こたつでの悲喜こもごもマリィの部屋でコタツに入る七ツ森くん。お部屋キョロキョロ、フォトフレームにNanaの写真を見つけて悶絶、とても落ち着くどころではありません。
マリィの匂いに満たされた空間。側に居るときに鼻をくすぐるそれとは濃度が違います。
「うわ。ヤバいかも」
ナニがヤバい、とは言いません。ええ、言いませんとも。何しろ今日は宿題をしに来たのです。落ち着け、俺、と深呼吸しているところでお盆を持ったマリィちゃんが部屋に入って来ました。
「実くん、お待たせ」
ニコニコしながら七ツ森くんの前に並べたのは、氷の入ったグラスと、スコーンの乗った小さなお皿。グラスに注がれている液体は見慣れた黒。水泡が上に上っていく様が見られないので、間違いなく見慣れたあれであっているようです。
「ん、サンキュ。でもなんでアイスコーヒー?」
外は寒いです。寒いからこそのコタツです。確かに部屋は暖かいですが、アイスコーヒーは不似合いに思えます。
首を傾げる七ツ森くんに合わせて、首を傾げるマリィちゃん。かわいい……とか思ってる場合じゃありません。
「えーとね、あったかくなったら冷たいものが飲みたくなるから?」
「なんだそれ。これくらいじゃ冷たいものは飲みたくなりませんよ?」
「あ、言ったなぁ〜っ」
そんなに言うなら暑くしちゃうぞっ!
小悪魔のような囁きとともに、マリィちゃんが七ツ森くんの背中にぎゅーーっと抱きつきます。首に腕を回して、背中にぴったり密着して、体温を七ツ森くんに伝えるように。もちろん、伝わるのは体温だけではないのですが。
「ふふっ。前はコタツで後ろはわたし。これでアイスコーヒー飲みたくなるよ!」
「………………」
「??」
うっかり肩までコタツに入っていた七ツ森くん。そんなに後ろからぎゅうぎゅうされたら動けません。耳元でダイレクトに伝わる息遣いも、そして厚地のハズの上着越しに感じる感触も、そしてもちろん体温も強制的に受け取らざるを得ません。
「七ツ森くん、耳真っ赤。」
食べちゃいたい。
七ツ森くんは、このあとアイスコーヒーを三杯おかわりしましたとさ。