共犯者「築!」
廊下から苗字を呼ぶ怒声が聞こえて、びくりと肩を震わせた。大きな足音とよく通る声は生徒指導の先生のものだと、半年も経てば嫌でも覚える。そして、こんな珍しい苗字にも関わらず、呼ばれているのは俺ではないということもいい加減覚えた。それでも反射的に心臓は飛び跳ねるのだからどうしようもない。
ある時は学ランの第1ボタン。またある時はインナーの色。またある時は髪の長さ。これまで違反した校則を数えたらきっとキリがない。それに反省の色が見えないことや話半分で説教を受けていることも目をつけられる原因になるのだろう。生徒指導の先生に、校内で誰よりも名前を呼ばれているのは多分兄さんだ。
「待ちなさい、聞いているのか! おい、築!」
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