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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。ルチも空間からものを取り出したりできるのかなって思ったので書きました。

    ##TF主ルチ

    四次元ポケット 身支度を整えると、デュエルディスクを手に取った。ガチャガチャと音を立てながら、それなりに重量のあるディスクを腕にはめる。毎度のことながら、ずしりとした重みが身体に伝わった。これを腕にはめる度に、デュエリストには体力が必要であることを自覚する。最近のディスクは軽量化が進んできてはいるが、それでもまだまだ重かった。
    「できたよ。行こうか」
     ルチアーノに声をかけると、玄関の扉を開ける。夏の明るい日差しが、僕たちの身体を正面から照らし出した。今日も暑そうだ。熱せられた空気が家の中に入ってきて、外に出る前から気が滅入る。
    「何してるんだよ。とっとと行けよ」
     ルチアーノに背中を押されて、僕は渋々外に出た。眩しい日差しに肌を焼かれて、背中に汗が滲み始める。鞄からタオルを取り出すと、額に押し当てて汗を拭った。
     隣を歩くルチアーノは、涼しげな顔をしていた。Tシャツにパーカーという重ね着をしているのに、少しも汗をかく気配はない。機械の身体というのは、こういうときに便利なのだ。
     灼熱の陽気と戦いながら、バス停を目指して歩いていく。今日の目的地は、郊外のショッピングモールだ。Dホイールでも行ける場所だったが、今日はバス移動を選んだ。
     今日は、ショッピングモールの広場でデュエルモンスターズのイベントがあるのだ。指定されたモンスターを倒し、そのターンの早さを競うスコアアタック形式で、参加条件はデュエルディスクの所持だった。デュエルディスクのユーザーデータと連動して、不正参加ができないように対策しているらしい。
     モールの前に着くと、僕たちはバスを降りた。ルチアーノの方を振り返って、あることに気がつく。彼は、デュエルディスクというものを持っていなかったのだ。
    「そういえば、ルチアーノってデュエルディスクは持ってるの?」
     そう。今回のイベントは、市販のデュエルディスクと連動しているのだ。ルチアーノの持っている未来のデュエルディスクでは、イベントに参加できないはずだった。
    「持ってるよ。そんなもの、いくらでも調達できるからな」
     そう言うと、彼はパーカーの合わせ目を開いた。右側を大きく開くと、隙間に左手を近づける。一瞬の間を置いてから、隙間から光が溢れ出した。
    「見てなよ」
     ルチアーノがにやりと笑う。光の中から、見慣れたアイテムが顔を見せた。じわじわと出てきたのは、よくあるタイプのデュエルディスクだった。
     半分ほど姿を見せると、彼はディスクの端っこを掴んだ。力を入れて引っ張ると、光の中から本体を引きずり出す。光が消えると、そこにはデュエルディスクだけが残った。
     僕は、ぽかんと口を開けてしまった。彼とはそれなりに長い間行動を共にしているが、こんな能力があるなんて知らなかったのだ。不思議な光景に、ただただ呆然としていた。
    「それ、どこから取り出したの?」
     尋ねると、彼はにやにやと笑った。パーカーの合わせ目をつまむと、身体と布地の間を示す。
    「どこって、ここからだよ。僕は、空間を自由に操ることができるからね」
     そう言うと、彼は再び隙間を光らせた。にやにやと笑いながら、顔をだしたアイテムを僕へと見せつける。それは、彼が普段から使っているDボードだった。
    「こんなものだって出せるんだぜ」
     ボードの端を掴むと、ゆっくりと光の中から引っ張り出す。パーカーを揺らしながら、ルチアーノの背丈の半分はあるだろうボードが姿を現した。明らかに物理法則を無視した収納方法に、僕は言葉が出なくなってしまった。
    「すごい。四次元ポケットみたい……」
     僕は呟いた。何もないところからものを取り出すなんて、そんなのアニメの登場人物くらいだ。現実とは思えなかった。
    「なんだよ、それ。僕の力は、そんな非科学的なものじゃないぜ」
     ルチアーノは不満そうに唇を尖らせる。音を立ててDボードを立てると、パーカーの隙間を光らせた。ボードの端を近づけると、それは隙間へと吸い込まれていく。ゆっくりと時間をかけて、その光はボードを飲み込んだ。
    「僕からしたら、どっちも非現実的なものだけどね。ルチアーノたちの技術も、中々に空想的だよ」
    「これだからこの時代の人間は……。こんなの、どこからどう見ても科学に基づいた技術だろ。そんなのも分からないのかよ」
     不機嫌そうな声が返ってくるが、僕には違いが分からなかった。遠い未来の技術は、アニメの中の演出と変わらないのだ。人間がアニメに追い付く日は、案外近いのだと思った。
    「そんなこと言われても、分かんないよ」
     答えると、ルチアーノは鼻を鳴らしてデュエルディスクを手に取った。ガチャガチャと音を立てて、ディスクを腕に取り付けていく。ルチアーノの小さな身体の上では、ディスクは妙に大きく見えた。
    「知識の乏しい奴だな。……ほら、行くぞ」
     悪態を吐くと、彼は僕の腕を弾いてモールの入り口へと向かった。強引に引っ張られ、体勢を崩してしまう。よろけながら足を踏み出すと、彼の後へと続いた。
     イベント広場は、たくさんの参加者で溢れていた。受付を済ませると、順番が回ってくるのを待つ。広場の上に取り付けられたモニターには、他の参加者のデュエルデータが表示されていた。
     ルチアーノは興味深そうにモニターの画面を見ていた。ボスを倒すために、次々とフィールドに並べられていくモンスターたちを、腕を組ながら見聞する。デュエルモンスターズは自由なデッキを組めるゲームだから、攻略方法は人それぞれだ。僕には想像もできないような攻略をしていく参加者は、ルチアーノにとって新鮮なようだった。
    「ふーん。そういう作戦を取るのか。人間もなかなかやるみたいだな」
     楽しそうに言うと、にやにやと笑みを浮かべる。張り合いのある相手を見つけたことを喜んでいるみたいだった。
     そうこうしているうちに、僕たちの順番が回ってきた。デュエルディスクを機械に繋いで、フィールド情報を読み込む。手札五枚が選出されると、デュエルが始まった。
     僕の手札は、あまりいい引きではなかった。できることは全てやったが、時間がかかってしまう。結果は、上位十人にすら入れなかった。
    「なんだよ。だらしないな。僕がリベンジしてやる」
     僕の結果を見て、ルチアーノは尊大な態度で言う。馬鹿にされているのは分かったが、僕には何も言えなかった。僕の結果は、自分でも分かるほどに散々だったのだ。
     ルチアーノは前に出ると、機械とデュエルディスクを繋いだ。手札を見ると、嬉しそうににやりと笑う。慣れた手つきで、相手フィールドのモンスターを倒していった。
     彼の結果は、暫定六位だった。満足そうに息を吸うと、機械からデュエルディスクを取り外す。参加賞を受け取ると、僕の隣へと歩いてきた。にやにやと笑いながら、無い胸を張って僕を見上げる。
    「まあ、こんなもんだな。僕が本気を出したら、誰も太刀打ちできないからさ」
     僕も、もらったばかりの参加賞に視線を向ける。透明な袋の中には、限定加工のトークンカードが入っていた。イラストは、デュエルモンスターズの人気モンスターばかりだった。
     イベント広場から出ると、僕たちはショッピングモールの奥へと移動する。人々の喧騒から離れると、ルチアーノに耳を寄せた。
    「せっかく来たから、何か食べていこうか」
     ルチアーノは、にやにやと笑いながら僕を見上げた。眉を動かすと、からかうような声で言葉を返す。
    「いいぜ。スコアアタックで負けたから、君の奢りな」
     そんなことを言われたら、聞き入れざるを得ない。デュエリストの世界は、実力が全てなのだから。
    「分かったよ。でも、あんまり高いのはやめてよね」
     肩を並べたまま、僕たちはレストラン街へと歩いていく。ルチアーノのご機嫌な姿を見て、彼を連れて来て良かったと思った。
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