熱気が混ざり合って胸の奥がムカムカしてくる。
「フェリ、外行くぞ」
「えっ……ここにいなくていいの?」
「……どうせ誰も気づかねぇだろ」
戸惑う弟の手を引きながらロヴィーノは部屋を出る。二人が出ていっても追いかける者も咎める声もない。
廊下を抜けるとだいぶ空気がマシになった。自販機の横に並んだ椅子に腰をかける。
金がないからジュースは買えないけど仕方がない。床につかない足をぷらぷらさせ時間をつぶしていると足音が聞こえてきた。
「もう! 貴方がちょっと一服、なんて言うから!」
「堪忍したってや~ローデリヒ。それにお前かて迷子になって遅刻しとったやん」