戦闘シーンの草稿 居合わせた混の志献官に荷物を預け、侵食領域の中へと入る。営みの匂いどころか、生き物の気配すらかき消える。
ぐう、と喉が無意識に鳴った。錆び付いたように体が重い。侵食圧が、仁武を過剰なまでに押し潰している。
喉が引きつり世界が回った。悲鳴があった。怒号があった。元素術が、仲間めがけて飛び交っていた。見ていることしかできなかった。立ち尽くすばかりの無力な仁武を、あの人が必死で転移装置に押し込んだ。
迫り上がるような苦みを飲み込む。自然と眉間に力が入り、にじんだ汗を乱暴に拭う。首を振る。よろめきながら壁に手をつく。浅い呼吸を、意識的に整える。
呼吸を重ねるうちに人心地がついた。顔を上げ、色を失った街を見渡した。
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