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    七緒_793

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    七緒_793

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    ぽいぴく使ってみたかった。
    琥バン前提で、バンビと琉夏。絵本みたいな空気を目指してた気がするけど、多分気がするだけ。

    終わる夏「美奈子ちゃんさ、キレイになったよね?」

     最近、琉夏の大切な幼馴染で初恋の相手でもある彼女は、琉夏の大切な兄と所謂「オツキアイ」を始めた。ケンゼンなコーコーセーの距離感にしては余りに清いおままごとのような関係に見えるが、それもまたこの二人の適切な距離なのだろう。


    「琉夏ちゃんも恋しなさい」
    「鯉?池でパクパクしてたらご飯くれる?」
    「もうっ!」
    「もうっ!」
    「真似しないのっ!」

     声を上げて笑う琉夏の頭を彼女がぎゅっと抱き寄せる。琉夏とレンアイカンケイにはならなかったが、二人の距離はごく近い。むしろ、琥一と彼女の距離よりも近いかもしれない。それは確かに、恋人の距離ではないのだろう。ないけれど、誰よりも近い。この関係に名前があるのか、琉夏は知らない。知らないがこの距離から感じる体温が、甘い匂いが心地よくてされるがままだ。
    されるがまま。まま。

    「恋はして欲しいけど、恋人になれるヒトはなかなか見つからないかも」
     
     ふと。途端にトーンダウンした声が琉夏の耳を擽る。比喩でもなんでもなく、吐息混じりの声がサラサラとした髪の毛を揺らすのだ。あまり不穏な色は感じないのに、妙な響きはある。

    「どゆこと?」

     頭を抱きかかえたまま、力を緩めてくれないから彼女の表情を伺う事はできない。仕方なく言葉で問えば、大きなため息が返ってきた。何か、悩んでいるのだろうか。せっかくキレイになったのに、琉夏のせいで悩ませたくはない。誰よりも、幸せになって欲しい。
    ……例え、自分とは未来が交わらなくても。


    「あのね、琉夏ちゃん」
    「うん」

     暫くの沈黙。少しだけ緩んだ腕から抜け出して彼女と目を合わす。そこにあったのは、想像とはまったく違う顔だった。
     まったく違うどころか、真逆。片頬だけ上げた態とらしい笑顔。ニヒルささえ感じるようなその表情にはまったく哀愁などない。むしろ、なんだか面白い。

    「あれ?悪人顔だね?」
    「そう。悪人なの。わたしの夢はね、コウちゃんと一緒に、琉夏ちゃんのモンペになることだから」

     モンスターだよ、怖いんだよーなどとふざけて指で目を吊り上げるものだから、耐えきれずに琉夏が笑う。

    「俺、そんな弱くないよ?」
    「琉夏ちゃんを守るためじゃないよ、だってモンペは独善的で子供のこと考えてないもん」
    「こっわいママ〜」
    「そうだよ。琉夏ちゃんのこと絶対守るマンじゃなくって、わたしが気に入った人しか琉夏ちゃんに近付けないマンだから」

     再び頭を抱えられるが、笑いが止まらない。そっか、ママか。ママだったか。ママの悩みは琉夏の未来、だったか。


     秋の気配が近づく高い高い空に、二人の明るい笑い声が響いた。きっと今年の冬は、凍えない。
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