眠りについた記憶と(仮)②「………おい、お前、何してんだ」
「あっ……」
デジャブのような光景。
出張でストヘス区まで足を運んでいたが、そこに何とあの黒髪がいた。あの時と同じ、バッグを握り締め時刻表と睨めっこしながら。
「また迷子か?」
「……シガンシナ、まで」
「今日はどこから来た?」
「トロスト区」
「…方向音痴なのか?」
それには微妙な顔をした。本人にその自覚がないのか、慣れない国で本当に迷子なのか。トロストからシガンシナまでは急行一本だ。何をどうしたらストヘス(ここ)に辿り着く?
いや、今そんなことはどうでもいい。問題は。
「俺は仕事中だ。今日はシガンシナに帰らねぇぞ。一人で帰れるか?」
「だ、大丈夫です。その、教えてもらえれば」
疑わしいが、そう言うミカサと時刻表を見ながら、ホームまで付いて行く。あとは電車が来ればそれに乗り、エルミハ中央駅で乗り換えればシガンシナまで電車が連れて行ってくれる。
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