【黒大】+大将 あー噂の澤村クンじゃん(ニッコリ)ダイヤの乱れで待ち合わせには遅れそうだと連絡はしてあった。
適当にその辺で待ってるわ、と返事があったからファストフード店にでもいるだろうと思っていたのに黒尾の姿は改札を出てすぐ見つけられた。ホント、あの長身とトサカ頭は人混みでも見つけやすい。前にそんな話をしたら「そこは愛って言ってくださいよサームラさん」と拗ねられたっけ。まぁ否定はしないが…そんなホイホイ言えるか馬鹿。
そんなことを思い出しながら近づいたせいだろう、「待たせたな、」と黒尾の背中を叩くまで黒尾が誰かと話してるなんて気付きもしなかった。
「あぁ! 烏野!」
俺より少し高い身長、なんか全体的にシュッとしたスタイルの男は一瞬首を傾げた後、切れ長の眸をまんまるにして俺を指差した。
烏野、と呼ばれるということは、バレー関係の知り合い? どっかで見たか…?
挨拶もせず考えてこんでると俺に向けられた指を黒尾が叩き落とした。
「初対面の人間を指差すなって教わってないんですかねーこのヘビ野郎は」
「俺の指は猫じゃらしじゃないんで反応しないでくださいねー、ネコちゃん?」
黒尾の煽りに煽りで返す様を見るに、やっぱり2人は昔からの知り合いって感じだな。
タチの悪いキャッチとかではなさそうで安心したけど…うん。
「春高で烏野の試合観てた、ってさ」
「ああ、それで」
「そうそう、稲荷崎戦とか、ネコちゃんが負けるとこもね」
ポンと手を打つ俺の肩に手をかけたと思ったら、黒尾はグルンと俺を回れ右させた。
「ちょ、黒尾?!」
「はいはい、時間ないから行きますよー」
まぁ確かに今日の目的は映画で、俺が遅れた分時間はギリギリだ。
だからってこの態度は怪しいし、それ以前に相手に失礼だろうと振り返ったら
「そういえばさー、マユミが久しぶりに遊びたいわーって言ってたぜ?」
「へぇ、懐かしいな、…って、おま、え、今言う?!」
ニッと笑う初対面の男と一拍遅れで顔面蒼白の黒尾。
もしかしてと思ったけど。これはもう、グレー通り越して真っ黒だな。
「クローさん?」
「は、ハイ?!」
「随分仲良さそうなお友達みたいだし? 積もる話もありそうだし?」
「ねぇよ!!」
「せっかくだから紹介しなさいよ。なんならその辺の店にでも入ってゆっくりと、な」
しゅんと肩を落とす黒尾を見て、件の男はとうとう吹き出した。
「俺は大将優、戸美の主将やってた。よろしく」
「戸美…あぁ! 代表決定戦の! よろしく、俺は」
「せっかくだけど俺も待ち合わせしてるとこだから今日は遠慮するわ、さっきの詳細はアンタの後ろで威嚇してるネコちゃんから聞いてネ、澤村クン」
俺が差し出した手を握ることなくヒラヒラと手を振って踵を返した大将は、俺の名を知っていて、つまり俺たちの関係を察してる…?
ボッと赤くなる頬が恥ずかしくて黒尾の腹に一発入れておいた。