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    カリフラワー

    @4ntm_hns

    🐓🐺・🥴🐺
    作品はすべて全年齢向けです。

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    カリフラワー

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    12/17の新刊の書き下ろし部分サンプルです。
    話のタイトルは『Mav or Pete』です。マーヴとピート、どっちで呼ばれたい?という軽い話。
    ↓以下新刊の詳細↓
    ・『Rapture』
    ・文庫サイズ/330ページ程度
    ・全年齢向け
    ・900円(予定)
    ・web再録中心、書き下ろし2本収録
    ご参考になれば幸いです🐓🐺
    本になっても変わらず低ハードルでご覧ください。

    #TGM
    #ルスマヴェ
    rousmavet
    #レカペ2312
    #新刊サンプル
    samplesOfNewPublications

    12/17新刊サンプル1この世には、〝究極の二択〟というものがある。
    飼うなら犬か猫か。休暇を過ごすなら山か海か。今日の夕食はピザかタコスか。それぞれはっきりと答えを持つこともあれば、どちらとも選び難いこともある。そしてルースターも、ある二択において答えを出せずにいた。

    「マーヴ」
    「なんだい?」
    「……ピート」
    「へ?」
    庭の草花に水を撒いていたマーヴェリックが耳に飛び込んだ単語に反応し振り返った。
    「マーヴ、ホースこっち向いてる!」
    ルースターは自分に向けられた水しぶきを小走りで避けた。陽を受けて光の粒となった水滴の向こうで、マーヴェリックはいまだ目を瞬かせている。
    「ああ、ごめん……今、僕のことピートって呼んだ?」
    「うん、呼んだ」
    マーヴェリックは水を止めホースを置いた。デッキチェアにかけられたタオルをルースターに差し出し、笑いながらもう一度小さく謝った。
    「珍しいね、その呼び方」
    「うん、ちょっとね」
    「ちょっと……なに?」
    マーヴェリックは片眉を上げ、先を促した。
    「マーヴはさ、マーヴって呼ばれるのとピートって呼ばれるの、どっちがいい?」
    ルースターは〝究極の二択〟への答えを、マーヴェリックへと託すことにした。しかしマーヴェリックの表情は答えの出ない者のそれだった。
    「君に呼ばれる時? それともみんなから?」
    「俺になんて呼ばれたいか、って話」
    「ああ、なるほどね……」
    マーヴェリックは顎に手をあて思案した。うーんと唸りながら目を閉じている。
    「僕はどちらでも構わないよ、君の好きなように呼んでくれ」
    ルースターはタオルを首にかけ、デッキチェアに腰掛けた。口角は下がり、不満な気持ちを隠そうともしない。
    「構わないじゃダメなんだよ、マーヴがどう呼んでほしいかが大切なの」
    腕まで組んだルースターは更に続ける。
    「マーヴのこと〝マーヴ〟としか呼んだことないじゃん? でもよく考えたらそれってコールサインだしさ」
    物心ついた時から、ルースターにとってマーヴはマーヴだった。マーヴ以外にあり得ない。それ以外の名前で呼んだことはなく、幼い頃は本名すら知らなかった。
    「でも君は本名という存在を知ってからも、マーヴと呼ぶことをやめなかっただろう? だから僕はマーヴだよ」
    「でもコールサインで呼ぶのって変じゃん、付き合ってるのに」
    するとマーヴェリックはもう一つのデッキチェアに座り、ルースターを覗き込み微笑む。
    「本当はそれ以外に理由があるんじゃないのか? 今さら君がコールサイン云々を気にするとは思えないよ」
    そうだろう?と口角を上げるマーヴェリックに見つめられ、ルースターは拗ねた子どものようにマーヴェリックの足元に視線を移した。
    「……だって、今ではもうみんながマーヴって呼ぶようになったし、そうなると俺だけの特別感がないんだもん」
    「ははっ、そもそもコールサインはみんなが呼ぶためのものだぞ」
    マーヴェリックは軽く笑う。
    「本当に僕はどちらでも構わないんだよ」
    「いや、どっちかに決めてもらう」
    「特別感がなくて不満なら、ピートって呼んでくれていいんだ」
    「いいや、マーヴが呼んでほしい方で呼ぶ。そんな適当に決めることないよ」
    ルースターは頑として譲らない。相手の呼び方は大切だ。この二択には答えが必要なのだ。こちらがいい、こちらでないと駄目だと言える答えが。
    「なら今日一日、僕のことをマーヴとピートの両方を使って呼んでみて。それで決めよう」
    マーヴェリックは目を細めた。濡れた芝生が日光を反射させ、庭に細かな光を散らす。
    「さすがピート、名案だね」
    ルースターはさっそく彼の案に乗った。
    「マーヴ、今日の昼飯何にする?」
    ルースターは冷蔵庫の中身に目を走らせ、背後に立つマーヴェリックに問いかけた。マーヴェリックはルースターの肩に手を置き、後ろから冷蔵庫に並ぶ食材を眺めた。
    「うーん、どうしようか」
    「この感じだとデリバリーが良さそうだよ」
    「だな」
    品数の少ないがらんとした冷蔵庫を閉じ、ルースターはタブレット端末を片手にキッチンカウンターへと戻った。そして二人は究極の二択を迫られる。
    「どっちがいい? 中華かピザか」
    「その二択しかないのか? 昼から重いな」
    マーヴェリックは再びルースターの後ろから顔を出し、端末画面を覗き込んだ。それから隣に移動したマーヴェリックの小ぶりな手がルースターの側から伸び、画面を滑った。その間ルースターは鼻歌を歌いながら、マーヴェリックの指の動きを目で追い続けていた。
    「別に二択ってわけじゃないけど、最近食べてないしさ」
    「そうだなあ」
    「ピザを頼まなくても、ここのチキンサラダでもいいしさ。マーヴ、好きでしょ」
    「ん? うん、まあ、ね」
    マーヴェリックはぎこちなくルースターを見上げた。視線が交わり、ルースターは小さく笑った。
    「安心して、ちゃんと違う呼び方も試すから」
    「別に僕は……」
    「俺が言い出したことだけど、マーヴも乗り気だってわかって嬉しいよ」
    「いやその、」
    ルースターは画面に映るマルゲリータの画像をタップし、オーダーへと追加した。
    「……じゃあ僕はチキンサラダにする」
    了解、とルースターはマーヴェリックの額にキスをした。マーヴェリックは額に触れながらルースターを見上げ再び口を開きかけたが、言葉が音になることはなかった。
    デリバリーを待つ間に当番の家事を終えると、示し合わせたわけでもなく二人はキッチンカウンターで落ち合った。鳴り続けるお腹の音はルースターのもので、マーヴェリックはそれを聞いて笑っていた。
    「まだかな」
    「もう来るんじゃないか? 注文画面に書いてない?」
    「ほんとにあと二分で着くのか信じられない」
    空腹は全てを疑わせる力を持っている。
    「まあ信じて待て、あと少しだよ」
    マーヴェリックは腰を折ってカウンターに身を預けるルースターの、自由に跳ね回る髪をかき混ぜて笑った。
    結局ルースターはデリバリーアプリの宅配時間の予測が正確であることを知った。ドアベルが鳴ると反射的に身体を起こし、柔らかな髪がハッとしたように揺れる。
    「俺貰ってくるから、ピート、ドリンク用意しておいてくれない?」
    マーヴェリックは音の鳴りそうな瞬きを見せ、一瞬返事を躊躇った。
    「ピート? お願いね?」
    ルースターは玄関に向かいつつ、マーヴェリックを振り返り念押しして笑った。マーヴェリックはその背中に大きな声で返事をし、小さく首を横に振り冷蔵庫を開けた。
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    Replies from the creator

    カリフラワー

    DONEマ右ワンライ/ルスマヴェ/お題「歌声」
    わかりづらいですが、段落ごとに時間が進んでます。本当にわかりづらいです。反省してます。
    Sing for me 幸せだと感じる時、聞こえてくるのはいつも彼の歌声だった。
     ブラッドリーは歌が上手い。ピアノも弾ける。彼の父親もそうだった。二人揃って音楽の才能があった。だけどそれをブラッドリーに伝えると、彼はこう答えた。「俺が親父と違うのは、俺はマーヴを惹きつけるために歌ってるってこと。俺の歌声はマーヴのためにあるの」だから同じにしないで、と彼は笑った。

     繋ぎっぱなしのビデオ通話で、かつて僕たちは会話もせず黙って時間を過ごした。ブラッドリーは料理をして、僕は洗濯物を片付けて。お互い画面なんてあまり見ていなかったと思う。自分が映っているかどうかも気にしていなかった。ただ画面上で繋がってさえいれば、二人の時差も距離も忘れてしまった。時々思い出したように画面を見ると、ブラッドリーはナイフや缶切りを持ったまま、同じタイミングで僕の様子を確認しに来る。そして安心したように微笑み、また画面の前から消える。それを何度か繰り返していると、そのうち彼の歌声が聞こえてくる。
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    カリフラワー

    DONEマ右ワンライ企画のルスマヴェです🐓🐺
    お題は「バレンタイン」
    イメージは平日のバレンタインです。イベント事の話が苦手な自分なりに、自分らしく書けたかなと思います。
    サンスベリアの和名に由来する花言葉「永久」「不滅」をタイトルらしくなるようにもじってつけました🪴
    永遠に続けば 今日は何の日か知ってるか?
    目が合った途端、二言目にはこの質問をされた。ただし、質問をしたのは恋人ではなくただの同僚。答え甲斐など何もない。
    「…知ってる。けど言いたくない」
    力の無い答えになんだよそれ、と同僚が笑う。もし目の前にいるのがマーヴだったなら、これ以上ないほどの甘い声できちんと一言答えられるのに。今日はバレンタインだね、と。
    どれだけ瞬きしようが目を擦ろうが目の前の同僚がマーヴに変わることはないし、残業のためPCや書類と向き合った時間を後から取り戻せたりもしない。

    俺はバレンタインに、残業に勤しみ恋人を一人で待たせているのだ。そうか、こんなバレンタインの過ごし方もあったわけか。…当然これは嫌味だが、勤務態度の良い俺は決して口には出さなかった。その分一刻も早く仕事を終わらせ、残業仲間の同僚と別れ駐車場へと向かった。
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