12/17新刊サンプル1この世には、〝究極の二択〟というものがある。
飼うなら犬か猫か。休暇を過ごすなら山か海か。今日の夕食はピザかタコスか。それぞれはっきりと答えを持つこともあれば、どちらとも選び難いこともある。そしてルースターも、ある二択において答えを出せずにいた。
「マーヴ」
「なんだい?」
「……ピート」
「へ?」
庭の草花に水を撒いていたマーヴェリックが耳に飛び込んだ単語に反応し振り返った。
「マーヴ、ホースこっち向いてる!」
ルースターは自分に向けられた水しぶきを小走りで避けた。陽を受けて光の粒となった水滴の向こうで、マーヴェリックはいまだ目を瞬かせている。
「ああ、ごめん……今、僕のことピートって呼んだ?」
「うん、呼んだ」
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