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    小雨澪

    @penpen_comio

    昭和生まれの雑食。SPN(SDS)、SPRI●GAN(NL、JOJ)好き。

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    小雨澪

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    昨日ポイ載せした、御神苗一人称と対になってる小話。ジャン一人称、JO。
    シリアス寄りだけど、結局べた惚れな感じ……笑

    #ジャンおみ
    janmi

     覚醒と共に目を開ける。任務明けに泊まったホテルの染みったれた灰色の天井が見えて、身体の力を抜く。隣から肌で感じる温もりに安堵し、安らかな寝息を素直に愛おしく思う。どうしようもなく甘ったれなガキだと、戦場の尻拭いに頭を抱えてばかりいたのに、二十歳を過ぎた辺りからそれなりに大人びてきやがった。でも寝顔はまだ幼く見える。
     ずっと迷いはあった。自分で自分の幸せを見つけろよ、何ならアーカムなんてとっとと辞めちまえと。でもこいつはスプリガンを辞めようとはしなかったし、いつまで経っても自分の罪ばかり後生大事に抱き締めて、いつか誰かに断罪してもらうのをじっと待っているようだった。俺はそれがずっと気に食わなかった。
     邪気のない寝顔は、見ていて飽きない。7つも歳下のガキのくせに、古代遺跡に馬鹿みたいに目を輝かせては多弁になり、俺の浅はかな知識に上書きしてくる。今回の任務でもそうだった。こんな仕事は辞めて、考古学者にでも何でもなっちまえばいいのに、でもこいつはそうしない。かと言って、誰かを守ることで自分の過去が洗い流せると思っている訳ではなく、とにかく敵味方を引っくるめて他人の命ばかり優先しやがる。馬鹿も貫けばご立派で、俺は完全に絆されてしまった。守ってやりたいと思った。弾丸を浴びながら背を預けられる存在ではあるが、たまに薄氷の上に立つように生きようとする意志を希薄に感じる瞬間もあった。
     もっと生にしがみつけ。この世界には、まだまだお前が見るべきものはたくさんある。浅ましく意地汚いくらいに生きようとすることで、罪に対峙し、真正面から償って行け。安易な死へ逃げるな。
     長い睫毛の先がピクリと動いた。見つめ過ぎたか。気配に敏い奴だ。でもまあいい、狸寝入りを続ければいい。
     派手な寝癖のついた黒髪に指先を伸ばす。ほんの一瞬だけ悩んで、伸びた前髪を掻き分けてやり、額に触れる。そこから髪の流れを沿うようにこめかみへ伝い、柔らかな力で癖っ毛を掻き混ぜる。こいつがそうされると好きだとは知っているが、俺がこうすることを存外に好きだとは知らないだろう。自分に向けられる眩しい感情には、驚くほど鈍い奴だ。
     やっぱりあどけない頬っぺたに触れたくなって、目尻から目蓋をなぞり、そっと頬を撫でた。ああ、腹が減ったな。こいつを見てると、何だか無性に腹が減る。
     そろそろいいだろう、起きろよ。お前が好きな額へのキスをくれてやる。ほら、その重い目蓋を開けて俺を見ろ。お前の狸寝入りなんて最初っからバレているのは、お前だってわかっているだろう。
     ……幸せだと感じると、その隙間から不安が顔を出すのは、悪い癖だ。俺はいつまで、こいつを守ってやれるだろうか。だが散々悩んでもう決めた。いつか来るその日を想像して怯えるより、この甘ったれのガキと共に、全力で今を生きようと。
     大きな黒い眸が二つ、俺をまっすぐ視野に捉えた。たったそれだけのことで、獣の血が通った心臓が高鳴り始めるのを感じる。ああ、降参だ。……愛してる。




    ———

    暗くしたくなくて、でもジャンの獣人寿命問題は放っておけなくて、ちょっぴり入れてしまった。
    ……まさか令和になって、公式に「そこそこ長生きするんじゃないか」と仰っていただき、突然もたらされた救いに歓喜すると共に……今まで短命なジャンに最後まで寄り添って看取る御神苗(でも結局御神苗も戦場で…)とか、地獄に堕ちて一緒にいる背中合わせの二人を妄想して生きてきた年月がだいぶ長かったので、今とても複雑な気持ちなんだ……笑


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