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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    TF主ルチ。夜中に目が覚めたルチがTF主くんに甘える話。

    ##TF主ルチ

    愛という名の絶望 夜中に目が覚めた時、そこがどこなのか分からなくなる時がある。前後の記憶が曖昧で、自分が何をしていたかさえ思い出せなくなるのだ。恐る恐る布団の中から首を出すと、周囲の光景を確認する。そこに映る景色が見慣れた部屋であることを確認して、僕はようやく息をついた。
     再び布団の中に潜り込むと、静かに呼吸を整える。まるで多量のエネルギーを消費した後のように、心臓がドクドクと音を立てていた。頬の辺りに違和感があるのは、涙の跡によるものだろう。僕には明確な記憶は無いが、眠っている間に流していたのだ。
     こうして悪い夢を見るのも、一度か二度のことではなかった。日々が平和に傾けば傾くほど、悪夢は頻繁に僕の夢を訪れる。内容はオリジナルの両親が死ぬ夢か、タッグパートナーの青年が死ぬ夢だと決まっていた。日々の幸福がまやかしであることを知らしめるように、その夢は何度も僕を苛む。
     大きく深呼吸をすると、僕は背後を振り返った。僕のすぐ後ろには、寝間着姿の青年が横たわっている。すっかり熟睡しているようで、すうすうと静かな寝息を立てていた。こうして呑気な寝顔を晒していると、彼の方が子供のようだった。
     静かに揺れる背中を眺めていると、瞳の奥が熱くなった。視界が滲んだかと思うと、今度は熱い水が流れ出す。音を立てないように腕を伸ばすと、溢れる涙を袖口で拭った。しかし、何度雫を拭っても、涙は次から次へと溢れてくる。
     また、この現象だった。悪い夢を見て夜中に目覚めると、僕は必ず涙を流してしまう。心が空っぽになって、何も考えられなくなるのだ。ただ、漠然とした不安だけが、僕の胸を満たしている。こうなると、心の空白が満たされるまで、涙を流し続けることしかできなかった。
     声を圧し殺しながら身体を震わせていると、目の前の青年が身じろぎをした。ごそごそと小さく音を立てると、こちらを振り向くように寝返りを打つ。布団に潜ったままの僕を引き寄せると、黙って身体に手を回した。彼の大きくて温かい手のひらが、僕の背中を包み込む。
     彼の腕に抱き締められたまま、僕は静かに涙を流した。青年の胸に額をつけると、すがるように体重を預ける。僕がどれだけ嗚咽を漏らしても、彼は何も言わなかった。ただ僕の身体に手を回したまま、静かに身体を撫でるだけだ。
     彼の手のひらから伝わる温もりが、寝間着越しに僕へと伝わってくる。空っぽになっていた僕の心が、温もりで満たされていくのを感じた。僕のタッグパートナーの青年は、まだ命を落としてはいないのだ。僕の恋人兼協力者として、いまも僕の隣にいる。
     しばらくそうしているうちに、僕の涙は止まっていった。深呼吸をして息を整えると、彼の胸元に耳をつける。体内に響き渡る心音は、彼の生きている証そのものだ。そんな不確かなものにすがることしか、今の僕にはできなかった。
    「大丈夫だよ」
     甘える僕を慈しむように、彼は頭部に手のひらを添える。髪を撫で付けるように、額から後ろへと指を滑らせた。
    「僕は、ずっとルチアーノの側にいるから」
     彼の口から零れる言葉は、無責任な慰めでしかなかった。人の命が有限である限り、彼はやがて僕の前からいなくなる。永遠の誓いを立てたとしても、それは現実から目を背ける行為でしかないのだ。僕たちは現実を理解した上で、共に過ごすことを選んだのだから。
     嘘ばっかり。そんな言葉を口にできたら、僕の心は楽になるだろうか。彼に現実を突きつけて、僕の孤独を語ることができたら、僕は少しでも救われるだろうか。一瞬だけそんな考えがよぎるが、すんでのところで留まった。反論の言葉を口にしたところで、彼は心を痛めるだけなのだ。
     彼に言葉を返す代わりに、僕は彼の胸に顔を埋めた。体格の良い身体に腕を回すと、強い力で抱き締める。僕の求めに応じるように、彼も腕を回してきた。温もりに包まれた布団の中で、僕たちはぴったりと肌をくっつける。
    「ルチアーノ」
     青年の優しい囁きが、僕の耳を擽った。涙声を聞かれるのが恥ずかしかったから、僕は黙ったまま顔を上げた。部屋の中は薄暗かったが、彼の表情ははっきりと確認できる。優しい笑みを浮かべると、蕩けるように甘い声で言った。
    「愛してるよ」
     直球的な愛の言葉が飛んできて、僕は思わず頬を染める。この男は、時に大胆な愛情表現を見せてくるのだ。彼の口から零れる言葉に、一切の嘘偽りは無いのだろう。彼は僕を愛していて、永遠を誓おうとしてくれている。
     彼の愛情に触れていると、僕は、心が満たされていく感覚を覚えた。使命のために他者を傷つけることを忘れ、平和な日常に溺れていくのだ。そして、日々が幸福になればなるほどに、悪夢は僕の精神を蝕んでいく。それはまるで、僕の恐怖を映し出すかのようだった。
     僕は思う。愛とは、絶望と隣り合わせの存在なのだと。愛は一度生まれたら、必ずどこかで絶望に変わる。なぜならば、愛に永遠などというものはなく、いずれは朽ちる時が来るからだ。それは死別であったり、関係性の変化であったりする。
     だからこそ、人間は愛を大切にするのだろう。いずれ来る終わりから視線を逸らして、今ある幸せを味わおうとする。それはどこまでも虚しいけれど、美しい生き方のようにも感じた。
     でも、僕はそんな誤魔化しに頼ることなどできないのだ。人間の命の儚さというものを、痛いほどに自覚しているのだから。愛による絶望を刻み込まれたこの身体は、常に絶望を自覚している。何度温もりに身を委ねても、絶望は何度も這い出してくるのだ。
     彼の胸に身を沈めたまま、僕は小さく息をつく。一体、僕はいつまで、この絶望に耐えることができるのだろう。未来に救いが無いと知りながら生き続けるのは、何も知らずに生きるよりも苦しいものなのだ。彼のような能天気な生き方など、僕には到底できそうにない。
     それでも、今は生きるしかないのだ。目的のために作られたこの命は、勝手に失われることを許されない。僕がこの苦しみから逃れるのは、使命が達成された時だけである。それまでは、苦しくても生きるしかないのだ。この男の温もりにすがってでも。
     再び顔を下に向けると、僕は彼の胸に顔を埋めた。大きく息を吸い込むと、彼の香りが肺に広がる。絶望によってエネルギーを消費したのか、身体が重たくて仕方がない。ゆっくりと目を閉じると、意識は微睡みの中に溶けていった。
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